2008年05月20日

山林の生産性  団地化と路網整備と地場ゼネコン(下)


山林の生産性向上には、高性能な大型機械の導入が不可欠。
しかし、その大型機械が効率よく稼働するには、山林内に道路網が整備されていなければならず、またその機械が効率良く働けるだけの広い山林が用意されていなければならない。
この事前整備が大変に難しい。
前回見たように、日本の山林は20ha以下の地主が83%も占めている。
1人や2人で機械を購入しても稼働率が低く、とてもソロバンに合わない。つまり宝の持ち腐れとなる。
このため、日本では大型機械の導入が大きく遅れた。

前回紹介した鶴岡市の加藤さんはたまたま100haという3%しかいない大地主であったから独自で機械を導入することが出来た。そして、その効率の良さを見た地元の山林組合の面々が、その機械をレンタルで活用した。
林業白書では、そのことを「団地化の必要」と「路網の整備の必要」と書いている。
書いてはいるが、これこそがポイントだと力説していない。他の項目と同じように並べて、さらりと触れているだけ。
このことが問題だと思う。
日本の山林を本当に立て直すには、このポイントをしっかり抑え、成功事例を出し、その成功事例を全国に拡げてゆかねばならない。これこそが山林経営戦略。
その戦略論が林野庁に稀薄なことが情けない。

そこで、日経の夕刊に掲載された京都の日吉町森林組合の成功事例を取り上げるわけだが、その前に、前回紹介しきれなかった林業用機械のいくつかを、先に紹介しておきたい。


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まず、フェラベンチャ。
これは伐採と集積機で、ヨーロッパでは幅広く採用されているが、日本では少ないようだ。日本では間伐材の小径木は電動ノコで伐採され、プロセッサという枝払い、玉切り、集積の3つの機能を持つ機械で処理するのが一般的なよう。

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また、ヨーロッパでは、フェラベンチャよりも上写真のハーベスタの方が多く採用されているらしい。
日本で一番多く用いられているプロセッサは3つの機能しか備えていないのに対して、ハーベスタは伐倒という機能も備えている。
つまり伐倒、枝払い、玉切り、集積の4つの機能を果たしている。
そして、キャタピラ機もあれば太いタイヤ機も用意されている。

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上は、前回紹介した演習林の尾張氏のコラムの中に掲載されていたスウェーデンの山林現場でのハーベスタとフォーワーダのスナップ写真。

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このほかに、タワー付きの集材機のタワーヤーダという機械も採用されている。これは集材専用機。値段は高いが鶴岡市の加藤氏が購入したスィング・タワー・ヤーダの方が多目的に使えるので素人目には優れているように感じられる。

さて、こうしたハーベスタという伐倒と造材、プロセッサという造材、フォーワーダという集積・配送、スイング・タワー・ヤーダという多機能な機械が山に入るには、幅員が2.5mから3.5mの道路網が山林の中に整備されていなければならない。
かつて林野庁が進めたスーパー林道は、山を破壊する以外の何ものでもなかった。言うならば土建屋のための道づくり。
先進しているヨーロッパ各国の山林の実態調査をすれば、こんなものよりも路網の整備が緊急事だということが誰にでもわかったはず。


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湯浅勳著「山も人もいきいき 日吉町森林組合の痛快経営術」(全国林業改良普及協会刊、税込み1900円+税)は林業の現場からの報告書としては出色。
この本を見て、日経が3回に亘る記事として取り上げた。

著者は工業高校の機械科を卒業して旭化成や中小企業で働いていたが、35才の時、定年退職の父親の跡を継いで1987年に森林組合へ転職。所得が半分以下になるのは覚悟の上だったが、組合の内部の全てがひと昔前の旧態のままだったのには呆れた。
組合員は他の産業界のことを何も知らない。したがってどこに問題があるかが分からない。管理体制もいい加減なら現場作業のデータもない。責任体制もはっきりしていない。労働条件も出来高の日給制。雨の日は休みで、仕事は下草刈りや枝打ちなどの単純作業のみ。とても魅力のある職場ではない。
何よりも問題だったのは仕事の中身。
森林組合は森林所有者の出資で運営され、その目的は森林の保全と生産力の増強を図ること。ところが、実態は公共事業や官公造林への依存度が高く、本来の目的を放り出して下請け仕事で食いつないでいる有様。

ともかく機械化をやらねばならないが、それには資金が必要。幸い89年から97まで日吉ダムを建設するため立木伐採の仕事が入った。その請負金からハーベスタ(伐倒造材機)などの機械を徐々に揃え、作業道の路網づくりも始めた。
他の業界のことが分かっていたから、著者には改善策が用意出来た。そして、その改善案に対する反対は一切なかったという。このままではダメだということは分かる。しかしどうしたら良いかが分からないというのが、他業界を知らない全国の森林組合に共通の現象ではなかろうか。

同組合で間伐事業を本格的に開始したのは95年。
組合の機関誌に間伐を呼びかけたけれども、待てど暮らせど一つの依頼もない。
思い至ったのは、木材価格の長期低落で山林所有者はほとんど山へ入って居らず、荒れている実態を知らないという事実。そこで写真で実体を知らせる。
同時に間伐の見積もり費用を写真と一緒に提示した。
この見積もりの精度を高めるのには大変な苦労をしたが、併行して小規模所有者の境界を確認しながら山林の「団地化」を進めた。
路網をつくるには、この境界線の確認と団地化が避けられない。これこそが零細な日本の森林を活性化させる基本作業。作業道のない山林は、間伐も伐採、搬出も出来ない。極論すれば価値のない山。
こうした「森林プラン」をつくり、写真と見積書を所有者に郵送した。
そしたら、狙いどおり90%以上の契約率が得られた。

そして、驚かされたのは不在地主の反応。
同町の山林面積の23%が祖父や親の代に山を離れた不在地主のもの。その不在地主に写真と見積書の森林カルテルを郵送したら、ほとんどから直ぐに契約サインが返送されてきたという。きちんとした計画を立て、組合が責任を持って管理するならば、日本の森林は管理出来ると言うことを湯浅氏は立証してくれた。

しかし、路網づくりと機械化に先鞭をつけた同組合だったが、04年の台風で大打撃を受けた。なぎ倒された樹木は2万本。作業道の破損箇所は500ヶ所にも及んだ。
林野庁の作業道の基準に従ってつくった路網の被害がもっともひどかった。流れてきた枝葉が排水管に詰まって作業道を破損した。
各地の識者に聞いて歩いた結果、よく管理されている山は人工的なものはほとんど使っていない。山のランドプランニングというのは、山のあるがままの姿を活かすというのが欧米での基本。日本の土木工事のように、やたら切り土とか盛り土はしない。
こうした貴重な経験に学んで、現在では路網の最大縦断傾斜角は25%以内で、出来るだけ自然を活かすようにしている。
それと著者は、針葉樹を植林してはいけないところまで植林しているのを見直す必要があると書いている。宮脇昭伝氏がいみじくも指摘しているように、昔は急斜面や水源などはウラジロガシやアカガシなどの自然林を残し、未然に災害を防いできた。同組合はどこまでこうしたことをやっているかは分からないが、絶対に忘れてはならない視点である。

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同組合には、昨年は150余の組合、今年は200の組合から研修依頼が舞い込んできているという。成功事例の普及ということで、とても素晴らしい事件だと思う。
しかし、路網づくりは未だに30%に過ぎず、100%を達成するにはあと10年はかかるという。まだまだ手放しで喜べる状態ではない。それに枝や樹皮を含めたバイオマス活用のことを考えると加工工場の有無が気にかかる。

と同時に、地場のゼネコンさんにとって大変なチャンスが到来しているのではないかという感じがしてならない・・・。
というのは、ゼネコンの社員はパワーショベルの扱いに慣れている。したがってハーベスタ、フォーワーダなどの扱いは慣れればお手のもの。
ただ、今までの切り土とアスファルトと土管だらけの道づくりは役に立たない。
ランドプランニングというソフトと、植林のノウハウと、しっかりとした経営力を身につけることが出来たら、山づくりのプロ、力強い助っ人になれる最短距離に、地場ゼネコンが位置しているのではなかろうか・・・。
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2008年05月15日

山林の生産性  独力で大型機を導入した先見性(上)


森や木に関する情報はネット上にあふれている。
ちなみに、下記の2つにアクセスしただけでもかなりの情報量。

http://plaza.across.or.jp/~hsgwtks/index.html
http://www.wood.co.jp/index.html

しかし、こうしたサイトをいくら開いても、日本の林業の将来が見えてこない。
やはり、全体的な動向はとりあえず「森林・林業白書」(17年度)を読むのが早い。

http://www.maff.go.jp/hakusyo/rin/h17/html/index1.htm

白書は全体を網羅している。
そして、基本的なスタンスは「森林は緑の社会資本だから、国民全体がボランティアで関わりを持つべきです」と、上からのお仕着せの命令調が強い。
日本の山が荒れているのは安い外材が輸入されたからで、山林地主も林野庁も被害者だったというニュアンスが、根強く残っている。

日本の林業が衰退した最大の原因は、戦後の一時期のバブリーな成金で舞い上がり、コスト削減という経営努力を地主が怠ってきたことにある。
それにもまして大きかったのは、都会の消費者とビルダーの需要動向の大きな変化を知ろうとしなかったマーケティングの不在にある。スギとヒノキの角材さえ生産しておれば良しとする消費者無視の短絡的な姿勢が、傷口を拡げた。
消費者やビルダーは、外材に負けない強度を持ち、乾燥した性能と精度のよい構造材が、適切な価格でコンスタントに供給されることを願っている。
だが、地場の森林組合の供給量は極端に限られ、品ぞろいも性能もまちまち。
それこそ天然資源そのもので、諸外国の林産品のように木材が「工業化材料」になっていない。
未乾燥の木材を、有機野菜のように「地産地消」の掛け声で、いかにも新鮮で優れたものであるかのように装って売っている。

林業は産業である。
産業である以上、生産性を高めないと世界に太刀打ち出来ない。
戦後の農地解放によって、日本の農地も山林も細分化された。
白書によると、保有山林面積は下図のように5ha未満が34%、5〜20haが49%、20〜50haが11%、50〜100haが3%、そして100ha以上は3%にすぎない。
つまり、20ha以下が3/4以上を占めている。この細分化された私有権が障害になっている。そして村に住んでいない不在地主も多い。

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林業白書が言うように、森林は緑の社会資本であるべき。それなのに個人の私有権をのさばらせ、経営努力の放棄を黙認している。それが緑を破壊している。
山林所有者は、いたずらにボランティアや補助金におんぶするのではなく、まず社会的な責任を自覚すべき。そのことに対して、林野庁も地方行政も、政治家も一言も注文をつけていない。もちろん白書でも触れていない。
そして、票欲しさに補助金を注ぎ込む。
山林の生産性を上げるためには、私有権にある程度の制限を加えてゆかねばならない。

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白書では、上記の素材生産規模別の生産性を挙げている。
これによると、日本の平均は4.4m3/人工にすぎない。
残念ながら白書には、諸外国の生産性のデータが掲載されていない。
天野礼子著「緑の時代をつくる」の中で、銘建工業の中島社長は「オーストリアでは10〜15m3/人工で、スウェーデンやフィンランドでは場合によっては50m3/人工だ」と話している。つまり、ヨーロッパでは日本の3倍から10倍の生産性があるという。
また「オーストリアの森林面積は日本の1/6しかない。それなのに用材の生産性は日本とほぼ同じ1400万m3。つまり国全体の林業の生産性が日本の6倍だということだ」とも言っている。

同じようなことを田中淳夫氏は「森林からのニッポン再生」の中で次のように書いている。
「人工林面積は日本とドイツはほぼ同じ。ところが生産量は日本の3倍の13兆円にもおよび、山林業は巨大産業として存在している」と。
さらに、「日本では傾斜が急で機械化が出来ないと言っているが、ヨーロッパだって地理的な条件は同じ。それなのに、GPSを搭載した乗用車タイプの大型機械を導入し、雨天に関係なく仕事をこなしている」とも書いている。

また、東大北海道演習林講師の尾張敏章氏は「科学の森研修センター」2007年2月号のコラムの中で「スウェーデンの調査事例では、大型林業機械の生産性は1時間当たり16〜17m3。そして年間稼働時間は2300〜3000時間だという。このように極めて高い生産性と稼働率によって、生産コストを1000〜1800円/m3にまで低減することに成功してきている」と書いている。
これらの真偽は定かではない。学者や官民の研究者から正確な調査データの提出を期待したい。いずれにしろ日本の山林の生産性の低さにこそ問題が潜んでいると、公的に確認されつつある。

そこで、白書は生産性大きく左右する大型林業機械についてどのように記述しているかを見てみた。
16年度で国内の「高性能林業機械」は2726台になった、とある。
「その中で一番多いのがプロセッサで949台。あとはフォワーダやスィングヤーダなどが導入されている」と短い記述。
いきなりプロセッサとかフォワーダとか言われても、部外者には分からない。
そこでコマツフォレスト社をはじめとして林業用機械センターなどの情報を漁ってみた。

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まず、なんとか上図のプロセッサをさぐり当てた。
これは(1)枝払いと(2)玉切りと(3)造材の集積の3つの機能を果たすということがわかった。

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フォワーダというのは、材を集めて積載し、運送する機械。
日本で使われているのは圧倒的にキャタピラが多いが、スウェーデンでは大型タイヤ付きのものも多い。たしかにタイヤの方がスピードが早そう。そして岩手県の調査団の報告書によると、下の写真のように急な坂道で滑らないようにチェーンを巻いている場合もあるらしい。

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そしてスイングヤーダと書かれているのを見て、瀬戸山玄著「丹精で繁盛」という本の中に出てくる山形県鶴岡市の農林業の加藤周一氏を思い出した。(独善的週刊書評の124号、今年の3月7日付を参照されたし)
日本に3%しか存在しない100haの山林の所有者で、農協を脱退して補助金を当てにしない米づくりもやっている。委託生産を含めて米づくりで1000万円の売上げ。
そして04年に独自で2000万円を投資してスィング・タワー・ヤーダを購入。自分で操作を覚え、毎年300本の硬くて丈夫なスギを伐採して売るのと機械を地元森林組合のメンバーに指導付きでレンタルしている分を併せて1000万円。計2000万円稼いでいる先見性の人。
米の産直をやっているから、てっきりホームページがあると思って「加藤周一」を捜したら文芸評論家の名しか出てこない。
やむを得ず森林組合へ連絡して電話番号を教えてもらい「写真を送って欲しい」と頼みこんだ。
「いいですよ。庄内総合支庁の森林整備課に私のところの写真が一杯ありますから、メールで送らせます。それに、昨年はさらに2000万円投資してキャリア・ダンプ、つまりフォワーダも買いました。生産性が一気にあがりましたよ。設備投資は短期間に償却出来ます。その気になれば林業は十分にやってゆけます」と力強い言葉。その意気軒昂さにうれしくなった。

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写真は上2枚がスィング・タワー・ヤーダで、下がキャリア。
このスイング・タワー・ヤーダというのは6つの多機能を発揮してくれる大型作業機。
まずプロセッサの(1)枝払い (2)玉切り (3)集積のほかに (4)伐採 (5)架線を架けての集荷もやってくれる(その時、スィングして材を集めることが出来るのでこの名がついている) (6)ヘッドを変えれば作業道づくりのパワーショベルにもなる。

遅ればせながら、日本の山でも本格的な生産性向上運動が始まっている。
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2007年12月20日

EUでは再生可能エネルギーの半分が木質バイオマス

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天野礼子他著「緑の時代をつくる」(旬報社 1600+税)

この本は2年半も前に出版されていた。
書店巡りをやっていたが、残念ながら今まで気付かなかった。
木質バイオマスの先進国であるオーストリアを視察し、その報告を著者と熊崎実岐阜県立森林アカデミー学長らが書いている。

ちょっと資料が古いが、2002年のEU15ヶ国における再生可能なエネルギーの生産量は、石油換算で8100万トンだったという。
そのうち51%を占めているのが木質バイオエネルギー。
これに次ぐのが水力発電の36%、地熱エネルギーの6%、風力・太陽光が4%、バイオガスが3%という。
つまり、木質のバイオマスは議論の段階ではなく実用の段階に入っているということ。
スウェーデンやノルウェー、ドイツはもちろんのこと、オーストリアも木質バイオマスでは先進国。

とくにオーストリアは、木質バイオマス用の効率的なボイラーの生産では、世界のトップ・スリーを独占しているという。
ポリテクニック社、ウルバス社、コールバッハ社がそれ。
オーストリアの林農家は、木材をチップに粉砕するチッパーを持っている。
今までは、このチッパーは製紙会社にしか売れなかった。
それが、今では補助金が付いていることもあって、木質バイオマスエネルギーとして出荷する方が高く売れるという。
そうしたインセンティブもあってチップが沢山集荷され、ペレットに加工される。

しかし、木質バイオマス産業は、林産業が盛んでその副産物の木屑、樹皮の供出が大きくないと成立しない。
オーストリアの森林面積は日本の1/6。しかし用材の生産量は日本とほぼ同じの1400万立方メートル。
つまり森林の生産性が約6倍。このために、製材所に隣接してペレット工場や電力と熱を供給するコージェネプラントが設立され、電力と地域暖房・給湯活動を行っている。
要は、間伐材や用材の供給が間断なく行われ、製材や製品加工業が活発に行われていない限り木質バイオマス産業は成り立たない。
如何に日本の山に適齢の針葉樹があっても、それだけでは木質バイオマスは産業化しない。
このことを、改めてこの本で知らされた。

そして、別の章で岡山の銘建工業中島浩一郎社長と著者の対談が掲載されている。
この銘建工業は構造用集成材の大手工場。木材乾燥に木屑を燃料として使い、1984年からバイオマス発電所を立ち上げてきている。
この社長のざっくばらんな日本の林業行政と林業家、製材業者に対する歯に衣をきせぬ発言に肯かせられる点が多かった。
以下、氏の発言の要点のみを、若干私のアレンジを加えて列記する。

今から30年前、私がこの業界に入った時、製材工場は全国に1.8万社あった。それが1万を切るまでに減ってきている。
この根本原因は生産性が低いこと。40年前製材工場の生産性は175立方メートル/人。それが40年経ってもわずかに245立方メートル/人。たった40%しか伸びていない。こんな生産性の低い産業は世界にない。
こんな状態でも成り立ってきたのは30年前に木材の大バブルがあったから。
このため、生産性を上げようとか、ニーズに合った木材の提供をしようという企業努力がなされなかった。そのツケが今、回ってきているだけ。

日本の林産業にとって重要なポイントが3つある。
1つは山の生産性。2つは伐採と搬出の合理化。3つは未乾燥で精度の低い品質。
この3つを徹底的に追及し、副産物の枝、樹皮、木屑を生かしてきていたら日本の山はこんなに荒れることがなかった。

林野庁は「日本の林業はちょっと元気がない」と言い方をしている。私は「もう壊れている」のだと思う。この壊れを自覚して、将来に向かって新しいシステムを作り上げてゆくべきだと思う。
過去の破綻したシステムにしがみついていたり、環境のためというお題目で山林地主に税金を投入しても、日本の山は絶対に蘇生しない。
新規に産業を興すくらいの覚悟でないと未来はない。

よく、日本の山をダメにしたのは安い外材が入ってきたからだという人が今でもいる。
もし、外材が入ってこなかったら、日本の住宅は軒並み鉄骨プレハブか鉄筋住宅に変わっていた。日本に木造住宅が残ったのは、外材が入ってきたおかげ。
そして、現在では外材は決して安くはない。国産材の方が安い。それなのに、日本の山から優れた製材品が出てこない。
問題は、日本の製材所が、消費者やビルダーの立場に立って、必要とされる精度の高い乾燥材を、必要な量を揃え、必要な時と場所へ提供してきたか、ということ。

バブルの時に生木のヒノキ材が国際的な価格水準を無視して高く売れた。
その甘い汁が忘れられず、未乾燥材を平気で出荷している。国産材に占める乾燥材の比率は15%程度。まさしく発展途上国並。
ヨーロッパでは未乾燥材は一切輸入禁止。そして、乾燥コストは3000〜4000円/立方メートルくらい。これに対して日本は8000〜1万円/立方メートルなどと平気で言う。これは燃料に石油を使っているから。当社の場合は木の皮やカンナ屑を燃料として使っているのでコストはかからない。

森林の最大のルールは「成長量以上は伐採しない」だ。
これが先進国の常識になってきている。日本の山林の成長量は1億立方メートル。これだけは伐ってよい。
ところが現実は2000立方メートルを越えない。
日本は今まで「環境のために山に木を植えてきた」という人はいない。子どもや孫の代に伐るための経済林として植えてきた。
伐採と搬出のことも考えずに、一攫千金を夢見てやたらと植えてきた。
そして、そうした山林地主に山が細分化されていて、計画的な出荷が出来ない。量がまとまらないから山の生産性が低くなる。
日本では1人1日3〜4立方メートルの出荷量。これに対してオーストリアは10〜15立方メートル。ものすごく効率のよい機械を開発・導入しているスウェーデンやフィンランドでは、場合によっては50立方メートルも出している。
平地と山の違いがあると言うが、国境地域は日本と同じような急傾斜地が多い。そこでも苦にならないような機械とシステムを開発して生産性を上げている。
このため、山にカネが残る。日本は国際価格を提示しても山にカネが残らない。
林野庁を含めて山林関係者の視野が狭く、「山のビジネスモデル」が日本にはない。
経営者と労働者の双方にビジョンがなく、したがってやる気がない。
この根本を変えないと、いくら補助金を積んでも問題は解決しない。

当社ではかなり前から木材の乾燥に樹皮とカンナ屑を使っていた。しかし、熱利用だけでは蒸気が余るから発電に挑戦してきた。熱効率だと80数%回収できるのだが、正直言って現在の発電効率は11〜12%と低すぎる。これをなんとか規模を拡大して高くしてゆきたい。
その時、燃料はカンナ屑でいいのか。やはりペレットにすべきではないか。
そういったことを考え、これからも試行錯誤を続けて行きたいと考えている。
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2007年07月25日

軸組とツーバィフォーの本格的な合体こそ!



このところ毎日S邸の現場へ顔を出している。
担当している4人のフレーマーチームの仕事ぶりが、私が見てきたアメリカのどの大工さんチームよりも仕事が丁寧で、うならせられたから。
生産性という面では若干問題がある。
しかし施工精度という点ではアメリカの大工さんをはるかに超えている。

このため、見ていて面白くてしょうがない。
高い航空運賃も、レンタカー代も払わずに、日本に居ながらにして世界最高レベルの技能が見られる。
こんなにありがたいことはない。
素晴らしい勉強のチャンスに巡り会えるのは、なんと幸福なことだろう…。
お利口な皆さんは「また鵜野の大ホラが始まった」と笑うでしょう。
身から出たサビで、笑われても仕方がない。
しかし「だまされたと思って、私と一日付き合った方がいいですよ」と言いたい。
とんでもない発見がありますよ。

といっても、フレーマーチームは昨日で打ち上げ。
本来は4人チームと焼鳥屋で焼酎を交わしながら、いろいろ話を聞きたかった。
しかし、朝4時に起床、群馬から車できてクタクタに働いている職人さんを呼び止めるだけのくそ度胸がなかった。
第一線を退いた私がこれほど惚れたのだから、現役の若社長だったら、感涙の経験が出来たと思う…。
もっと早く仲間の社長さんに呼びかけるべきだった。
本物を見ると、本当の智慧、アイディアが湧いてくる。
ネットばかり見ていたのでは、企業人としては成功出来ない。

といっても、4人チームは東京から去っただけで、日本から去ったわけではない。
鵜野のホラに付き合ってみたいという若いトップがいたら、いつでも付き合います。
ともかく、本物を見ましょうよ。
アイディアは必然的に湧いてくるから…。
ということで書きたいことはいっぱいあるが、今回はツーバィフォーのプレカットのことに絞って考えたい。

アメリカの都市では、住宅づくりというのは「オープンスペース・コミュニティ」づくりのこと。
散在戸建てのカスタムハウスというのは、田舎の農家需要と大都市の高額物件を中心に15%程度しかない。
圧倒的多数は、街づくりの一貫としての分譲という形で供給されている。
どの分譲地を選ぶかということが第1の選択肢。そしてその中でどのモデルにするかが第2の選択肢。

分譲という形で需要を集約しているので、建築現場は工場そのもの。
流れ作業で職人が効率よく隣の現場へ移動してゆく。
工場で、高い設備費と運送費をかけてプレカットしなくても、現場で十分に対応出来る。
そして、現場で加工するよりもコストメリットが実証できるものだけが工場生産化されている。
屋根トラスであったり平衡弦トラスであったり、TJIとか集成梁など。
こうしたものを多用して、80坪とか100坪の大きな住宅がいとも簡単に作られている。
そして、現場加工を前提にしているから、使用する金物は公庫の仕様書にあるもので十分に間に合う。
また、スパンが1間半以内の天井根太などにL型のJH-SとかJHを使うという馬鹿なことはない。

そして、なんでも工場生産化ということを考えるから、集成材やLVLなどの大きな梁材が必要になってきている。
このフォーバイとかシックスバイという梁と梁の接合を、従来の公庫の金物だけで処理しようとしている。
この金物の処理に大きな疑問が!

軸組で始まった剛な金物による継ぎ手、仕口。
私は、日本で開発されたこうした剛金物は、大変な優れものだと思う。
表に現れず、木材の中に隠れてしまう。
防火上からみても大変に安全。
とくに門型フレームに使われている金物にはほれぼれさせられるものがある。
大きな梁と梁。大きな柱と大梁との結合には、日本で開発されてこうした金物を、ツーバィフォーでも多用すべきだと思う。
いつまでもBHHとかBHSだけにこだわっているのがおかしい。

梁の接合部をプレカット場でプレカットすれことの方が、天井根太のL型金物を取り付けて喜んでいるよりは、はるかに意義がある。構造的に剛になり、しかも省力化が図れる。
つまり、ツーバィフォーのプレカット工場は30年来ほとんど進歩していない。
減価償却した古い設備で、細々と食っている。
公庫の仕様書から一歩も前へ出ようとしない臆病者。
このため、軸組の剛金物によるプレカット化に比べて、技術的にも意識的にもはるかに遅れてしまっている。
正直いって、情けない。

私は、ツーバィフォーが構造的に優れているので大好き。
とくに間柱が38mmあることが、耐震性に決定的な意義を持っていることが分かってから、軸組の間柱も太くすべきだと強調してきている。
そして、これからは充填断熱プラス外断熱の時代だということを考えると、従来の24mmとか27mmの間柱を追放して行くべき。
でないとブラケットが機能しない。
間柱を太くしてゆくと、構造的にツーバィフォーに近似してくる。

ツーバィフォーの4インチ材には軸組の剛金物をなんとか採用出来るようにしてもらいたい。
プレカット屋1社でムリだったら、連合会でカネを出し合って認定をとり、公庫の仕様書に新しい金物欄を付け加えてほしい。

もう、充填断熱か外断熱かを議論している時代ではない。
充填断熱プラス外断熱の時代。

同じことで、軸組かツーバィフォーかで議論している人は頭が古すぎる。
アルツハィマー症候群と言える。
ウッドフレーミングということで、軸組とツーバィフォーの融合を真剣に考えて行くべきだと本気で考えます。

北米や北欧材に比べて強度の落ちる国産材の本格的な活用を考えるならば、これしかないはず。
そして、日本の新しい剛な金物によるミックス木質構造を、国産材と込みで世界に売り出して行くべき。
それぐらいの展望を持たないと、日本の山林は救われない。

S邸で、フレーマーの大きな進歩に触れ、プレカット屋の進歩のなさに気が苛立って、無礼な口調になったことはお詫びします。
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2007年06月20日

NHK教育テレビのフォーラム「地球温暖化と森林」に異議あり


先週6月17日夜6時からNHK教育テレビ・日曜フォーラムで「地球温暖化と森林」というテーマを取り上げていた。
出席者は橋本高知県知事と和歌山県の林産の責任者。
大学教授とトヨタ白川郷自然学校長の稲本正氏。
それに植林運動にボランタリーで参加している民間企業。

内容はいたって薄っぺら。正直言ってがっかり。
橋本知事は、自分こそが林業の実態を一番よく知っており、地球温暖化に対して一番闘っているかのように発言。
稲本氏にいたっては、私の唱えるロハスこそが地球を救う唯一の方法で、「国産材を使ってこそ地球の温暖化が阻止出来るのであって、外材を使っているビルダーは犯罪者である」かのような偉ぶった説教口調。
「森林と木工」に関する氏の多くの労作に感動させられてきただけに、この発言には百年の恋も一瞬に冷めてしまった。
ビルダーや消費者を馬鹿呼ばわりすることにこそ、国産材不振の最大の原因がある。


日本の住宅のインテリアで、この30年間に大きく変わったことがある。
それは、インテリアコーデネィターの誕生と共に「カラーコーデネィト」というコンセプトが導入されたこと。
このカラーコーデネィトは、最初は女性の衣装などのファッションに端を発している。
下着からあらゆる衣装、靴、ハンドバックまでをトータルでコーデネィトする。
そのことによる美しさに女性は目覚めた。

そのファッションセンスが、インテリアコーデネィトに持ち込まれ、やたらに色を使うのではなく、基本色を決め、総合的にアレンジしてゆく。
30年前は、床材としてカーペットとCFシートが用いられていた。
カーペットを基本色として、部屋毎にカラーコーデネィトを変えるというのが、初期のインテリアコーデネィターの仕事。
それが、ダニの問題からカーペットが嫌われ、フロアー全盛時代となってきた。
このフロアー時代になって、「木」がベースになることによるカラーコーデネィトの難しさがクローズアップされ、女性達の限りない追求が始まった。

日本の古い住宅はタタミがベース。
淡い青というか黄色が部屋の基本色。
そして壁は塗り壁で白。
そして柱や梁は黒く塗ったり、生地のままだったり、あるいは私の田舎の富山ではウルシを塗ったりした。
しかし、それなりにしっとりとしたカラーコーデネィトがなされていた。

ところが、木のフロアー全盛時代となり、フロアーの色に関係なくプリント合板などいろんな色と杢目と柾目が日本に住宅に持ち込まれ、統一性がなく、下品で落ち着きのないものに一変した。白い木、黄色い木、黒っぽい木……。
そして、樹種もさまざま。
ヒノキもあればスギもある。ラワンの建具もあればプリントのチーク模様の壁や家具もある。キリのタンスもあれば欅の鏡台もある。テレビまでがわけの分からない家具調杢目……という具合に。

つまりアンバランス全盛時代。
こうした雑多な色と樹種は人々の神経を逆なでし、子どもの情緒感覚を鈍らせた。
フロアーが木になって、日本の住宅は満艦飾のチンドン屋になってしまった。

これから脱皮したのが、初期の黒っぽいオークをベースにしたカラーコーデネィト。
これは、気品があり、重厚感もあって高級住宅に瞬く間に普及していった。
このあと、ワインカラーブームもあった。
そして、スウェーデンハウスの「節のあるパイン材」での統一が、若い女性のセンスをくすぐった。
やたらにお高くとまり、重量感で心を圧迫するオークよりも、節があっても白っぽいパイン材の明るさが好まれ、これまたあっという間に拡がった。

この延長線上で、強固なフアン層を獲得したのがメープル。
フロアーをはじめシステムキッチン、ドアを白っぽいメープルで施工した家は明るく、落ち着きがある。しかも堅木で、傷がつきにくい。
消費者……もっとも家の中に長くいる主婦からは絶対の支持を集めている。
白っぽい生地がベースだから、上品なカラーコーデネィトが出来、情緒の豊かな空間を創造することが出来る。

そして、なんでも木にすればいいというものではない。
部屋の中で木が占める範囲はせいぜい30%程度。
それ以上となってくると、セカンドハウスか山小屋風になって格調が落ち、日常の生活とは馴染まない。
木の使う面積を広めればいいというものではない。
フロアーとか梁とかドアなど、全体の調和を崩すことがなく、ポイントを絞って心の和む無垢のものが欲しい。
こういう家だったら50年でも100年でも、飽きずに住むことが出来る。
これこそが、女性の「住まいと木」に対するソフトな要望の集約。

一方、男性の立場。いわゆる家を建てる側のハードな要望。
まず、製品の規格が統一していて、性能にバラツキがないこと。
そのためには、構造材は集成材でもいいから強度があること。
発注すれば、いつでも必要な資材が、必要なだけ入手出来ること。
必ず乾燥がなされていて、含水率が一定以下で狂わないこと。 
とくに太い梁材やセイの大きな根太材は、エンジニアウッドで良いから収縮がなく、クレームがないこと。

おおまかにいうと、これが顧客の要望。
全ての産業は、顧客の要望からスタートする。
日本の木材需要が、外材中心にならざるを得なかったのは、単に価格だけではなく、強度や乾燥、加工度や色などに問題があったという事実をまず認めるべき。

その上で、弱点の多い国産材を如何に活用してゆくかを、ビルダーや消費者を含めて真剣に考えるべき。
この反省がないと、一時的に価格面から国産材が見直されることがあっても、結局は消費者から見放される。
温暖地の国産材の強度の弱い杉。
しかも芯は赤味で、最近の女性好みではない。
「ベイツガは腐りやすい」「ホワイトウッドはシロアリに弱い」と、自分のことは棚にあげ、口角泡を飛ばして相手を罵っても、そんな見え透いた繰り言に消費者やビルダーは騙されない。

日本林業の実態を徹底的に足で探り、一番正しい分析をしているのは田中淳夫氏だと思う。 
近著「森林からのニッポン再生」(平凡社新書)には、ほとんどの問題が列記されており、その方向が示唆されている。
この著書は別の機会に取り上げたいと思うが、需要者側の意見と動向を無視した「押しつけの国産材活用論」は、経済的に成立するわけがない。
都市生活者のボランタリー活動に、おんぶしようというさもしい根性だけではダメ。
posted by unohideo at 10:25| Comment(0) | TrackBack(1) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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