2007年03月30日

札幌市郊外の、世界一醜い風景にこそイノベーションのチャンスが!

「美しい景観を創る会」というのがある。
1年3ヶ月前に、日本の「悪い景観100選」を発表し、話題を呼んだ。
美しい景観を創る会だから、本来は「美しい景観100選」を選ぶのが本筋。
ところが、あえて悪い景観を選んだ。
反面教師として考えてもらおうということだろう。
そしてこの発表は、逆説的な効果と反響を呼んだ。

http://www.utsukushii-keikan.net

これを開いて見ればわかるように、実際には悪い景観は70選しかなく、改善例が30選ばれている。
そして、悪い環境の中には設計家の傲慢さによるものがかなり目立つが、やはり何と言っても美しい日本の景観を破壊しているのは過剰な広告看板であり、電柱と電線であることが嫌というほどわかってくる。

私たちが世界を旅して、思わず「美しい」と感じてシャッターを押す。
その時、美しいと感じた自然の中には、自然に溶け込んだ住宅がある。
美しい住宅は、自然をより美しく際だたせている。
人々の心を和ませ、若き子供の情緒を育んでくれる。

その美しい風景をぶち壊しているのが過剰な立て看板であり、電柱。
木造住宅は、よほどのことがない限り、風景の破壊者になることはない。
私共の脳裏にある美しい北海道。
それはのどかな田園に展開するマンサードの畜舎であり、札幌の時計台に代表される勾配のある切り妻屋根。
10年前までは、レンタカーを借りて何度か北海道を走り回った。そして、北海道の風景は旅人を裏切ることがなかった。

しかしここ数年来、札幌の郊外を走るたびに、吐き気が催してくる。
なんとも惨めな気持ちになり、悲しくなってくる。
「もう2度と札幌なんかへくるものか!」と決別の念を抱かせられる。
それほど、札幌の戸建ての住宅は醜い。
今度も、KMブラケットの施工現場を見るため北区の住宅街を訪ねた。

札幌で分譲される敷地は約70坪程度という。
そして、勾配屋根を用いると、境界線から3メートルは離さないと自分の敷地から落雪がはみ出す。このため、少しでも庭をとろうとすると、屋根を平らな無落雪にして、北側へ寄せざるをえない。
2600万円程度のマンションに対抗するためには、同程度の価格で戸建てを提供するとなると、何の変哲もない無落雪住宅が軒を連ねるということになる。
おっと間違えた。連ねる軒の無いノッペラボウ!
これが、墓石のように連なっている。

省エネとかQ1とかを叫ぶ前に、このみっともない住宅を何とかしなければならない。その大きな責任が地場ビルダーや設計家にある?
包丁で大きく切った豆腐かコンニャク型の箱。
これを、如何にして追放して行くかということが、地場の住宅業者の最大の課題ではないか?

自然には四角い鋭利な線はない。ほとんどが曲線から出来ている。
数年来「シンプル・モダン」という言葉を住宅屋は、自分の都合で流行らせた。
低価格品の箱を誤魔化すには、シンプル・モダンという言葉は格好いい。
いかにも流行の最先端をゆくデザインのような気がする。
しかし、高温多湿で多雨。そして直射日光を浴びる箱は、エネルギーの浪費の面からも、膨大なメンテナンス費の面からも、更には耐久性という面からも建築的に一つのメリットもない。デメリットだけの醜悪な塊。

四角いだけならまだ許せる。
表情が一つもない。
美人というのは鼻が出ていて目がへこんでいる。凹凸があって立体的。
建築の美しさというのは立体的な造形美の中にある。
鼻ぺちゃの細い垂れ目。そうしたノッペラボウのブスが、延々と続く。
これは、景観の破壊以外の何ものでもない。
いろんな美しいデザインが並ぶ中に、たった一つだけシンプルな箱があるというなら、まだ許せる。しかし、こうした箱がずらりと並んでいるのをみると「悪い景観100選」のトップに推薦せざるを得ない。

札幌から帰って、いつもの住宅地を散歩した。
今までは、美しさの欠ける景観に嫌気がさしていた。ちゃちな分譲住宅が鼻についてしょうがなかった。ところが、札幌の風景に比べると、なんと豊かな表情であることか。それなりに調和がとれている。
正直言って、ホッとした。
それほど、札幌の無落雪住宅群は、ストレスを与える。
息が苦しくなってくる。こんな風景の中で育つ子供の精神状態はどうなっているのだろうか。景観とともに情緒も破壊されているのではなかろうか…

私は、大好きな北海道と札幌の仲間の悪口を言うのが目的ではない。
厳しい環境のなかで、道民も地場ビルダーも頑張っている。
そして、ここまでデザインが破壊されていることは、ビルダーや設計士にとって絶好のチャンスが到来していると言いたいだけ。
世界で、このような仮設住宅程度のデザインが威張っている町は札幌しかない。

フラット屋根のデザインで面白いものはないかと、2千枚近いスナップ写真を漁ってみた。そしたら、十点弱だが面白いヒントが見つかった。3階建てだと優れたものが多い。2階だてだとクラシックなものは少ない。あとはモダンなものしか見当たらなかった。それほど美しいデザインではないがヒントは一杯詰まっていた。これらを煮詰めてアレンジしてゆけば、面白いデザインが得られる。
景観を一変させることが出来る。

それと、もう一つは2戸1のデュプレックスとかタウンハウスの技法を積極的に活用すること。
電信柱のない美しいデザインの小さなコミュニティづくり。
ビルダーは仲間を集い、役人を巻き込んで小さな美しい街作りに本気で取り組むべき。
そして、今までの概念と技術を一新すべき。

札幌の賢明な市民は、必ず支援してくれる。
感性と知性の豊かな札幌市民は、無落雪の灰色の墓石に満足していると考えることがおかしい。それは消費者を愚弄する敗北主義者と拝金主義者の考え。

今こそ、イノベーションのチャンスだと考えるものが、今の札幌の景観を救い、次の時代のエースになれると確信します。
posted by unohideo at 07:37| Comment(3) | TrackBack(0) | 設計・インテリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月15日

グローバリゼーション音痴の日本の住宅業界

グローバリゼーション化が叫ばれている。
しかし、住宅業界ほど、国際化の脅威を感じていない産業界も珍しい。
建築資材や設備機器が外国から入ってくることはあっても、外国から住宅そのものが輸入され、国内のメーカーやビルダーを脅かす怖れがほとんどない。
アメリカや中国のビルダーが日本へエントリーしてきて、ビルダー業を創業する心配もない。

ひと頃、若い女性を中心に「輸入住宅」が脚光を浴びた。
しかし、それは価格や性能が良かったからではなく、外観がカッコ良かったから。
そして、カッコ良い外観は、何もわざわざ欧米から高いカネを払って輸入しなくても、日本で十分に真似することが出来る。十分にトレースが可能。
このため、最近では輸入住宅に乗り出したビルダーの苦戦ぶりが目立つ。

第一、外観デザインには特許とか意匠登録がない。
設計士が部屋に立て籠もってウンウン考えている暇があったら、欧米諸外国へ行ってレンタカーを借りて郊外をドライブして回ればいい。
少なくとも過去2000年間の間に、人類が考え出した素晴らしいデザインや意匠が、
そこかしこにひしめいている。
その造形の美しさを、競っている。

私は5年前までの20年間は、ツーバィフォー工法を中心とした商品開発を主な業としていた。
直接間接に、開発に携わった商品は30近くに及ぶ。
不動産投資でつまずき、過去の人になった三澤千代治氏は25年前に、住宅の商品開発に関して名言を吐いた。

「新しい住宅に、最低10ヶ所の新しい謳い文句がなければ新商品とは言えない」

ミサワの初期のO型住宅にはそれがあった。
しかし、途中からは10ヶ所どころか2〜3ヶ所しか謳い文句が見られなくなり、ミサワの商品魅力は急速に失われた。

構造的な工夫や新しい設備機器、資材の導入はもちろんのこと、
機能や空間開発などに徹底的に取り組まない限り10ヶ所の謳い文句は揃わない。

昔は、住宅展示場の寿命はせいぜい4年がいいところだと言われていた。
大手住宅メーカーだと全国展開しているから、一つの商品で持ち回りが効く。
ところが、狭いエリアで商売している地場ビルダーの場合は、同じ商品を建てるわけにはゆかない。
12ヶ所に展示場を出していると、改築分を含めると毎年最低2つの新しい商品を開発しなければならなかった。
そのそれぞれに10ヶ所の謳い文句を付加してゆくという仕事は、それこそ命がけ。
そのプレッシャーが、他社に先駆けての太陽光発電の本格採用とか温暖地での最初の高気密・高断熱住宅へのトライに繋がった。

新しい謳い文句づくりには苦労したが、デザイン面ではほとんど苦労らしい苦労はしなかった。
幸運にも私は、30回以上も欧米の住宅を見て回るチャンスに恵まれた。
そして、どの国へ行っても早朝5時には起き、カメラを持って街を歩き回った。
ホテルの近くに美しい住宅地がない場合は、ホテルの前に停まっているタクシーをつかまえて身振り手振りで高級住宅街に案内させ、タクシーから降りて思う存分にシャッターを押して回った。タクシーは私の跡をノロノロ付いてきた。

こうした経験を積んでいるうちに、どの国へ行っても直カンで高級住宅街を探し出す能力が身についてきた。
そして、どんなに高級住宅であっても、これはという住宅の中へ入って必ず写真を撮らせてもらえるノウハウも体得した。
このため、新モデルの開発の時に必要なデザインは、ポケットを探せばいつでも美しい外観が取り出せた。
新しい内部空間づくりのアイデアも、世界にはワンサと転がっている。その中から選ぶだけで良かった。

住宅のデザインでは、ことさらに新しいことをひねり出す必要はない。それよりも施主の潜在要望を如何に引き出し、施主の要望を超える立体的な形にまとめ上げられるかがポイント。
こんなことを言うと、世の中の一級建築士から総スカンを喰うおそれがある。
しかし、あえて言いたい。

「あなた方はあまりにも勉強していない。この地球の上には、飛びきり美しいデザインの住宅が、少なくとも100万戸は存在しているのですよ」と。

若手の著名な設計士さんの作品が、建築雑誌に載っている。
しかし、残念ながら感心させられたことは少ない。
「自分の独創のようにもったいぶっているが、そんなものは既に地上にいくらでもある。昔の人がとっくに発見し、実用に供しています。ただ、貴方が自分の足でそれを探し出していないだけですよ」とも。

ことほどさように、日本の住宅関係者の多くは、世界の事情に疎い。
疎くても、マーケットがグローバルでないから通用する。
日本という狭い範囲でなんとか凌いでさえおれば、メシにありつける。
日本のプレハブ住宅の価格が世界一高いのに、その性能は世界一悪いというのはこうした背景があるから。
つまり、強力な地場ビルダーの存在以外に、強力な敵がいない。
したがって、鉄骨プレハブで外断熱をやったということで威張っておれる。

これに対して、マーケットを統一したEUでは、スウェーデンの建築家がドイツで仕事をしたり、ドイツの大工さんが隣のスイスで仕事をすることが出来る。
住宅業界は徐々にではあるが、グローバル化している。
そして、省エネ化、CO2削減ということでは、EUは一致して大行動を起こそうとしている。それが、住宅業界に強く反映している。

スウェーデン、ノルウェー、デンマークの北欧三国をはじめドイツ、オーストリア、スイスでは、パッシブハウスとかゼロエネルギーハウスは共通用語になってきており、その技術基準が統一されつつある。
こうしたグローバリゼーションの中で、日本のように「次世代省エネ基準」などと言っていると取り残される。
このため、各国が競ってパッシブハウス化に舵を切っている、のです。
posted by unohideo at 06:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 設計・インテリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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