2008年07月25日

Q値が2.0W/uの住宅は、外断熱だけでは処理出来ない


W地域では「これからはQ値が0.2W/u以上の住宅が最低条件になってくるはず」と、私は勝手に考えている。
年をとってくると「思いこみが強くなるものだ」と笑って聞き捨てて頂いて結構。

さて、Q値が0.2W/u以下にするためには、壁の熱貫流率(K値)は最低で0.4W/u、出来ることなら0.39W/u以下の性能を担保したい。
この壁の0.4Wとか0.39Wというのは、断熱材の面だけの数値ではない。柱やスタッド、2階根太回りや胴差し、あるいはまぐさなど、木部のヒートブリッジになる木の部分を含めた全体の壁の平均値。

したがって、簡単に手計算をしてみると、外断熱だけでこの数値を担保しようとするとEPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム特号)の場合は、熱伝導率が0.034Wであることを考えるとボード厚は75mm以上が必要となる。外壁材の保持力を考えると、とても安全に処理出来る厚さではない。

それではと熱伝導率が0.02WのネオマフォームやAFボード。さらには熱伝導率が0.0186Wと優れているキューワンボードで手計算。
やはり、45mm厚が必要になってくる。
AFボードは、ボードの継ぎ目に木の横桟を使っているから問題なさそうに見える。だが、対象が木であっても直下型の地震では長いクギは完全に曲がってしまう。あの太いホールダン金物が、直下型の中越地震では数多くが破損していたという事実を、断熱屋さんは知らないのか、軽視しているのか…。

また一部ビルダーでは、構造体ではなく木とクギを用い、たるきから吊り下げる方法で200mmも300mmも外側に断熱材をふかすことを考えている向きもある。
その場合は、構造専門家による構造チェックを必ず行って頂きたい。

外装仕上げ材が軽いガルバニウム鋼板か、ガラス繊維メッシュ入りの軽量塗り壁仕上げ以外は、外断熱で40mm厚以上のものを使いたくない。
外断熱の厚さは、サイデング仕上げでは25mm以内、タイル仕上げだと15mm以内と限定したい。
それ以上の厚みのものを使うには、絶対に直下型の震度7にも耐えられる20kg/u以上の保持力を持つ特殊工法の開発が不可欠。

それと、こうした発泡プラスチック系断熱材の気密性能は、ほとんどがありふれたテープに依存している。
通気層があるとはいえ、南面、東西面の外壁はかなり熱せられる。一般的な接着テープは、本当に30年とか50年の耐久性があるのだろうか。あるいは100年住宅とか200年住宅という耐久性を謳っている住宅で、本当にその部分が耐えられるのだろうか。
使うビルダーの立場としては、どうしても気になる。

まして準防火仕様となってくると、外断熱だけでK値0.4W/uを達成しようとするならばKMブラケットを採用した100mm厚のロックウールか、同じ100mm厚のロックウール・ラメラで、ガラス繊維メッシュ入りの軽量塗り壁仕上げで防火認定をとったものしか使えない。
つまり、直下型の震度7の耐震性や防火性を考えると、Q値が2.0W/u以上の住宅の場合は、木構造では外断熱オンリーで考えるのは馬鹿げているということが分かってくる。
充填プラス外断熱か、充填断熱がどこまでも本命。

価格的にみても、K値が0.4Wの場合は、高性能グラスウール100mmによる充填断熱が最適。
ところが、関東以西では、この充填断熱の専門家が極めて少ない。
マイスターハウスでは、早くから断熱・気密の専門工とドライウォールの専門工を育成してきている。
そして、断熱・気密の専門工は、夏でも長袖のシャツを着て、マスクをつけて手袋をして施工をするのが常識。
どこかの自称大評論家さんが「グラスウールはチクチクするから大工さんが嫌う。だから使わなかった」と、とぼけた寝言を未だに言っている。
たしかに、この重装備を嫌う職人さんが多い。そこで、マイスターではシロアリ屋さんに眼をつけた。重装備の彼らは、断熱工事の長袖はいとはない。ということで、日本には断熱・気密のマイスター制度はないが、マイスターと呼んでいいほどの、きちんとした仕事をこなしている。

また、北海道や東北には、断熱の専門工事業者も多い。
専門業者でなくても、大工さんが長袖、手袋、マスクの姿で、断熱・気密工事を見事にこなしている。
私も30年近く前から、大工さんにグラスウールの断熱施工を、北海道の業者から学んで教えてきた。
ツーバィフォーの場合は、木軸のように筋交いがないから断熱施工はいたって簡単。壁一杯の厚みのものを施工するのだから、ズレ落ちたりシワがよったりということはほとんどない。長袖と手袋で簡単に対処出来る。
やはり難しいのは気密工事。
配線や配管が壁を貫通している場合の丁寧な処理がものを言う。
それと、コンセントやスイッチボックス回りの気密施工。
慣れてればどうということはない。
気密工事が終わった直後に気密テストをやるから、結果がすぐわかる。
すぐ分かるから、大工さんも真剣になって断熱・気密工事に取り組んでくれた。

こうした優れた大工さんや職人は全国で多くなってきている。
しかし、全国的な規模で見るならば、きちんとした充填断熱材をこなし、気密のべバーバリア工事を完全に行える大工さんは1/5にも満たないのではないだろうか。
そして、きちんとした断熱・気密の技能と理論をマスターしていないため、多くの大工さんと工務店は安易な外断熱へ走ってしまっている。
これは勉強不足の証明で、実に情けないありさま。

発泡系外断熱は防火の面でも問題が多いし、なんと言っても外壁の保持力が一般的に10kg/u以下と低い。そして、外壁面でのテープだけの気密処理だから、気密性能の耐久性が著しく落ちる。

私は迷っている。
工務店が、これから施工する全ての住宅のQ値を2.0W/u以下にするという意欲と覚悟があるのなら、大工さんに本格的な充填断熱の技術をマスターさせたいと考えている。
しかし、工務店にその気がない場合、大工さんが断熱・気密の技術をマスターしても宝の持ち腐れになってしまう。常に繰り返し施工してゆくから身に付くのであって、間があいたのでは技能が身につかない。

とすれば、0.39Wの外壁の熱貫流率を確実に保証し、0.5cm2の隙間相当面積の気密性能を担保して壁内結露を追放するには、ノンフロンのウレタン現場発泡を専門業者に発注させた方が、もっとも安心かもしれない。
その専門業者は4万円で気密測定もやってくれる。

いままでは、自分で全てをやってきたので、充填断熱のことを簡単に考えていた。
しかし、関東以西の経験の乏しい弱小工務店の現実を考えたら、いささか憂鬱になってきた。
外断熱がのさばっているのは、グラスウールメーカーの職人と工務店主の教育・研修が足りなかったから。それに「グラスウールは結露する」などという暴言に協会としてきちんと対応してこなかった腰抜けの姿勢。特にM氏に対しては訴訟を起こすべきであった。それをやらなかったから、グラスウール業界が社会全体から舐められた。
と同時に外断熱メーカーは、職人さんの技能をアップさせようとは考えず、職人さんの技能の低さにつけこんで、一商売しょうという意図が見え見え。
見ていて腹がたってくる。
「どこまで職人さんを馬鹿扱いすれば気がすむのか」と。

日本の職人さんは、いつから怠けものになってしまったのだろうか?
posted by unohideo at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 大工・専門職 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月15日

台風4号前の、一階床組工事の雨養生!

優れた職人が働いている建築現場は面白い。
工事そのものは、何十回、何百回と見慣れた仕事。
ところが、優れた職人はいろんな工夫を凝らしていて素晴らしい段取りや動きを見せてくれる。
“はっ”として現場から動けなくなり、そのまま2時間以上も現場に張り付けになってしまうことも…。
もちろん、段取りが悪い職人や間違った施工の現場は見たくない。早々に退散。

ツーバィフォーを導入した時、延べで丸2ヶ月、アメリカの建築現場に張り付いた。
そして、あらゆる職人の動きをひたすらにじっと観察させてもらった。
アメリカの建築現場はオープン。
「ハーイ」と挨拶し、風呂敷や扇子などの小さなお土産を渡せば、2時間でも3時間でも見学させてくれる。
見学させてくれるという表現は正しくない。
彼等は自分の仕事に没頭。稼ぐために目の色を変えて集中している。
眼鏡をかけた胴長の参観者の存在など眼中にない。
「勝手にどうぞ」というわけ。

この観察で、ツーバィフォー工法の全ての段取り(工程)と人工数(アメリカではマンアワーという)と墨出しやカットなどの技術・技能などの全体像が理解出来た。
IE(インダストリアル・エンジニアリング)に裏打ちされた生産性の高さ、つまりムダのない動きが実感として把握できた。
ツーバィフォーの標準仕様書が図解を中心にわかり易いものになったのは、現場からの発想が背景にあったから。

その後も、アメリカへゆくたびに各都市でレンタカーを借りて、郊外の新開地を訪ねた。
その都度、発見があった。
新しいイノベーションに接することが出来た。
アメリカへ行ったら、建築設計事務所やハウスメーカーを訪ねてムダな時間を費やすのはもったいない。
レンタカーで、いきなり郊外の新開発地へ直行すべき。
そこには、新しいコンセプトを搭載したモデルハウスが存在し、隣接する現場では新しい技術やイノベーションに巡り会える。

20年ぐらい前までは、面白い現場はアメリカに集中していた。
ヨーロッパや日本の現場には感動するものが少なかった。
カナダの現場はチンタラムードで苛立たしい思いをした。

それが最近では、日本や北欧、カナダの現場が面白くなってきている。
面白くなってきたというのは、職人さんの動きに“はっ”とするものが増えてきたことと、新しい考案が見られること。
もちろん、どの現場でも“はっ”とするわけではない。
以前は、サッポロの「よねくらフレーマーチーム」が圧巻だった。
それが、最近ではマイスターハウスが際立っている。
こんなことを書くと「オベンチャラばかり言いおって…」と言われる。
前防衛大臣を真似するわけではないか、事実だから「しょうがない !」


さて、今回感動させられたのはフレーミング工事そのものではない。
つまり、直接工程に関係のない些細な出来ごと。
13日は早朝から一階床組。
時折小雨がパラついたが夕方までなんとか天気はもった。
外周には406の土台を入れ、中通りと大引きには404の米ヒバの集成材を入れてゆく。
リーダーの小林さん以外の3人はバリバリの若手のチーム。
しかし、一階床面積が38坪あるので、夕方までに全ての土台と大引きを架け、アンカーボルトはなんとか締め終えた。しかし大引きの受け金物や鋼製束の施工が残った。

天気予報では14は雨。
15日の日曜日の夜には台風が来襲するとテレビが叫んでいた。
16日の休日は台風一過のあとで床合板を張り終え、17日からクレーン車を入れて本格的なフレーミングの開始予定。
職人さんの世界には定年がない。
本人が働きたいと思えば働ける。
しかし、週休2日制ではない。雨で休めば収入が減る。
日曜日は近隣のことを考えて休むが、祭日は働く。
住宅産業というのはサービス産業。祭日は稼ぎ時で、働くのが大前提。
それが嫌なら、住宅業界から去るべき。

夕方の5時近くになった。
小林リーダーがどんな指示を出すのだろうと残って見守っていた。

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まず、厚手の床合板4枚を地下室の上に並べさせた。これで万が一の事故は防げる。
そして、404の土台の切り端を束として東西一列に建てさせた。
その束の上に204材を棟木板として架けさせる。

RIMG1659.JPG

そして、3尺間隔に204材をたるきとして架け、足りないところは合板の端材を継ぎ足させた。

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これにブルーシートを架けて合板の小さな端材で上から抑えると、背の低い緩勾配屋根の出来あがり。

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そして、雨の14日は、このブルーシートの屋根の一部だけ持ち上げて、屋根の下で金物や鋼製束を取り付けて行く。
基礎の高さが40センチあるので、作業性は全く問題がない。

RIMG1774.JPG

そして、半日仕事を終えると、本格養生をして引き上げた。

チーム全員の生活と仕事、全体の段取りと施主のことを考えた小林リーダーの完全な養生の指示。これには心の底で拍手を送った。
最小の労力で最大の効果を上げる独創的な養生。
こんな意表をつく仕事を見せられると嬉しくなってくる。
これこそが、現場力の代表例。

posted by unohideo at 19:10| Comment(1) | TrackBack(0) | 大工・専門職 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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