2007年08月30日

「住宅の履歴書」は絶対に必要だが…



住宅屋をやっていると施主とのつながりでいろんな相談を受ける。
その時、設計図書があれば「ほっ」とする。
図面を見ると、大体のことが把握できるから…。
そして、小屋裏へ上がったり、壁の一部を壊して中をのぞき込んだりして問題点を発見する。
設計図書があれば問題点の発見が早い。しかし、設計図書だけで、その住宅の健康度を測定することはできない。細部ごとに細かく診断しないと、改善の方法が判らないし、まして不動産の価値評価は出来ない。

平・立面図から展開図、矩計図、設備図、部分詳細図、構造設計図などの図面をはじめ、確認申請書、仕様書、見積書などの設計図書は、絶対に消費者とビルダーの双方で保存しておかなければならない。
とくに施主は、将来その家を大幅に改築する時、あるいは売ることがある。その場合に設計図書一式は絶対に必要。

今では、CD化が進んで、設計図書一式を簡単に保存することが出来るようになった。
しかし、10年前までは、この設計図書の保存は容易なことではなかった。
年間数百戸をこなしていると、確認申請書の保管だけでもすぐに書庫が一杯になる。設計図書はあいうえお順に区分して保管したが、これも瞬く間に一杯になり、保管に苦労した。
最近ではパネル化が進んでいて、工事途中の構造図の変更が少ない。しかし、現場加工でやっていた時は、施主の注文による設計変更はザラ。保管する図面は訂正を書き込んだ監督が所蔵していた図面でなければ意味がなく、手垢と書き込みでボロボロのものも多かった。だが、あとでクレームが発生した場合は、その使い込まれた設計図書が大いに役立ってくれた。

つまり、保存しておかなければならないのは確認申請図書ではなく、途中で幾多の変更を書き込んだ設計図書。
これは、住宅メーカーでもビルダーでも貴重な財産として保管している。
しかし、設計図書の様式はプレハブ各社によって異なるし、仕様書などは各社ともよく似ているがそれぞれに若干異なる。
それらのフォーマットを統一し、データーベース化すべき情報を統一することは必要。
その住宅の耐震性、省エネ性、耐久性などが一目でわかるように指数化したり、計測値を記入することは非常に重要。
そして、品確法を上回る性能があるものは、それを特記出来るものであって欲しい。
そうした数値が書き込まれておれば、省エネ性能などは将来においても読みとることが出来る。

私だけでなく、多くの消費者の方も、そうした共通の履歴書があれば、比較も簡単に出来るので便利であり、賛成なさると思う。
したがって「住宅の履歴書」をCD化して一括管理することには、誰もが反対しない。
現に北海道では「北方住宅」に限ってシステム化をやっている。
それを、保証機関などにも拡大してゆけばいいだけのこと。
そして不動産の評価には、やはりプロの「インスペクター」の存在が不可欠。

8月26日付の日本経済新聞紙の一面トップで報道された国土交通省の「中古住宅の市場を活性化するために、プレハブメーカーなどの住宅の履歴書を国が認証し、固定資産税や登録免許税、不動産取得税を軽減させる」という政策には、どうしても疑問符がつく。
ゲスの勘ぐりという言葉がある。
私は品確法以来、国土交通省の住宅政策には信頼が置けなくなっている。
品確法は、美辞麗句に包まれているが、内容は大手プレハブメーカーの「低い省エネ性能の国家的な容認」であり、役人の「天下り先の確保法案」にすぎなかった。
フランスの、どうにもならない法案を持ってきて、消費者保護のための国際的に認められた法案であるかのように装った。
東大の都市工学科出身の秀才は、悪智慧にも長けている。
品確法は「消費者」のためではなく「住宅局の役人」のために制定された。
そんな前歴を持っている住宅局の言うこと。
どんな裏があるのかと勘ぐったとしても許されよう。

住団連(住宅生産者団体連合会)という組織がある。
大手プレハブメーカーが中心になっている団体だが、これが住宅の長寿化に対応する税制を要望している。
その要望に応えるという形で、国土交通省が打ち上げた花火が、先の日本経済新聞の記事なのだろうと推測。
したがって、この制度はプレハブ大手メーカー主導での運用が考えられている。

何回も書いてきたことだが、戦前の農林省の役人は大地主の横暴を抑え、なんとか小作人を助けたいとする良心的な人々の集団であった。ところが進駐軍による農地解放で目的を失い、単なる利権集団と化してしまった。
戦後の建設省は、先進国の中で一番貧弱な住環境を前にして、非常に革新的にならざるをえなかった。尚住宅局長、澤田住宅局長時代までは戦前の農林省に匹敵する革新集団であった。しかし、住宅の在庫数が世帯数を大幅に上回った20年前から、建設省住宅局の堕落がはじまった。
住宅局は「国民のために存在する」のではなく、住宅局の「役人のための存在に」。

私は、公務員制度改革は国民のためにも大切だが、より役人のために必要不可欠な法律だと考えています。
最近、国土交通省のお役人さんとは会う必要がなく、住宅局の内実について昔のような豊富な情報がないので確言はできない。
ただこの10年来、住宅金融公庫の技術屋さんを見ていてつくづく可哀想になって、住宅局もそうではないかと推測していることがあります。
枠組壁工法の「標準仕様書」を作成するときに集まった公庫の若手技術者集団。
彼らは、単にツーバィフォーの普及に貢献しただけでなく、木軸工法の科学的な見直しにも大きく貢献した。
日本の木造住宅が複権したのは、公庫の技術者のお陰だと言っても過言でない。
ところが、標準仕様書を作成した優秀な仲間が、10年前から順次民間の住宅会社に天下りさせられはじめた。
5人の仲間のうち、関連企業の役員で残れたのは1人だけで、あとは全員民間へはじきとばされた。

天下りというと凄い保証があるように感じられるが、公庫の技術者の場合は情報集めの参与という軽い立場。なんとか食い扶持にありついているという淋しい姿。
公庫融資がなくなったので、かつてのような羽振りがきかない。
そして、のこった1人は、ひたすらに公庫という部落を守るために頑張るしかない。
かつてのように天下国家を論じる馬力は、ない。
1人だけがのぼりつめられるという公務員制度を抜本的に改革し、定年まで勤められるようにすることと、官民の人材の相互乗り入れということも考えてゆかねばならない。
そうしないかぎり役人は救われない。
国のため、消費者のために頑張れない。

嫌々ながらも天下りを受け入れてくれるプレハブ大手。この言うことは聞かざるを得ない。
という事情が、日経の記事の背景にあります。
と同時に、住宅局がトップランナー方式を採用出来ないという理由もここにあります。
posted by unohideo at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 住宅メーカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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