2007年10月23日

十勝で考えたこと(7) 再訂正

今朝、TさんからFAXが入りました。
8000円と言われたので、私は一夏のクーラー代が8000円と勘違いしていました。

ところが、8月1ヶ月の電気代が8000円。その内訳は推測で
・IHヒーター  1500円
・照明、その他  3000円
・給湯      2000円
・クーラー    1500円
ではないだろうかとのこと。これだと冷房費は一夏3000円以下。
恥ずかしながら再度お詫びして訂正致します。
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2007年10月21日

十勝で考えたこと(6) 訂正

十勝の−20℃を越す寒気にエアコンは機能しないとおこられました。当然。
アース21の皆さんが昨年フランクフルトの小学校で見た1.5kW程度の補助暖房。そのようなもので十分ではなかろうかと言いたかっただけ。 お詫びして訂正致します。
しかし3リッター住宅ではこの程度の補助暖房では無理? 
やはり1.5リッターのパッシブハウス以上でないと暖房機器を排除することは不可能? 
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2007年10月20日

十勝で考えたこと(5)  Q-1よりも3リッター住宅


帰りの十勝空港に向かう前に、最後に見せてもらったのが今年の7月に完成したばかりのQ値が0.93WのT邸。いわゆるQ-1住宅。
十勝ツーバィフォー協会の会員社の若手技術屋さんの新居。
さすがに技術屋さんがプランした自宅だけあって、いろんな工夫が凝らされており、空間が最大限に活用されていて嬉しくなった。
センスがよくて紹介したいデティールが多いが、やめておく。話をもっぱら性能面に絞る。
1階86.5m2(26.2坪)、2階58.8m2(17.8坪)、延べ145.3m2(44坪)。


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外観は見たとおりのシンプル・モダン。
主な仕様は、屋根はフラットで400mmのブローイングに30mmのRホィールの通気層。
外壁は208で185mmの高性能グラスウール。
基礎高は1350mmで、両面をPSFBV50mmでサンドイッチ。

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サッシはノルドのK値が1.3Wアルミウッド。

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換気は、北米のライフブレィス社の熱回収率65%の顕熱交換機で、バイパス機能を持つ。

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暖房は1階の天井の高い居間の、大きな開口部の下の床下に6kW、和室に2.2kWの蓄熱暖房器。それと2階の3室に電気パネルヒーター。
十勝ではまだヒートポンプが、技術的な制約で実用化の段階にいたっていない。

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そのほかに2.8kWのクーラーが居間に1台。
家の中央部が階段室になっているオープンな間取りが効果的で、暑かった今年の夏もこの1台のクーラーを1日1時間ほど稼働させただけで快適に過ごせたという。
8000円のクーラー代で、寝苦しい夜はなかったとのこと。


さて、T邸の熱損失係数は以下の通り。

部位    部位面積  熱貫流率(K) 熱損失(w/K) 比率(%)
屋根     84.48m2    0.12     10.16     7.2
外壁    161.85m2    0.271     43.87     31.1    
階間     8.44m2    0.09      0.77     0.6   
土間床       −     −     16.96     12.1
開口部    23.33m2    1.3      29.76    21.2    
換気    445.08m3     −     38.94    27.7    
計                       140.46    100.0 
平方メートル当たり熱損失係数  0.929W    

この熱損失係数の中の換気に関しては、鎌田方式だと
気積×0.35×0.175回(1−熱効率0.65)とするところを、0.25回で計算している。

そして、この熱損失係数に基づいて暖房用灯油消費量を計算している。
その結果は、平方メートル当たりが4.3リットル。
しかも暖房の設定温度を18℃に設定しての数値。

これを見て、つくづく考えさせられた。
ドイツを中心にヨーロッパで数年前まで叫ばれていた3リッター住宅。
それは、それほどたいした性能の住宅だと考えてはいなかったが、十勝の0.9W住宅が、ドイツの3リッター住宅の2/3倍の性能値しか持っていない事実を突きつけられると考えこまざるを得ない。
まして、最近叫ばれているパッシブハウス(1.5リッター/m2)にくらべると1/3にすぎない。

ドイツはどのような基準で暖房用エネルギーを算出しているのか。
設定温度が何度なのかも分かっていない。
あるいは、日本の灯油消費量の計算基準が厳しいのかもしれない。
灯油の生活をしていないので発言権はない。しかし、いまどきQ-1などと騒いでいる方がおかしいのではないだろうか。
と同時に、「最低でも3リッター住宅を」という基本的な目標を意識的に度外視して、北海道などを排除して、もっぱら「ヒートポンプ礼讃」にあけくれている東京の動向も、とてもおかしげな現象に見えてくる。

そこで、T邸のどこにメスを入れてゆけば「3リッター住宅」に到達出来るかを考えてみた。
上のT邸の熱損失係数のグラフをもう一度よく見てもらいたい。
この中で20%以上のウェィトを占めているのが3つ。
外壁   31.1%
換気   27.7%
開口部  21.2%
ともかく、この熱損失の3大怪物と対峙する以外にはない。

まず、外壁。
ご案内のとおりT邸では184mm厚という208の外壁を採用した。
ところが、K値は0.271Wという想像以上の低さ。
木材のヒートブリッジで、ある一定以上になると充填断熱だけで頑張るのでは限界があることが分かる。充填プラス外断熱で考えてゆかねばならない。
そこで204のグラスウールを充填した壁に、KMブラケットで100mmのロックウールを採用した場合を試算して見た。K値は0.22Wとなり熱損失は208の壁に比べて19%も改善される。
さらにこれを206の壁に変え、KMブラケットプラス100mmのロックウールにすると、何とK値は0.16Wとなり、41%の削減になる。
つまり、43.87Wの外壁の熱損失が16.99Wも大幅に削減し、26.46Wという素晴らしい数値が獲得出来る。バンザイ。
価格が大幅に高騰しないのはずだから、試みて見るだけの価値がある。
このほかに、206の現場発泡ウレタンに、20mmのキューワンボードの外張りも検討してみる価値がある。

次は換気。
もし、結露の心配がなく、バイパス機能を持っており、熱回収が90%の換気装置が使えるようになったら、38.94Wの換気の熱損失が30%改善されて11.57W減の23.37Wという数値になる。是非ともなんとかしたいもの。

次はサッシ。
K値が0.8Wから0.9Wのものが開発されるのが願望。しかし、やたら高価になっては使えない。
現在の日本で生産可能な1.1Wのサッシを採用したとする。
すると熱損失は4.1W減る。14%減で23.37Wとなる。

この3点が克服出来たとしたら、T邸のQ値は約0.7Wとなる。
そしてドイツの3リッターハウスに限りなく近づく。
パッシブハウスにはまだほど遠いが、T邸の販売坪単価が55万円のことを考えると、坪60万円で3リッター住宅が可能になる。
ほぼ無暖房に近く、2.8Wのエアコンが一台あれば十分に生活が可能なはず?
もしそれが可能であれば、蓄暖も電気ヒーターも要らないので販売坪単価は55万円のままで採算がとれるはず・・・・。

十勝の仲間がQ-1Wではなく、Q-0.7Wの3リッターハウスを達成してくれたら、日本人の意識が変わると思う。
東京の大手プレハブメーカー中心の「ヒートポンプにおんぶにだっこ住宅」より十勝のビルダーの「3リッター住宅から1.5リッター住宅へ」というスローガンの方が、はるかに消費者の関心と共感を呼んでゆくことは間違いない。
頑張れ、我らが十勝のビルダー突撃隊!

今回の取材でご協力頂いた各位に心からのお礼と、ほんの1日半の滞在で大きな口をきいた無礼をお詫びいたします。                      (完)
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2007年10月15日

十勝で考えたこと(4)  先進地域のいろんな試み



今から20年前までは、省エネという面では北海道が圧倒的にリードしていた。
しかし、R-2000住宅の出現によって、その基準の差、つまりQ値の差がぐっと縮まった。
したがって、現在では必ずしもあらゆる面で北海道が先行しているとは言えない。
とくに結露の問題があるので、熱交換型の換気装置では取り組みが遅れている。

とはいえ、さすがは先進国の十勝。
現場を案内してもらっている中で、いくつかの面白いものにぶつかった。
それを系統立てて解説することが出来ないので、羅列的に紹介したい。


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まず、1階天井面のべバーバリア。これは十勝特産。
マイスターハウスはこの十勝特産を学んだにすぎない。

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開口部の熱損失はガラスよりも枠。そこで丸い特殊なガラスブロックを明かりとりに採用。東京のガラスブロックは結露して使えないが、これは結露しないらしい。大変に面白いヒントを頂いた。

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特殊な敷桁。天井断熱材を400mm吹き込みたいが、端の部分ではどうしても吹き厚が限られる。そこで412の梁を2つに切断して頭つなぎの上に140mmの敷桁として回す。これで隅々まで十分な吹き厚が確保される。

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天井の吸音材。吊り天井の面倒さを省くための考案。このほか、各種ボードをフロアの下に張っていたのだが、ピンボケなので省かせていただく。

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凍結深度が深いため、基礎は内地に比べて高基礎。

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その高基礎の束建て。

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いくつかの現場をみたが、この現場のフレーマーの腕は見事だった。
スタッドや根太の面はカンナがけしたように揃っており、差し金を当てたわけではないが水平・垂直はきちんとしているように感じられた。なかなかのもの。

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バリアフリーということが叫ばれ、スプリットレベルの家が姿を消した。
アメリカのように住宅が簡単に売り買えされるようになれば、若い時にはこのような住宅にすむことは子どもに夢を与える。100年住宅はそれだけの耐久性があるということで、自分がその家に100年すむということではない。

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206の壁の根太まわり。

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輸入ものの一本引きの上レール。

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この無垢の味わいのあるドアや家具の面板。非常に面白いアイディアで安い。
壁は全て塗り壁。マルチコンパードというコーキング材の一種にワラや珪藻土を混ぜて塗る。それがなんとも言えない味わい。壁紙よりもやや高い程度で、あとあとのメンテナンスを考えるとこの方がいい。ということで、十勝では塗り壁の家が多かった。

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外はモルタル仕上げかと思ったら、サイデング下地にテラコート仕上げ。
その耐久性の程は聞かなかったが、これでいいのなら下手なモルタルはやめた方がよくなる。

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吹き抜けと円型のある二階の廊下。

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隅に用いられている耐震補強の金属パネル。現場の職人さんはその効果の程をよく知っていなかった。

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ガルバニウムの1/100勾配のフラット屋根。バルコニーともなる。
その雨仕舞いの詳細を聞くのを忘れてしまった。

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2007年10月10日

十勝で考えたこと(3)  2X4の普及率が50%ということ




物事が普及するということは、必ずしも歓迎すべきことばかりではない。
まがい物や偽物が出現してくるということでもある。
いや、まがい物が出現して、初めて本格的な普及に入ったと言えるのかもしれない。

十勝地方でツーバィフォーの普及率が50%になったということは、今までツーバィフォーを取り組んできたビルダーのシェアが伸びたせいとは言えない。
いままで木軸しかやっていなかったビルダーが、新規にツーバィフォーを始めたという要因も大きい。
ツーバィフォーへの新規参入を拒むことは出来ない。
オープン工法だから、どんどん歓迎してやってもらうべき。
だが、変なことをやられて、折角営々と築き上げてきたツーバィフォー工法への信頼を落とすようなことがあっては元も子もなくなる。
この悩みを十勝2X4協会は抱えている。
日本一贅沢な悩みを…。

しかし、十勝2X4協会は、社団法人日本2X4建築協会の支部ではない。
民間の任意団体。
したがって、社団法人と異なり、極論すれば気に入らない業者の入会を拒否することも出来れば、心がけの悪い会員を除名することも出来る。
社団法人だと、会費が欲しいという本部の助平心もあって、ツーバィフォーをやっている業者が加入したいと言えば、拒むことなく参加させる義務がある。
その点、民間の任意団体にはそんな義務はない。自由に立ち回れる。
今までの信用を落とすことなく、より差別化を強め、グループ全体の信頼をより高めて行くことが可能なはず。
と外野席の私は、気軽に考えるのだが…。

つまり、ツーバィフォーでさえあれば何でも良いという甘い消費者はもういない。
公庫の仕様書を忠実に守れば、ツーバィフォーは震度6までの地震には耐えてくれる。
それだけの性能で良いのなら、どうぞ社団法人の方を選んで下さい。
そして、「それ以上の性能を望まれる消費者の方は十勝2X4のメンバーから選んで下さい」と言うべきなのではなかろうか。
それ以上の性能とは、具体的にどんな性能を指すのか。
思いつくまま並べると、次のようになる。

●まず、震度7の直下型地震にも耐えられることを、設計・工事中の段階で協会員相互が抜き打ち検査を行うことによって保証してゆく。
十勝地方には断層がなく、直下型の心配がないのであれば震度6強で良いのかもしれない。

●最低でも次世代省エネ基準の省エネ性能は保証する。そのためには、結露を起こさない協会の最低仕様を遵守するとともに、全戸気密検査を行い相当隙間面積が1㎠以下であることを証明してゆく。(実質的な平均C値は0.5cm2程度だとのこと)

●協会の定めるエコロジーの基準を守る。

●どんな形にしろ10年間の保証制度に加入して保証するとともに、協会で定める無料のアフターメンテナンスは必ず行う。

こんな取り決めを社団法人でやろうとしても絶対に出来ない。
それこそ経営権の侵害となる。
しかし、30年の歴史ある十勝2X4協会は、実質的にこれに近いことや、これ以上のことを行ってきたのだと思う。0.5cm2という平均的な気密性能がそれを物語っている。
この最低限の約束事を厳守している仲間の集合体だと割り切り、気密性能をはじめとした性能を堂々と公表してゆけば、社会的な信用は一段と増す。

さて、この中で私が一番気になったのは204の充填断熱材プラス外断熱の普及。
これは必然的な方向で歓迎すべきだが、外断熱材として一部でネオマフォームが使われていた。
充填断熱材の内側、つまり石膏ボードの下にべバーバリアがきちんと施工されている。
その外側に非透湿系のネオマフォームや、最近売り出し中の熱伝導率0.0186W(mK)という20mm厚のキューワンボードを使って簡単に次世代省エネ基準をクリアーしたいという気持はよくわかる。
木軸工法にはこの種の仕様が非常に多い。
しかし、密閉性の高いツーバィフォーでは、晴れた日ばかりが続くわけではない。また、万が一べバーバリア層から湿度が壁内に侵入した場合、結露問題が生じないかと心配になってくる。これは杞憂かもしれないが、それこそ北総研あたりの技術者にも参加していただき、協会として一定の見解を示す必要があると思う。

個人的な感想だが、外断熱に非透湿系の断熱材を使うなら、充填断熱材も非透湿系のウレタンの現場発泡にすべきだし、204の充填断熱にグラスウールを使うなら木質繊維系の断熱材が北海道でも入手出来るようになったと聞いたので、外断熱にそれを使ったらいい。そういった推奨仕様を協会として作ってゆくべきだと思う。

と同時に、次世代省エネ基準で満足していたのでは社会的に抹殺されてしまう。
協会としては次の2つの性能認定も行なってゆく必要が絶対にある。

●R-2000住宅基準。(Q値でいうならば1.2W/uk程度)
これは、すでに多用されている206の外壁のほかに、札幌で採用されている204の充填断熱材+KMブラケットで100mmのロックウールによる外断熱が非常に有効。この工法が登場したことによってR-2000住宅仕様は難しいものではなくなってきている。

●パッシブハウスと呼ばなくてもよい。u当たりの年間暖房費が1.5リッターで済む世界基準の住宅。(Q値で言うならば0.8W/uk程度となろう)
これは、単に断熱材だけで解決出来る問題ではない。高性能サッシと熱回収率の高い熱交換換気装置の問題が絡むので、簡単にはゆかない。しかし面白い実験住宅が十勝ですでに完成しており、各社もトライしてみるだけの価値がある。

地域団体で、最低限の基準を決めることは難しいけれども不可能なことではない。
難しいのは、R-2000住宅とか1.5リッター住宅という現在の水準を上回る基準を決めること。
R-2000住宅はかなり身近にあるのでなんとかなる。
しかし、1.5リッター住宅となると喧々たる議論でなかなかまとまらないだろう。
基準を決め、大まかな仕様を決めることすら現実的に資材の入手が困難で暗礁に…。
そして、基準を決めても売れるわけではない。
高い性能住宅は、当然単価が高くなる。
高い単価の住宅を売るノウハウはそんなに簡単に会得出来ない。
どれだけ実質的な意味と効果があるかということが議論になろう。
しかし、あえて言いたい。
そうした議論こそが大切だと。
そして、地場ビルダーの中に、ハイムのシェダンを上回る最高の性能を保証出来る技術が存在していることを強くアピールしてゆくことの重要性。
そうした議論やアピールの中からアイディアが生まれ、トップランナーが育ってくるのだということを。
トップランナーを育成出来ない組織は、いつか消費者から見放される。

十勝2X4協会の皆さんが、デザイン、インテリア、省エネ、エコロジー、サスティナブルなど、それぞれの分野で今まで以上にお互いに切磋琢磨され、イノベーションを重ねられて、トップランナーとして走り続けてゆくことだろう。
そうすればツーバィフォーのシェアは50%どころか70%も80%も可能になる。
そして、地場ビルダーでマーケットをほぼ全面的に占拠することも決して夢物語ではではないと強く感じました。

トップランナーを目指して走り続ける十勝2X4協会は、偉い!
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2007年10月05日

十勝で考えたこと(2)  無落雪ではなくシンプル・モダン


とかち帯広空港には気に入らないことが1つある。
それはJALだけしか乗り入れてなく、ANAが飛んでいないこと。

ともかく十勝の建築現場が見たいので、4時半に起き、1番機に乗って9時半にとかち帯広空港についた。
空港には十勝2X4協会の神谷会長と岡本前会長が待っていてくださった。
恐縮。
しかし、十勝の住宅事情を知るには、願ってもない最高のガイド。
挨拶もそこそこに、早速最新の団地の案内を…。

最初の団地では、基礎工事中を除いて建て方が始まっていたのが8棟ほど。
その中で木造軸組は東日本ハウスのみ。
ハイム、土屋ツーバィ、松建を含めて残り全部がツーバイフォー。
片っ端から現場を覗かせてもらった。
中には疑問符が付く問題点もあったが、なかなかのレベル。
そして、午前中にさらに2つの団地を案内してもらった。

さて、私だけでなく、多くの住宅関係の皆さんが最も高い関心を持っているのは「札幌の郊外に展開している箱型のフラット屋根の住宅が、十勝地方ではどれくらいの比率を占めているか?」ということではなかろうか。
移動を含めて初日の3時間半ぐらいの間に垣間見た新開発地では、フラット屋根が予想以上に多かった。
場所にもよる。また建てられた年代にもよるが、新開地の30%から50%がフラット屋根と見受けた。

前回書いたように、どの団地でも敷地は80坪と広い。
土地の坪単価は8万円。
札幌のような、どうしても「無落雪」にしなければならないというせっぱ詰まった理由が見当たらない。
なのに「何故?」

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高緯度の北アメリカやヨーロッパには、フラット屋根の戸建てはない。
とくに雪の多い地方では、小屋裏を使った2階建てから3階建てというのが圧倒的に多い。
それこそが雪国の住宅だという先入観が、刷り込まれている。
その美しさに魅了されてきたので、ちょっとやそっとのことで宗旨替えをするというわけにはゆかない。
雪国の風景には、屋根面の大きな家がとても似合う。
針葉樹に映えるのはとんがり屋根。

積雪1.4メートルという豪雪地域の十勝平野。
防風林のトドマツやエゾマツに、フラット屋根はあまりにも不似合い。
しかし、私がいくら罵声を浴びせても、風景の破壊者は平気でのさばっている。
電車の中で化粧をしている若い娘のように、天上天下唯我独尊。
つまり、蛙の面に小便…。
たしかに私の考えが古いのかもしれない。
しかし、この4枚の写真の住宅を見て、これが十勝平野の景色だとわかる人は、一体何人いるだろうか。
それほど、内地人の常識外れの風景が拡がっている。

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私には、やはりこうした住宅や建築物が美しく見える。
そして、探せばこうした美しい建築物は十勝にはいっぱいある。
あるけれども、主流ではなくなってきている。
何故なのか。
何人かのビルダーの声を聞いて、やっと納得せざるをえなかった。

「いまどきの若い施主はシンプル・モダンが好き。シンプル・モダンをやらないと若い施主からの受注がとれない!」

無落雪ではなかったのだ。
若い施主が求めていたのはシンプル・モダン。
フラット屋根は、多雪地域の住宅の耐久性に大きな影響を及ぼし、国家的な見地から見て必ずしも好ましくない方向だということは知ろうとしない。
自分の現在の予算と趣好が最優先する。

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言われて改めて開発地の中を見渡してみたら、なるほどと肯せるシンプル・モダンが、そこかしこに点在している。
かつてのハイムの箱とは、異質なものになっている。
一番下の写真の場合は、平屋の屋根の一部がバルコニーになっており、洗濯物を干しているのが下からは見えない。そして、バルコニーに溜まった雪は西側の手すり壁に設けられた細長い穴から外へ落とせるようになっている。
開口部にしろ、デザインにしろ、あるいは色にしろ、かなりの工夫が凝らされている。

30才台の若い施主は、流行の自動車を買う感覚で、箱形のシンプル・モダンに走る理由が、ムードとしてわかってきた。
これは、とても深い問題。好き嫌いでだけで論じることが出来ない。
聞いてみると屋根勾配は1/100という。
パウダースノーで、積もらずに飛んでいってくれるのかと思った。
ところが、ベタ雪で積もるという。
とすれば、ガルバニゥムによる屋根板金の防水の技術力が、北海道は特別に優れているということであろう。
無落雪からの技術の蓄積が、このフラット屋根を支えている。

つい3日前、北洲の50周年の記念パーティがあったので仙台を訪れた。
この北洲には牧子芳正という卓越した技術者がいて、早くからドイツ系のモダンなデザイン大系を導入し、東北の住宅のデザインを一変させてきている。
それは、ドイツの正統派のクラシカルなものではなく、現代流にアレンジしたモダンなスタイル。
これが、ツーベアホームをはじめとする仙台のツーバィフォービルダーのデザインの根幹となって浸透しており、他工法との差別化に貢献し、仙台の郊外の美しい団地の街並みを支えている。
構造を熟知した設計士のデザイン力の大きさを、仙台を訪れるごとに痛感させられる。

プレハブメーカーが先行させたシンプル・モダンのデザインを、ツーバィフォー工法でなぞることは簡単。
そうではなく、ツーバィフォーでしか出来ないモダンで美しい長寿型のデザインを、こちらから提案してゆかなければならない。
これは、大変に難しい仕事。しかし、ビルダーと設計士の英知を結集して提案してゆかなければならない。
とくに十勝のビルダーには、トップランナーとしてその重責が課せられているということを自覚していただきたいと、提案力もないくせに勝手に感じていました。
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2007年09月30日

十勝で考えたこと(1)  これから移住するなら北海道に限る?


30年振りに帯広を訪ねた。
30年前、長谷川産業建材店の店長のもとに、これからツーバィフォーに取り組もうという30才から40才台の若い大工の親方が結集していた。
そして、全国にさきがけていち早く「十勝2X4協会」を設立していた。
初代赤坂会長(故人)、田川・久保副会長、所店長らと会食しながら議論したことは覚えているが、どんな話をしたかの記憶が定かでない。
招きで、片流れの屋根が多かったという記憶しか残っていない。

爾来、北海道には20数回行っている。
千歳や札幌からレンタカーを借りて富良野、旭川、石狩、小樽、積丹、江差、函館などを走ってもいる。
しかし、北海道出張といってもほとんど札幌、小樽、旭川の範囲。
この範囲では、北海道の魅力が私の中からは急速に失われてしまっていた。
つまり、北海道へ移住したいという気持ちがサラサラなかった。
ところが、今回のゆったりとした帯広の市内と、十勝の田園地帯を車で案内してもらい、札幌からは失われた田園都市の美しさと自然の大きさ、空の高さに久々に気持ちが洗われる思いがした。


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私は、個人的に何人かの仲間と化学物質や電磁波過敏症の方の地方への移転のお手伝いをしてきた。
そして、判ったことは、過敏症の方は移転する先がないということ。
農村へゆけばゆくほど、農薬が過敏症の人の呼吸を苦しくする。
いろいろたどって、旭川郊外の斉藤牧場の木の城たいせつの小屋に辿り着く。
ところが地元のビルダー仲間に聞くと「換気がなっていなく、カビ臭くて住めたものではない」との返事。
今は、何ヶ所か候補地が出現してきているが、3年前まではどこにも移転出来る候補地がなかった。

と同時に、日本の内地の山村には都会の人間が移住できないということがわかってきた。
手入れのなされない針葉樹で山が荒れ、サルやイノシシ、シカが人里へ出てくる。
そして農作物を喰い荒らす。
都会の人間が田舎に住みたい最低の条件は、自分の手で無農薬野菜をつくり、自給自足したいがため。それが、東京の多摩や秩父の山村では絶対にかなわない。
農薬を散布している平地では可能であっても、水と空気が美しい山村には移住出来る条件がない。

ということで、都会人の移住先の人気ナンバーワンが沖縄。
たしかに、今までの沖縄は気温が暖かく、老後を過ごすには良い場所。
しかし、これから10年、20年先を考えると、本当に沖縄は天国だろうか。
地球の温暖化で、海洋の気温はどんどん上昇している。
台湾以南にしか棲んでいなかった害虫や細菌が北上を続けている。
熱帯魚のような魚しかなく、沖縄の空港には魚の加工品売り場が極端に少ない。それがさらに少なくなり、豚以外に安くておいしいものがなくなってゆく。
魚好きには、沖縄は永住出来るところではない。

本州がサルとイノシシとシカでだめだとなると、残るのは九州、四国、北海道。
九州と四国は、温暖化で超大型台風の来襲をスーパーコンピューターが予測している。
河川が氾濫し、土砂災害を覚悟しなければならない。
選定出来る範囲が限られてくる。

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最後に残るのが北海道。
たしかに山の麓までゆくとクマやシカが出る。
時折、キタキツネにも出くわすことがある。しかし、サルとイノシシがいない。
何よりも問題は寒いこと。
帯広辺りでは最低気温が−22℃にもなる。
東京周辺では低くても−5℃程度。
とてもじゃないが寒すぎて、暖房費がかかりすぎて住めたものではないという気がする。

帯広市内の分譲地の一般的な広さは80坪。そして何ヶ所かで聞いたのだが坪単価は8万円。650万円でサラリーマンでも土地が入手出来る。
そして、R-2000住宅に準じるQ値が1.5W程度の住宅が、40坪で照明・カーテンまで含めて2000万円程度。
これだったら、年間の冷暖房費は東京のプレハブ住宅よりも、はるかに燃費が少なくて済む家。

そして、これからますます地球が温暖化してゆくことを考えていただきたい。
最低気温は−22℃であったにしても、平均気温は上がって行く。
団塊の移住だったら延べ25坪の住宅で十分だろう。
そして、地場のトップビルダーに発注すると1700万円でほぼ無暖房の住宅入手が可能である。
つまり、80坪の宅地を含めても2400万円で無暖房住宅が入手出来る。

いや、帯広市内ではなく、もう少し郊外で家庭菜園もやりたいということであれば、以下のホームページを開いてもらいたい。
帯広空港から車で10分。帯広市内からは30分から40分のところ。
有機農業に取り組んでいる「なかさつないむら」を開くと、いくつかの候補地が掲載されている。
いずれも宅地を見たわけではないので保証出来かねるが、100坪から120坪の宅地の坪単価が3万円。

さらに「更別村ホームページ(sarabetsu village homepage)」には坪2万円で180坪の宅地や、坪8000円で400坪から500坪の宅地が売り出されている。
関心のある人は町役場へ電話なり、メールをされたら良い。
そして、信頼出来る地場ビルダーは、ついでも責任をもって紹介します。

RIMG3195.JPG

北海道への移住では、受け入れ体制が一番進んでいるのが伊達市。
しかし、「北の大地」を実感出来る場所として、私は久々に訪れた十勝の大地に魅せられたという次第。
移住しないまでも、十勝のワインと地ビールと赤身の生肉のマトンのおいしさを味わうために一度は訪れられることをお奨めします。
そして、ついでに十勝のツーバィフォー住宅の見学を、コースに組み込まれることを強く奨励します。
なまじ木の城たいせつの面白くもおかしくもない工場や住宅を見学するのなら、十勝の方が数倍も勉強になるからです。
posted by unohideo at 11:14| Comment(0) | TrackBack(1) | ビルダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月10日

「NOはいうべき! ナンバーワンビルダーの現場監督」

今週の「独善的書評」欄で、林田正光著「NOは言わない! ナンバーワンホテルの感動
サービス革命」を取り上げた。
たった2年間で日本1といわれるようになったリッツ・カールトン大阪のホテルの、そのサービスの実態をわれわれ住宅業界も知っておくべきだと考えたから。

しかし、住宅業界では「NOと言わない」ことが、必ずしもお客に対してのサービスになるとは限らならない。
私の経験では、むしろ毅然とした態度で施主に対して「NOと言って上げるあげることが真のサービスになる」ことの方が多かった。

施主の要望は徹底的に聞かねばならない。
例えば「ここに大きな窓が欲しい」と言った場合、それは採光を求めているのか、風通しを求めているのか。あるいは眺望を求めているのか、単なる思いつきの発言なのか。
そして、大きな窓を設けることによって家具の配置が限られ、生活の動線が制約されてくる。生活が大きな制約を受ける。その制約を納得した上での発言なのかどうか。また、奥さんや家族の同意を得ているのかどうか。奥さんの同意を得ていないご主人の思いつきは出来るだけ避けるべき。

つまり、発言の裏の裏まで聞かねばならない。
そういった点では、住宅のプランナーやコーデネィターは最大の「聞き上手」でなければならない。
徹底的に聞いた上で、施主の望んでいるものを、別の形で最大限に表現した空間を提案しなければならない。でないと感動してもらえない。

施主の言うことをそのまま聞いてあげるのは「満足」
施主の思いを、施主が想像も出来なかった意表な形で提案することが「感動」

プランナーの独善的な提案ではなく、どこまでも施主の要望に基づいた提案。
間違っても安藤忠雄のようなマスターベーションの自己主張をしてはならない。
なぜなら、そこに一生住むのは施主。設計士様ではない。
とくに女性の生活体験に根ざした希望は120%の消化してあげねばならない。

こうした、施主のいくつかの要望の中で、どんなに施主が望んでも私が絶対に受け付けなかった要望がある。
それは、2世帯住宅のダウンライトと天井面のクーラーの設置。

20年前、東京で仕事をするということは、80%が古い住宅を建て替え住宅を建てるということであり、60%が2世帯住宅をつくることであった。2世帯住宅でなくても残りの20%はアパート併用住宅という形が多かった。
単世帯で住む150m2までの住宅だと、それこそ吹き抜け空間もあれば勾配天井もある。
何でもありの世界。親子の音はほとんど問題にしなくてよい。
したがって、単世帯の場合はほっとした。
外部騒音さえ遮断すれば、内部騒音を無視してよい。こんな楽な設計はない。
勝手に何でもやってくださいで済む。

ところが、2世帯となると、小さな設計ミスが全部クレームとなって上がってくる。
担当設計者の段階で解決出来る問題でない。
そして、何十、何百という施主を訪ねて、クレームの実態を聞き、具体的な対応策を提案しなければならなかった。

そうしたクレームから、いくつかの法則が出来てきた。
(1) 子供室の下におじいちゃん、おばあさんの部屋をつくってはならない。
(2) 体重が100キロを超えている婿さんがいる部屋の下には親世帯の寝室は設けない。
(3) 親世帯の朝が早い場合は、親世帯のフロアーの上に置きカーペットを敷く。
(4) 二階に裸足でぺたぺた走り回る幼い孫がいる場合は、二階のフロアーに置きカーペットを敷く。
(5) 二階の床は、公庫の仕様書で求めているものよりもランク上の剛のものにする。
 例えば210の根太で間にあっても、212の根太以上のものにする。
(6) 二階の床に、音響性能を決定的に落とす穴は絶対にあけない。
例えばダウンライトや天付クーラー、セントラル空調の天井吹出口は絶対に設けない。
(7) 二階の排水管の位置を徹底的にたしかめ、一階の寝室から大きく離す。
(8) アパートの界床には必ずシンダーコンクリートを打ち、原則としてアパートの根太間隔は210で2730ミリ以上とばさない。
(9) 本格的な二世帯住宅は、玄関を別にして直接お互いの音が階段室から抜けないようにする。
(10) 別玄関に出来ない二世帯住宅の場合は、階段室の上と下に、階段室へ入るドアを設置する。

このほかにもいくつかあるが、大きな家で二世帯が住む可能性がある場合は、最低この10の法則を守ってもらった方が絶対に施主のためになる。
したがって、いかに施主の強い要望であっても、私は絶対に妥協しなかった。
つまり、堂々と「NO」と言ってきた。
このため、一時的には施主から恨まれたが、この「NO」のおかげで室内の上下の音に関するクレームを画期的に少なくすることが出来た。

それと、もう一つ大切な「NO」がある。
それは、工事がはじまってからの「NO」。
構造的に明るくない施主は、工事現場をみて「ああしてほしい。こうならないか」と必ず言う。大手の企画住宅だと簡単に断れるが、地場ビルダーの注文住宅の場合は断りにくい。つい、監督が「なんとかしましょう」と言ってしまう。
私の経験では、なんとかなるのは2割弱。
素人からみれば何でもないようだが、鉛直荷重を考えるととんでもない工事になる場合が多い。この場合は「何とか考える」のではなく、即座に「NO」というのが親切。

それと、施主に約束して、守ってもらわねばならないことがある。
それは、現場で変更したいことが出てきた場合、職人に可否を聞き、相談することは大いにあってよい。ただし、直接職人に「仕事を頼んではいけない」ということ。
施主に言われたからと職人が動き、そのことで将来問題が発生した場合、ビルダーは責任を負うことが出来ない。保証が出来ない。
職人には「施主の変更希望は快く聞いてあげなさい。ただし、変更を承認するのはあくまでも現場監督。私共には決定権はありません。直ちに監督に伝え、指示を受けます」と言わせねばならない。
すべての職人が「YES」と言ったのでは現場の安全と性能と精度の確保が出来なくなり、工程と収益管理が出来なくなる。

完成したホテルと異なり、建築中の住宅の場合は耐震、防火、結露、気密、断熱、遮音、健康などに関わるさまざまな問題があり「NOといわない!」と言っていたら欠陥商品を生み出すことになりかねない。
「NO」と言う勇気を持つことと、ルールを守っていただくことこそが、ビルダーに出来る感動サービスの基本だと思う。

posted by unohideo at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ビルダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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