2008年09月25日

平成版「農地解放」なくして自給率の向上なし!



PHP研究所の総合月刊誌に「Voice」がある。
「文芸春秋」や「現代」よりも内容の濃い経済や技術に関する記事が多く、専門誌以外では私の最大の愛読誌と言っていい。
このVoiceに、経済ジャーナリストの財部誠一氏が、1年半にわたって「農業が輸出産業になる日」という連載を掲載していた。
先月号で完結し、年内に単行本として上梓される予定。
実に素晴らしい内容だった。
本来は、上梓されてから紹介すべきだが、最後のところがあまりにも感動的だったので、少し早めに紹介することにした。

日本の食料の自給率が40%を切り、日本の農業が瀕死の状態に陥っていることは誰もが知っている。その原因は、ハッキリ言って農政のまずさ。
では、日本の農政のどこが、どのようにまずかったのか?
それは、アメリカが世界各国に押しつけたグローバリゼーションにあるとか、各政党の票欲しさのばらまき政策にあるとか、いろいろ言われている。
悪いのは政治家や行政だという意見がほとんどで、農家の責任を問う意見はない。
その方が無難。わざわざ憎まれ口を叩いて農家から反感を買う必要はない。
ということで、保守にしろ革新にしろ、誰1人として「農家の責任」を口にする者がいない。むしろ革新と自称している人ほど農家にヨイショしてスリ寄っている…。
したがって、農民は食料自給率が下がった責任の一端が自分達にあるとは夢にも思っていない。いや、むしろ被害者であると考えている。
「農家=弱者」という先入観にとらわれて、誰も日本の農林業の本当の恥部に触ろうとも、暴こうともしてこなかった。

ところが、財部氏は「農業問題の本質は、農地の流動化を拒んでいる農民エゴこそが元凶だ」と本間正義東大教授の言葉を借りてズバリと指摘している。
これには、思わず拍手をしてしまった。
そして、この農業問題の解決策が明確にならない限り、地場ビルダーのこれからの方向付けも難しい。自給率が50%から70%と次第に上がり、農村に活気がもどり、新しい住宅需要が増えないと地場ビルダーも萎えてしまう。
地場ビルダーの存亡は、農林業の将来展望と深く関わっている。

まず、財部氏は「世界各国を取材で歩いてきたが、日本のようなみずみずしい国土は珍しい。温暖な気候と緑を育む四季は、まさに神の手である。それにほんの少し人の創意と工夫で後押しすれば、豊かな実りが約束されている。世界に例を見ない素晴らしい農業環境だと痛感した」と語る。
それなのに、この豊かな国土の470万ヘクタールでしか耕作されておらず、140万ヘクタールが放棄され遊んでいる。そして、食物を輸入している。
日本の農業人口は280万人。
このうち売上げが1000万円を超える農家は14万戸。3000万円以上が3万戸。
そして60%の農家の農業収入は100万円以下。
80万人は自給自足の家庭菜園の延長線上の農家。そして100万人は兼業農家。
自給自足の農家がダメだとか、兼業農家がいけないとは誰も言っていない。
年長の農民が自給自足のために限られた耕地を耕すことは、健康のためにも素晴らしいこと。
都会をスピンオフし田舎へUターンしての趣味の有機野菜づくりをすることも、スローフードな蕎麦屋やBBホテルなどをやるのは大変結構なこと。大いに推奨すべき。

問題は若い人や、やる気のある人が、遊んでいる遊休地を借りて、耕地面積を拡大したいと思っても、農地を借りるのが大変に難しいという点にある。遊ばせて置いて、補助金をもらっていた方がよいという不条理が日本の全農地のすみずみにまで行き渡っている。このため生産性が上がらず、自給率が極端に低くなる。
本来は、自分が食べるために必要な土地だけを耕し、余った土地は能力と意欲のある人に貸すべき。そうすることによって、日本の国土は荒廃せず、自給率は上がってゆく。ところが、農地を貸すというシステムが壊れている。

戦後の農地解放で、大量の農地を地主から二束三文で巻き上げ、これをタダ同然で小作人に払い下げた。そして、ふたたび地主に取り戻されないように農地法を制定し「農地は耕作者自らが所有する」という耕作者主義を徹底させた。このことは、当時としては画期的な政策であった。
ところが、現実には「耕作しない人が自ら農地を所有している」という、農地法に違反する現象があちこちで発生してきている。
そもそも地主の私有財産を國が召し上げ、廉価で小作人に譲り渡した。その後も、国民の血税が、いろんな名目で農地に注ぎ込まれてきた。
こうした歴史的な経緯を考えても耕作権の放棄などは許されないし、自給自足の家庭菜園でお茶を濁しながらの農地の転用を期待し、耕作していない土地を貸さないと言う農民エゴは、絶対に許されるものではない。

バブルがはじけた。もう、公共事業や工場が地方にやってくるわけがない。
ところが、道路族の蚕動に見られるように、いつか新幹線が通るかもしれない。高速道路が計画されるかもしれない。そうした「転用御殿」をさんざ眺めてきたので農家の土地転用に対する執念はすごい。
一部の評論家は「格差拡大」が進んでいると叫んでいる。
しかし、戦後の大都市周辺の農家が得た莫大な利益。その利益はサラリーマンから巻き上げたものであった。この不労所得こそが戦後最大の不公平であり、格差だった。
その余燼が、いまだに農民の意識にこびりついている。
「急いで売る必要がない。農地にかかる税金はタダ同然。孫子の代まで残しても費用がかからない。そのうち宝くじに当たるように農地転用のチュンスがくるかもしれない」
「もし、他人に貸しておれば、いざというチャンスに転売出来ず、千載一遇のチャンスを逃がすことになりかねない。だから、農地は貸さない」というエゴ。

タダ同然にもらった土地なのに、私有権を振りかざして、日本の国土の有効利用に供するというポリシーは1つも見られない。
この壁にぶつかって、筆者は取材を進めれば進めるほど気が滅入り、絶望感に陥ってきている。
「どこかに、突破口はないのだろうか」

筆者が辿り着いたのは「農政改革高木委員会」の最終報告。
何重にも重なったしがらみがあるので、農地法をいじることは不可能。
しかし「農地は“経営資源”として利用されるべきである」というポリシーに基づいて「新・農地法」を創設すれば、可能性があると筆者は書いている。
例えば、現在の農地法に基づいて地元の農家の選挙で選ばれた農業委員会で農地の賃貸借を審議しても良いし、農地は経営資源であるという理念に基づいて農地を自由に貸し借りも出来るようにもする。
いずれを選ぶかは農家の自由だという形にする。

しかし、このシステムが機能するには、農地情報のデータベース化が不可欠。
「誰がどこにどれだけの農地を所有しているのか。その農地は耕作されているのかいないのか。耕作放棄地になってしまったのか。一時的な不作付け地なのか…」といった農地情報を一元管理しなければならない。そして、そこへアクセス出来る仕組みをつくる。
このシステムは、同時に農地利用の「監視システム」としても機能する。
いずれにしても、農水省は農地利用の監視を徹底する必要がある。
農地利用がしっかり監視されれば、経営形態は個人の家族経営であろうと有限会社の家族経営であろうと、あるいは株式会社であっても構わない。

そして、データベースに基づく農地の賃貸仲介に第三者機関を設ける。
新規参入者が、業績不振で夜逃げすることがあっても大丈夫のように供託金を積ませることが必要だし、一方土づくりには最低2、3年かかるから安心して農地が利用出来るような定期借地権のような制度も必要になろう。
と同時に、耕作しない農家に農地の優遇税制を施し続けるのは農地法の理念に照らしても間違っており、正してしてゆかなければならない。
つまり今、平成版「農地解放」が必要だと力説している。

そして、農地の流動化を妨げているもう一つの元凶が農協。
たしかに、先進的な素晴らしい事業を推進している農協もある。
しかし、大半の農協の実態は農業から離れ、収益の大半は信用事業と保険事業、物販事業になってきている。農業人口が280万に対して農協の正会員は500万を超えている。
効率的な農業を推進しようとすると農協は必ず反対する。それは、組合員が減って、政治力が落ちてくるから。
つまり、国民の食生活よりも、農協の組織の方が大事だという官庁組織と酷似しており、期待することは出来ないという。

いずれにしても、現状のままでは高齢化と少子化で日本の農業はますます衰退し、食料の自足率は落ちてゆく。どうしても農地の流動化を進め、農地を経営資源として活性化してゆかなければならない。
農地の流動化を促す「平成版農地解放」を草の根運動を、全国に広めてゆかねばならない。
1つは都市生活者が安心出来る移転の受け入れ先として。
もう1つは新規参入企業を受け入れ、雇用機会を増やすために。
その農地を活用する有力な企業の1つとして地場のゼネコンの存在がクローズアップされてきている。ゼネコンとともに、地場ビルダーも、農家にとってはかけがえのない兼業の勤務先。
つまり、内容も素性も分からない企業に土地を貸す気にならない農家も、顔見知りの地場のゼネコンやビルダーだと土地を貸す気になる確立が高い。

地場ビルダーが直接エントリーしなくても、地場で培った信用力で新規参入企業のアシスタントになり、サポーターとして働くことは十分に可能。
そういった視点も、これからは必要になってこよう。
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2008年06月25日

男性の左脳に性能をアピール、女性の右脳に物語を語る!!


2年前に出版された ダニエル・ピンク著、大前研一訳「ハイ・コンセプト」(三笠書房刊)は、ショッキングな本であった。

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人類は、農業の時代 → 工業の時代(工場労働者) → 情報の時代(ナレッジ・ワーカー)と進化してきた。しかし、その情報の時代が → コンセプトの時代(創造し、共鳴する人の時代)へ、今まさに変わろうとしている、と説いた。
つまり第3の波から第4の波へ。

工業の時代は、ブルーカラーの多くの単純労働が、ロボットに奪われた。
同じように、コンセプトの時代では、左脳型のホワイトカラーのルーチン・ワークは、インドや中国など人件費のお安い国に移行してゆく。
創造性の乏しい単純なITソフトなどは、低所得のアジア各国へ移る。
したがって、左脳だけを頼りとしてきた今までのホワイトカラーは、賃金が上がらないだけではなく、職場も失うことになる。

左脳の働きが良いかどうかは、知能指数でわかる。
いわゆるIQ度。
このIQが、今までは大きな顔をしていた。
物事をどれだけ覚えているかで評価された時代。詰め込み教育の落とし子。
そこでは創造性とか共感性とかが問われることがなかった。
しかし、コンセプトの時代というのはIQではなくて、「心の知能指数」であるEQが求められる時代。
ハイ・コンセプト、ハイ・タッチは右脳の働きがモノを言う。
つまり左脳の時代から右脳の時代へ変わると喝破した。

以来、「脳」の本がよく売れるようになり、「あなたは左脳型か右脳型か」の議論が賑やかになってきている。

左脳は、言語能力、計算処理、時間や連鎖的な思考など、詳細な分析を担当。
右脳は、立体的な空間認識、芸術的な理解、直感的な判断など全体像の把握を担当。
つまり、考える力が左脳で、感性は右脳。


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木田理恵著「彼女があのテレビを買ったわけ」(エクスナレッジ刊)は女性の買い物をする時の動機を分析していて面白い。

著者は、どうしてもあるテレビ番組が見たくてテレビを買いに出かけた。
ところが、店員は「プラズマにしますか、液晶にしますか」と長い説明を始めた。しかし、いくら聞いても意味がよくわからない。
男友達に頼んで再度訪れたが、性能の話ばかり。
著者は、日本のメーカーの製品だったらどれを選んでもそれほど差がないと考えている。「そんなに拘るほどの性能差がテレビにあるわけがない」と。
そして、あるテレビのリモコンのデザインが気に入った。このリモコンだったら食卓の上に置いても、枕元においてもかわいい。
男同士の議論を聞かずに「このリモコンのテレビにします」と決めた。

商品に対するこだわりは男と女は違う。
男はスペックにこだわる。
女はイメージにこだわる。
デザインや色、私にピッタリだとか、カッコよくて幸せになれそう、とか。

また、男性は勝負にこだわる。結果が良ければ勝ったと思う。
一方、女性は買い物のプロセスにこだわる。共感出来る雰囲気であったとか、セールスマンの態度が良かったとか。

住宅の場合は、男性はどこまでも性能にこだわる。耐震性能とか耐久性、防火性、遮音性。そして何よりも省エネ性能。
女性は燃費とか健康性という性能にこだわる。しかし、よりこだわるのはこの家なら家族や友達とワクワクする想い出がどれだけ出来るかにある。そのためには間取りとか動線にこだわらざるをえない。

そして、女性の買い物には8つのキーワードがあるという。
(1) 幸せを感じられること。
(2) 育むという本能を満たすこと。
(3) 自分らしさを選択できること。
(4) 感動した体験を友達に伝えて一緒に喜びたい。
(5) 誠実さと身近な担当者の正義感に敏感。
(6) 私だけという特別感へのこだわり。
(7) 頑張った自分へのご褒美。
(8) 女性は自分捜しとかカルチャースクールなどで学ことが好き。

これとよく似たことを、2年前にダニエル・ピンクは書いている。
これから求められるのは感性(センス)だとして、以下の6項目をあげている。

(1) 機能だけではダメでデザイン性が非常に重要。
(2) 議論よりも「物語」を語ること。
(3) 個別よりも「全体の調和」
(4) 論理性だけでなく「共感」を得ること。
(5) 真面目なだけでなく「遊び心」が必要。
(6) モノよりも「生き甲斐」に価値が。

さて、これからは左脳よりも右脳力がものを言う時代。
そして、女性は左脳と右脳をつなぐ「脳梁」が男性より1.2倍から1.5倍太いと言われている。
このため、同時に左脳と右脳が使えるので、女性は男性よりもはるかに五感に優れていると言われている。
ご主人のちょっとした浮気も、この太い脳梁が見つけ出してしまう。
その女性が、家庭での実質的な購買権を握っている。
注文住宅でも、最終決定権は女性にある。

私共ビルダーは、この右脳時代の到来を、本当に理解しているだろうか。

多くのビルダーとともに、私もツーバィフォーやR-2000住宅で、いつも先頭を切って性能を追い求めてきた。パッシブハウスを唱えているのもその延長線上。

しかし、ツーバィフォー住宅が最初に爆発的に売れ出したのは、耐震性が良かったからではなかった。鉄骨プレハブが切り妻とか寄せ棟の規格住宅しか売っていなかった時に、三井ホームが欧風の素晴らしいデザインをツーバィフォーのフリープランで実現した。
つまり、まずフリープランのデザイン力で売れた。
そして阪神淡路地震や中越地震の耐震性で、評価を固めた。

R-2000住宅も、性能だけで売れたのではない。
R-2000住宅に特化したビルダーは、いずれもデザイン力がすぐれていた。
タイルの重厚さやドイツ調。アーリー・アメリカンやジョージア風。スパニッシュスタイルにプロバンス調。そういったデザイン力がマッチしたから価格が高かったにもかかわらず特化出来た。

パッシブハウスでは、その性能があまりにも高すぎて実現化が困難なために、最近の私は性能のことしか言っていない。
ともかく、Q値0.6Wという高い壁を越えないことには、話が前へ進んでくれない。
そして、現時点ではいかに性能を強調しても、それを理解してもらえるのはご主人だけ。
財布のヒモを握っている奥さんには、性能一本槍では絶対に共感してもらえない。
より素晴らしいデザインを開発し、細部にまでにこだわった使い勝手を立体的に提案し、健康で快適な生活物語の主人公になりきってもらわなければならない。女性の太い脳梁という五感に、強い印象を刻み込まなければ、絶対に売り物にならない。

女性の感性をより理解できるのは、男性よりも女性社員。
これからは、多くの若い女性社員が活き活きと輝いている会社でないと、注文住宅では施主から相手にしてもらえなくなる。
そのことを、腹の底からわかっているトップは少ない。

そして感動した女性はその優れた共感力で、紹介客を黙って運んできてくれるのです。
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2008年06月15日

Q値1.1W以下でのコストパフォーマンス  施主に登壇してもらうコツ(下)


数年前ハーティホームが、親会社ナイスのトップ人事の選定ミスから業績が悪化し、会社閉鎖へ追い込まれたのは自業自得だった。
しかし、アフターメンテナンス業務をナイスコミュニティに移管し、設計と工事の2人のベテラン社員も移管したのだから、何も受注活動まで中止する必要はなかった。
2年後にその愚挙に気が付き受注再開を呼びかけたが、覆水盆に返らずで、あまり成果があがっていないようだ。

それにもまして愚かしかった行為は、ホームページを突然閉鎖したこと。
当時の同社のホームページは、ビルダーの中では最高のアクセス数を誇り、情報の発信力も飛び抜けていた。だが情けないことに、ナイスの人間には「猫に小判」で、その価値がわかっていなかった。
なかでも、200世帯に近い入居者の体験談は輝いていた。
年間を通じて電気代を記録していた家庭も、数件あった。
この入居者の記録には、良い面だけでなく、問題点もきちんと記されていた。
そして、R-2000住宅のコストパフォーマンス、つまり費用対効果は、「単に電気代だけではなく健康性や快適性までを含めて考えると、完全に満足出来るものがある」と異口同音に答えていた。
つまり、東京において、Q値が1.4Wのコストパフォーマンスは、一般のサラリーマンや自営業の施主から完全に支持され、認知されていた。
それは、決して一部の金持ちだけが認めるものではなく、広く中堅サラリーマンに支持されていた。少し無理をすれば、手のとどくコストパフォーマンス。
まず、この事実を再確認したい。

いきなりQ値が1.4Wという高性能住宅に移り住んで、完全に住みこなすまでにどの家庭でも1年から2年かかっている。悪戦苦闘の歴史。
それらの貴重な経験談が、ナイスから派遣されたトップの無謀と言うべき判断によって、ある朝一挙に抹殺されてしまった。
この貴重な記録は、単にハーティホームだけの私有物ではない。ましてや、親会社のナイスのものでは絶対にない。
それは、入居者のものだった。誇りであり自慢であった。その誇りと自慢が一瞬に打ち壊された。この悲痛な叫びがナイスには届いていない。
それは、首都圏の消費者で共有されるべき貴重な記録でもあった。
したがって、今からでも遅くないから体験談だけでも復活して頂きたい。
そうすれば、メンテナンスだけでなく新築の受注も見込めるだろう。
そして、Q値が1.4W以下の住宅を支持する人々の意味のない発言や、鉄骨プレハブメーカーなどの悪質な言動を抑制することも出来る。

というわけで、私は「Q値が1.4Wまでの住宅のコストパフォーマンスについては、もう答が出ている」という立場に立っている。
それ以下の性能の住宅は、「どのような方式でリフォームを行ったら、もっとも簡単に、安く1.4Wに到達出来るか」ということが命題なのだと思う。このリフォームのコストパフォーマンスについては、これから大いに議論しなければならない。

そして、コストパフォーマンスが完全に立証されていないのが、首都圏ではQ値が1.4W以上の住宅。とくに1.1W以上の経験値が余りにも不足している。

実験的な事例としては、いち早くQ-1.0Wを提唱した新住協の、北海道や東北などのメンバーによって、すでにかなりの数が建てられているはず。
その実態を知りたいのだが、なぜか報告されていない。
新住協のホームページには、QPEXという温熱ソフトによる設定温度18℃によるシミュレーション数値と実験住宅として黒田邸、三浦邸、金子邸、阪邸の4棟の内外の写真が掲載されているだけ。実際のコストパフォーマンスや入居者のナマの声が掲載されていない。
大会の時には、当然内部発表がなされていると思うのだが、外部に対する発信がなさすぎる。このため、この運動をどう評価したら良いかは、消費者にとっては謎のまま。

Q値が1.0Wの住宅を実験的に建てることは至って簡単。まともなビルダーだったら朝飯前の些事。
必要なことは、コストパフォーマンスを実証し、入居者が納得し、ビルダーは建てる全ての住宅をQ-1.0Wの住宅に切り替え、Q-1.0W住宅の専業ビルダーになること。
R-2000住宅の時もそうだった。実験的に1棟とか2棟建てる業者は、大手を含めてワンサといた。しかし、専業化したのは北洲ハウジングやマイスターハウスをはじめとした地域の中堅ビルダー群であった。ハーティホームもかつてはその一翼を担っていた。
この専業ビルダーが、コストパフォーマンスを実証してきた。
したがって、Q-1.0W運動が本物であるかどうかは、専業の工務店がどれだけ輩出できるかにかかっている。
評価は、専業工務店の数と建築実績棟数で示される。

そして、Q-1.0Wを上回る「無暖房住宅」が、長野や東北、北海道でトライされている。
何回も断っておくが、ヨーロッパでは無暖房住宅というのはQ値が0.3Wから0.5Wの「暖冷房設備が一切ない住宅」のこと。
Q値が0.6Wから0.7Wの住宅は、どこまでもパッシブハウスであり、「限りなく暖冷房費がゼロに近い住宅」に過ぎない。
したがって、研究会の名に無暖房という言葉を使うのは良いが、Q値が0.7Wでしかないのに消費者に「無暖房住宅です」と売るのは羊頭狗肉。明らかにマルチ商法。
消費者から訴訟されるおそれのある、信用出来ないイカサマ企業と言えよう。
このことを、まず心したい。

Q値が0.7W台でパッシブハウスに近いものとしては、信州大キャンパスに建てられた実験棟の0.72Wをはじめホクシンハウスの0.68Wのモデルがある。このほか御代田の佐々木工務店の0.77Wのモデルや井坪建設の駒ヶ根分譲地内で施主に引き渡した0.79Wなどがある。これらについては、信大の山下研究室でデータがとられている。しかし、コストパフォーマンスにまでは言及していない。
この中で、一番データを発表しているのがホクシンハウス。モデルハウス以外の入居者のデータも示されていて信用出来る。
そして、あまり信用出来ないのがサンワハウス。0.7Wの商品を発表しているが、発表しているデータはシミュレーション数値のみ。実測データを示していない会社は、如何に坂本先生の応援があろうとも私は信用しないことにしている。

関東では鹿沼市のハートランドホームが、宇都宮で引き渡したQ値0.85Wの住宅で5.7kWの太陽光を搭載した住宅の年間電気代を発表してくれている。面白いデータだが、これもコストパフォーマンスから考えると疑問符が付く。別の機会にドイツの事例を詳細に述べるが、日本では政府が及び腰のため、必ずしも太陽光が、コストパフォーマンス面から考えて消費者にとって有利な設備投資だとは言えない。
また同じ宇都宮で、昨年エムエスホームがQ値0.73WのK邸を引き渡している。1年後のデータと施主の感想と、コストパフォーマンスの実態を是非知りたい。
このほかでは、茨城で石田ホームが、東京ではマイスターハウスが昨年0.9Wの住宅を引渡し、現在データを収集中。この2棟については、コストパフォーマンスについて、かなり言及されるものと期待している。

東北では、昨年一年間に亘ってデータをとった北洲のサスティナブルのモデル。これはQ値に触れていなかったが、おそらく0.6Wに近かったと思う。これに続いて、今月末にツーベアホームがQ値0.73Wのモデルハウスをオープンさせる。
そして、極めつきは今年の4月にオープンした能代市の日沼工務店のQ値0.52W。
パッシブハウスというよりは無暖房住宅に近いモデルハウス。モデルハウスだから消費者の声は聞けないが、この実測値の発表が今から待たれる。

北海道では一条工務店が札幌の分譲地の中に0.76Wの体験棟を建てており、北海道ミサワが旭川の分譲地の中に0.8Wのモデル棟を建てている。
そして、Qを明示していないが土屋ツーバイが今月末に札幌でゼロエネルギー住宅のモデルを発表する。
地場ビルダーではいち早く真空断熱を取り上げた大洋建設をはじめ高性能に特化しつつあるテーエム企画。あるいは千歳の協栄ハウス、札幌のSTV興産等々が無暖房研究会で地道な動きを見せている。今井設計も小さなパッシブハウスを建てると宣言した。
このほか、帯広の岡本建設のT邸など、私の知らない範囲でいろんな地道な試みがなされている。
だが、いずれも未だに実験棟という域から脱することが出来ず、消費者の声が前面に出るところまでに至っていない。つまり、茅野の介護施設のようにきちっとしたメリットが立証出来ないでいる。

ドイツでは60kWh/u仕様住宅の8%高でパッシブハウスが、40kWh/u仕様住宅の5%高で15kWh/uのパッシブハウスが得られるという。消費者がこのコストパフォーマンスを理解して、昨年はパッシブハウスの着工実績が8000戸に及んだ。
こうした実績に比べると、残念ながら日本は遅れをとっている。設備や部品関係の環境が整備されていないのが口惜しい。

日本に、パッシブハウス専業のビルダーが生まれてくるのは、果たして何時になるのだろうか?
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2008年06月10日

Q値0.6W〜0.7Wの性能をR2000仕様の5%高で!!  施主に登壇してもらうコツ(中)


Q値が1.2Wから1.4W程度の性能住宅。
つまりR-2000性能までだと、全国ビルダーの素晴らしい実績がある。
次世代省エネ基準の住宅(Q値1.7Wから2.7W)に比べて坪単価が4万円前後高くなるが、これは10年余の燃費で完全に償却出来る。
そして多くの入居者は、「その間の快適さと、医療費やホテルなどへ逃避していた費用までも含めて考えると、実質的に5年間で償却出来る」と体験談を語ってくれている。
「子孫と自分のためにも先行投資が必要だ」と。
こうした消費者の力強い支援を受けて、「R-2000住宅に匹敵する性能以外は、一切やりません」と宣言し、高性能住宅に特化して企業基盤を固めたビルダーが、全国でかなり増えている。

お互いの努力で、ここまできた。
地域によって必要燃費(暖冷房費と給湯費)は異なるが、関東地域だと全館空調換気をして13万円前後で上がるようになってきた。

しかし、ここで満足しているわけにはゆかない。
地球の温暖化を回避するためには、2020年までには20%の削減、2050年までには60〜80%もCO2を削減しなければならない。半端な数字ではない。
つまり、これから十数年後には、Q値が0.6W〜0.7Wのパッシブハウスでないと、高くなる石油代や電気代に対応してゆけなくなる。
発展途上国の需要増からの資源高騰は、われわれの想像を絶する。
「十数年後には灯油代は4倍に、電気代は2倍以上になる」との覚悟がまず必要。
そうなると、R-2000性能の住宅でも快適な生活を送ることが出来ず、ひたすら我慢に我慢を重ねる生活にならざるをえなくなる。
今の快適さは失いたくない。
とすれば、これから建てる住宅は多少無理をしても、暖房費は限りなくゼロに近づけ、除湿システムを導入出来るようにしておかなければならない。
これは必須条件。

それだけではない。
今年の7月からドイツで採用される「エネルギー・パス」制度。
「この家の年間燃費がいくらです」とはっきり明示される。
この制度は、最初に燃費の悪いアパートの賃貸料に大打撃を与える。そこでドイツでは急遽、断熱改修ブームが起きている。それが住宅にも波及して行く。
そしてこの制度は、単にドイツだけの制度ではない。EU全体の制度として来年からフランス、オーストリアなどでも採用されてゆく。
そうなれば日本も、数年以内には採用を余儀なくされるであろう。
ということは、いま新築しようとしているアパートの仕様をケチったら入居者が入らなくなり、改修が不可欠に。自宅の仕様をケチった場合は燃費性能が低いと評価され、売る時は安く買い叩かれる。
世界は、その方向へ進んでいる。

とすれば、われわれビルダーは何を目標にして努力を続けて行けばいいのか?
これは神様でも明言は出来まい。
しかし、私は直感で「現在のR-2000住宅よりも5%のコスト高で、これからの5年間にQ値が0.6Wから0.7Wの住宅に特化し、供給体制を確立するしかない」と断言したい。

なぜこんなことを言うのか。
それは20年前のR-2000住宅の苦い体験があるから。
当時Q値4.0Wの住宅をいきなり1.4Wへと2倍以上に性能をアップする必要があった。
それには平均的な120m2の住宅で、坪単価が10万円、計360万円も高くなった。
コスト上昇のおおまかな内訳は、断熱・気密に120万円、サッシに150万円、セントラル空調換気に90万円、であった。
そして、削減出来る燃費は年間26万円が13万円になるだけ。たった年間13万円の削減では、360万円の償却には28年もかかる。このため消費者の支持が得られなかった。
このためカナダ政府から何度も催促されたが、年間数棟の実績しか示せなかった。

そこで窮余の一策で、気密性はR-2000住宅に準じ、断熱性は次世代基準に毛が生えた程度というSEAという住宅を坪5万円高で売り出した。次世代基準が発表される7年前に。
そしたらこれが、結露が無くて暖かいというので年間200棟も売れた。このブームと呼べる普及のおかげで、断熱材と断熱サッシの生産が軌道に乗り、メーカーは一気にコストを削減してくれた。
そして、いまから10年前に、やっとR-2000住宅が5%高で供給出来るようになり、クチコミ客を組織出来、硬い基盤が出来た。
この時の最強の応援団長は、入居者の体験談であった。

では、なぜビルダーの目標とすべき住宅のQ値が、喧伝されている1.0Wではなくて0.6Wから0.7Wであるべきなのか。
それは1.0Wでは、暖房費を限りなくゼロに近づけることが出来ないから。
やはり0.6Wから0.7Wというパッシブハウスを目指さないと、これから高騰する暖冷房費の負担に耐えられない。1.0Wでは甘い。
目標はどこまでも0.6Wから0.7Wのパッシブハウス。
そして、段階的に1.0Wを指向することには大いに意義がある。
新しい建材や部品の開発のために、かつて一時的にSEAという商品を開発したように。
しかし、数年後の最終目標Q値はどこまでも0.6Wから0.7W。

しからば、現時点でパッシブハウスの性能を達成しようとすると、R-2000住宅に比べてどれだけ余分にコストがかかるのか。
Q値1.4Wが0.7W以下に半減するコストは?
これは推定値だが、坪で約10万円。120m2の住宅だと約360万円高。
内訳は、大まかに言ってサッシがK値1.0Wを切る性能を得るために270万円、断熱がK値0.5Wを達成するために60万円、換気の熱回収効率を90%に高めるために30万円というところ。サッシの比率が異常なまでに高い。

坪10万円も高ければ、パッシブハウスは絶対に普及しない。
これを坪5万円高に抑えねばならない。120m2の平均的な住宅で180万円高以下に。

これだとR-2000住宅で年間燃費(暖冷房費と給湯費)が13万円かかっているのを全館24時間空調換気で5万円に減らせる。年間燃費が現時点の電気代で8万円安くなる。この電気代が将来間違いなく値上がりするから10万円から12万円の価値になる。
そして一段と快適性を増した家の医療費は少なくなるし、家族旅行は今までの年2回から1回で良くなる。そういった費用まで換算すると180万円高は10年間で元がとれる。
そのことを、入居者は必ず実感をもって立証してくれる。
つまり、わが家では神経(心)と身体が硬くなることがなく、安眠が出来てストレスが解消出来るというプラスアルファの快適性の価値を高く評価して、先行投資をしてくれる。
そういった点で、消費者を信頼してよい。

問題は、如何にして現時点で坪10万円高のものを5万円高に収斂するのか。
答は簡単。
現在K値1.0Wを切るサッシの入手に270万円もの費用がかかっている。このサッシの入手価格を100万円高に収めればいい。
サッシメーカーとしてはK値1.0Wを切るためには現在の設備では不可能。枠の見込み寸法が小さすぎて手の打ちようがない。
設備も金型も新規に投資しければならない。
そして、近い将来に1.0Wのサッシのマーケットが、日本国内だけでなく韓国や中国を含めて大きく見込めると判断すれば、意識の高いメーカーは先行投資を惜しまないだろうし、政策的な価格も打ち出せる。
かつて、フォードがT型で政策的な価格を打ち出したように。

われわれビルダーは、その意識の高いサッシメーカーを探し出し、討ち死にする覚悟を持てば、必ず道は拓けてくる。と思うのだが・・・。
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2008年06月05日

ビルダーのホームページに施主が登壇してもらうコツ!(上)


消費者というのは、あまり広告を信用しない。
身近なスーパーの「安売り広告」だと、ある程度経験が積み重なっているのでそれなりに信頼できる。
しかし、「髪の毛が生えてきます」とか「1ヶ月でこんなに痩せられます」とか「投資信託でこれだけ儲かります」などという話は、ハナから信用されない。
そこで、使用前と使用後の写真が登場し、◯◯さんや△△さんの体験談が語られる。
しかし、この体験談も、ほとんどが「マユツバ」ものとみなされる。
あまり調子の良いことばかりなので、メーカーの回し者とみなされがち・・・。

どんな新築住宅でも、引越の時はそれなりに満足。
なにしろ、今まで住んでいた家がひどかった。カビだらけだったり、スースー風が入ってきたりで我慢に我慢をくりかえしてきた。
それが二重サッシのマンションに入ったら暖かく、電気代がそれほどかからない。
引越した当座は「良かった」と思う。
しかしこの満足は、しばらく住んでいるうちに次第にメッキがはげてくる。
ダニがわくとか、夜中もなかなか涼しくなってくれない、などということが実体験で次第に分かってくるから・・・。

鉄骨プレハブや◯◯ソーラ、△△サーキットなど、次世代省エネ基準ギリギリの住宅に入居した人も、最初はそれなりに満足している。
その対象となっているのが、今までの悪すぎた住宅。
しかし、実際に生活してみるとやたらと電気代がかかる。思ったよりもかかる。
そして、1戸建ての住宅はマンションに比べるとはるかに寒い。
寒いけど、電気代がもったいないので、ともかく暖房と冷房をケチる。
そして、プレハブやソーラなどの入居者の不満の声が大きく紹介されていない。したがって「日本の住宅はこんなものなのだろう」と諦めてしまっている。次世代省エネ基準の半分の電気代で、本当に快適な暮らしがあるということを知らずに・・・。

東京で、次世代省エネ基準以前の、Q値が良くても4.0Wだった20年前に、いきなりQ値が1.4Wと、3倍も高性能を持ったR-2000住宅を売り出した。
その時は、何はさておいても「省エネ性能」だけが唯一の看板。
「今までの住宅の半分の電気代で、結露のない快適な生活が得られます」と。
ところが、当時はサッシや断熱材の開発が進んでおらず、3倍の性能値を得るには建築コストが坪10万円は高くなった。
このため、この坪単価がネックになって普及しなかった。
東京で本格的にR-2000が売れるようになったのは、サッシや断熱材などの建材が安くなり、坪単価が5万円高でおさまるようになった10年前から。

しかし、その時は、ビルダーの誰もがR-2000住宅に住んでいなかった。モデルハウスに寝泊まりして、それなりの体験は持っていたが、料理をしたり、洗濯をしたり、入浴をしたわけではない。総合展示場ではモデルの便所も使えない。したがって「省エネ」のことは話せても、生活の「快適実感」が話せない。
そこで、先住人の方々にナマの実感を聞いて回った。

そしたら、入居者は、省エネ性能もさることながら、それ以外の「信じられない快適さ」に感動していた。ビルダーや設計士の想像を超える感動がそこにあった。
しかも、その感動の仕方が各人各様。
たしかに結露しないとか電気代が安くて済むという共通の話題はある。
しかし、それ以外に、訪れる全ての家庭で新しい感動が語って貰える。
どの家に行っても新しい発見がある。これは大変に勉強になった。

そこで、以下のルールを決め、全戸を訪問して回った。

(1) 訪問する家は、必ず築1年以上経過していて、それなりに住まい方で試行錯誤の経験を積んでおられること。
 この条件は絶対に必要。出来れば築2年以上の方がよいが、あまり長すぎても感動が薄れる。やはり、問題はあるが築1年以上というルールは守るべき。

(2) 建てられた住宅の全戸を訪問する。
 正直言って、中には途中でトラブルが発生した家もある。しかし、その主な原因はビルダーにある。トラブルのあった消費者の方からの率直な指摘と印象を語って頂かないと、その訪問記は良いとこ取りの「やらせ」になってしまう。それでは絶対に読者からの信頼が得られず、「眉唾もの」という印象を拭うことが出来ない。

(3) 訪問記では、まずは「問題点」を聞くことから始める。
 この問題点は、初期の接客時点から始まり設計、工事、下職の態度、引渡後のアフター、設備機器の不具合など、全てを網羅して聞いてゆく。したがって、書くのは同行する女子社員や外部の委託社員でも良いが、話を聞き出すのはビルダーのトップでなければならない。でないと、問題点を的確に探れないし、改善のチャンスを失うことになる。まず、問題点を教えてもらうことが訪問記の主目的。
 スーパーウォールが「建て主様体験記」を定期的に取り上げていた。しかし、取材は工務店のトップではなく、最初に「問題点」を聞いてはいなかった。このため、どうしても内容が薄っぺらな印象になってしまっていた。

(4) 外観写真と家の中の家族のスナップ写真を掲載させていただく。
 中には、どうしても顔写真はいやだというお施主もおられる。その場合は、部屋のごく一部だけを掲載させていただいた。
 最近は、プライバシー保護という観点から、内部写真や平面図の掲載を断られる場合が多くなってきている。
 しかし、外観写真だと、1枚だけの掲載はほとんど許してもらえる。この外部写真は、築1年以上経過しているので、植栽が良く映える。
それに、内部の家族の入ったスナップ写真1枚だと抵抗無く使わせてもらえた。やはりご家族の写真が載っていないと、書かれている内容が「やらせ」ととられかねない。
 なるべくプライバシーに触れない範囲で、協力をお願いするしかない。

(5) 入居者の印象は、出来るだけ全ての住人に話してもらう。
 たしかに、強い印象を持っているのはご主人であり、奥さん。
 しかし、2世帯住宅の場合は、おじいちゃんやおばあさんの方が、より率直で新鮮な印象を話して貰える場合が多い。それに、馬鹿に出来ないのが子供さんの印象や意見。
建築屋が気づかない面白い話が聞ける。


Q-1住宅とか無暖房住宅とかが叫ばれている。
しかし、ビルダーのトップや技術屋さんで、こうした先進的な住宅に住んでいる人は現時点ではほとんどいない。
そして、聞こえて来るのはもっぱら電気代がどなったとか、灯油の使用量が減ったとかの話ばかり。
聞きたいのは鎌田先生や西方先生の意見ではなく、入居者の本音の感想。
それがほとんど伝えられてこない。
ビルダーのトップは、もっともっと入居者を訪問し、プラスとマイナスの両面の本音を引き出すべき。それがトップの仕事。
そこからクチコミが生じてくる。

私が、再三にわたって桜ハウス玉川の田代専務の感想を記しているのは、日本におけるパッシブハウスの最初の体験者であり、3年間に亘って経験した貴重なメリットとデメリットを、本音で正しく発信してくれているから・・・。
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2007年12月15日

他社をよく研究しょう   ビルダーのホームページ雑感(4)


誰もがそうだと思う。
ホームページ開設に当たって、徹底的に他社を調べる。
私も、とりあえず大手住宅メーカーを調べた。
プロのカメラマンとプロのソフト屋を使って、動きのある美しいものがばかり。
しかし、良く読んでみると、とおり一遍の技術説明や、商品紹介、あるいは代表的な施工例、展示場マップなどの記述しかない。
美しいけど、親しみが持てない。
また、高らかに性能を謳っているが、肝心の性能値が数値で明示されていない。
入居者の声がほとんど聞かれない。
つまり、本当の誠意と人間的な暖かみが全然感じられない。
ツンとすまして、お高くとまっているキツネ美人。

大手プレハブメーカーや三井ホームなどのホームページは、地場ビルダーにとっては参考にならないと言うことがよく分かった。
そこで、セカンドクラスや地場ビルダーのホームページを、片っ端から当たってみた。
その中で、当時私の心に一番焼き付いたのが三菱地所ホーム。
かなりの数の入居者の声を集録していた。
現在では、@健康・バリアフリー住宅実例 6例A二世帯住宅 2例B3・4階・地下付き住宅 3例C店舗併用住宅 7例D医院併用 2例、合計21例しかない。
しかし、かつては100例以上を紹介していた。
それも、完成したばかりの家具も入っていない人気のない冷たい内部写真ではなく、人の気配と匂いがするものばかりだった。
プロのカメラマンが撮ったそうした住宅の外観写真と内部写真は、非常に参考になった。
と同時に入居者の声は、話半分にしか捉えることが出来なかったが、それなりに説得力が感じられた。

よし、このアイディアを頂こう。
紹介する家は一年以上経過していて、植栽が茂り、家具が揃って生活の匂いがするものに限る。
しかし、プライバシーを侵してはならないので、内部写真はご家族のスナップを含めて1点だけとしよう。ただし、プロのカメラマンを頼むとどうしても高価になってしまう。
広角写真機で、自分で撮るしかない。
こちとらはゲリラ作戦で、手作りでゆこう。
そして、三菱地所ホームの場合は、入居者の褒め言葉しか載っていなかったので、信用することが出来ず、話半分にしかとれなかった。
それを逆手にとって、まず不満な点、問題点から話してもらうことにしょう。
こうして緑が育った外観写真と内部の生活匂のある内部写真。それとクレームも含めた入居者のナマの声が、読む人にダウンブローのように徐々に効いていった。

ここで強調したいのは、大手はこの方式を採用することが出来ないということ。
なぜなら、完成物件は年に何千と多い。その中から50点を選んだとしたら、選ばれた方は良いが、選ばれなかった方は「どうせわが家は」とひがんでしまう。
また、常に訴訟問題を抱えているようなところでは、クレーム話を聞くどころではない。
つまり、消費者のナマの声は絶対に発信出来ない。
そんなホームページは、いかにつまらないか・・・
私のリンク先のサンワホームを開いて見れば、納得頂けると思う。
年間100棟を越すと、自画自賛のつまらないホームページになる。

だから、年間50棟以下のビルダーは、大手が出来ないゲリラ作戦を大いに活用すべきだということ。
そうすれば、週に1例を取り上げると1年か2年後には、アクセス数が100件/日。2週間に1例だと70件/日。3週間に1例だと50件/日。月に1例だと30件/日が期待出来る。

そして、これよりも効果の大きいのが完成現場見学会。
例えばツーベアホームの場合は、年に30回以上の現場見学会を開催している。
「一見は百聞にしかず」で、施工精度やデザインセンス、インテリアコーデネィター力は完成現場を見ればほとんど分かる。
同社は、入居者の声を集録していない。
しかし、完成した現場のほとんどで現場見学会が開催出来るということは、それだけ入居者の信頼が高いという風に読みとれる。
ある程度慣例化して、すべての施主がOKしてくれれば月3回平均の現場見学会が開け、見込み客だけではなく、現在プラン進行中のお客、工事中のお客、完成したOB客がホームページを開いて、駆けつけてくれる。
このため、日に100件以上のコンスタントなアクセス数を誇っている。
完成現場見学会が、月に1回でも40件/日平均のアクセスが期待出来る。

完成現場見学会が全く期待出来ないのが超低額物件。
ひと昔前、アイフルホーム全盛時代があった。
しかし、アイフルホームの現場を探すことは容易でなかった。
施主が「アイフルホームという看板を掲げないでほしい」とビルダーに懇願。
「うちは、アイフルでしか建てることが出来ないのです」と、公にしたくない。工務店の名前だけでやってほしい、と。
つまり、低額物件はやりっ放し。
口コミを期待する方がおかしい。大変につまらない商売。
これに対してタマホームはどれだけの口コミ需要を持っているのか。
その実態を知りたいもの。

一方、超高額物件も完成現場見学会が難しい。
立派な内容を見せて、世間から妬まれたり憎まれたりしたくない。
プライバシーは守りたいという意識が最近特に強くなってきている。
その代表がマイスターハウス。
2年前までは、なんだかだと年に数回の完成現場見学会を開催していた。
この時は日に60件以上のコンスタントなアクセスがあった。
ところが高額の大型物件が多くなり、公開をしぶる顧客ばかりとなり、この2年間は完成現場見学会がなかった。このために、春先はアクセス数が日に20件程度にまで急降下してきていた。
こうした「完成現場を見せたくない症候群」の人々も、外観と内部の一部のスナップ写真と体験談なら、喜んで話してもらえる。現場見学会を断られたからと諦める必要は一切ない。
ただマイスターの場合は、アクセス数は減っても、固い口コミがあるので売上げに影響はない。だが、一般的にアクセス数が減ると受注減になると考えてよい。
それほど、ビルダーのホームページは、受注への導入門になってきている。

こうしたこと以外で、いろんな工夫を凝らしてアクセスを増やしているビルダーがいる。
倒産してしまったが、地熱住宅の玉川建設の「宇佐美が叫ぶ」という地熱に関する地道な調査研究データーの発表は非常に面白かった。そんなこともあって150件/日に及んでいた。
それ以外で100件/日を越しているのは近代ホームくらいしか私は知らない。しかし、同社のホームページは過装飾で、内容はつまらない。
むしろ面白いのは、私のリンク先の武部建設やエムエスホームズなど。
両社ともトップがホームページの充実に大きな力を注いでいる。
こうした実態に学び、自社に合った展開を考えていただきたい。    (完)
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2007年12月10日

社長のブログのアキレス腱   ビルダーのホームページ雑感(3)




前回、完成して1年以上たったすべての施主の「入居体験談」をホームページに掲載すべきだと書いた。
たしかに、ほとんどのホームページに、数家族だけの入居談が載っている。
しかし、数家族だと、満足しているのはそれだけで、それ以外はあまり満足しておらず、クレームがあったりして取り上げられないのだろうと見る方は考える。
つまり「本当のフアンは数件しかないのだ」と。

当社の提供する住宅の良さを、客観的に話せる人は入居者しかいない。
その入居者の発言は、何よりも信用が出来る。
真剣な見込み客は、入居者を訪ねて「本音」を聞いてまわったりしている。
わが社の住宅の良さを、客観的に発信してくれるのは入居者。
口コミというのは、入居者というOBが発信してくれるもの。

たとえ入居して10年たっていても、その家族の10年間の体験談は、新規に建てようとしている人にとっては参考になる。
引渡したばかりの人の話は、あまり参考にならない。
建てたばかりで感激の真っ最中。
新品だからまだクレームが発生しておらず、アラが見えていないから。
したがって、入居体験談というのは、最低一年以上たっていなければならない。
燃費がどの程度かもよくわからず、信頼出来る情報とはなりえない。

地場ビルダーで、年間数棟しか建てていないビルダーでも、過去十年間ということであれば、最低でも数十というOB客がいる。
このOB客こそが宝。
そのOB客に、良い点だけでなく、今まで発生した問題点を含めて、ざっくばらんに話をしてもらう。どんなクレームが発生したか。それに対してビルダーはどのように対処してくれたか。そして、いまはどうすればもっと良かったと反省しているか・・・
こういったことこそ、新規のお客が聞きたい本音。

最近「情報の公開」などということが叫ばれている。
多くの食品関係会社が内部告発されている。
都合の悪いことは、隠そうとしているからだ。
一生懸命にやっているビルダーは、隠すものがない。
そして、小さなビルダーの場合、会社内部の情報なんてそれほどない。
公開すべき情報は「OB客情報」だと考えた方がいい。
何回も書くが、これこそがビルダーにとっては宝。
その最大のお宝情報が、ビルダーのホームページほんの少ししかのっていない。
本当に、もったいない。

そして、最近は社長や社員のブログが散見されるようになってきた。

ブログの効果を、私たちにはっきり見せてくれたのが、あのホリエモンであった。
毎日の自分の動きを日記風に書く。
単なる日記にすぎが、デジカメの写真が加わっていると、迫力のある情報に変化する。
こんな情報の発信方法があったのだということを、ホリエモンが教えてくれた。
したがって、当初は新鮮。
そして、これを真似て、全国でブログの花が一斉に開いた。
そういった意味では、ホリエモンの果たした役割は大きい。
私なども、ビルダーの社長に「完成物件」など、発信出来る物件が少ないのだから、ホリエモンのように、社長が感じたことを「毎日ではなく週一でいいから発信した方がいいですよ」とサジェスチョンしりした。

ところが、西方里見さんをはじめ何人か毎日発信している人のブログをみていると、ホリエモンの真似をして、今日食べた食事のカラー写真がデカデカと出している。
自分がスターか何かになったような気分なのだろう。
たしかにホリエモンは、一時は最大のスターであった。したがって六本木ヒルズのスターはどんなものを食べているかということに対してミーハー的な興味があった。
ホリエモンのブログの1/3から1/4は食べ物のデジカメが占めていた。
しかし、スターであったから、それが許された。
つまり、一般の人にとっても興味があった。

ところが、住宅関係者のブログに、今日食べた食事のデジカメ写真が登場しているのを見たら、吐き気がしてきた。
この人は、自分を何様だと考えているのだろう。
スターとうぬぼれているのではあるまいか?
そんな印象を強く受けた。
したがって、ビルダーの社長のブログには、自分が食べた食事を自慢げにデジカメで掲載することはやめた方がいい。
それは、消費者にとって何一つ有効な情報ではないからだ。
もし、地場の「良いお店」を、情報として紹介しようというのなら、毎日自分の足で取材して提供しなければならない。
「車で行ける多摩のB級ランチグルメ」は、大変な作業だった。
そんな作業をビルダーの社長が片手間でやってはならない。
地元のこれはというURLをリンクすればいい。
つまり、食事のことをしょっちゅうブログに載せてはならない。
反感を買うだけだから・・・。

ブログは情報の発信としては容易。
しかし、安易な発信は逆に不信感を招く怖れがあることを自覚すべき。

そして、やるのだったらOB客を訪ねて対談をし、それをデジカメと一緒に公開した方がどれだけ効果があることか・・・。
ビルダーの社長は、一般的に口は達者でも、文章となるとそれほど達者ではない。
したがって、若い女子社員で器用な人が居れば口述したことを代筆させればいい。
それが出来る社員がいない場合は、中年の出来るおばさんや定年後のおじさんにアルバイトで頼めばいい。喜んで協力してくれる。
貴方に変わって情報発信をやってくれる人を探せば、いくらでもいる。
貴方が、本気になって探そうとしていないだけ・・・。
情報発信は、トップの最大の仕事だということを自覚して欲しい。
自分が広告塔にならねばならないことを。

このため、折角のホームページとOB客が眠ったままになっている。
そして、店頭には賞味期限切れのものしか並んでいない。
posted by unohideo at 09:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月05日

絶対に行うべき2つの定期的な発信   ビルダーのホームページ雑感(2)



数日前、建築家の建てた住宅(含む自宅)のカラー写真が沢山載った本を3冊買ってきた。
しかし、これはというものに出会えない。
ほとんどが男の建築士。
こんなデザインやコンセプトで、最近の鋭い審美眼と徹底的なこだわりを持った女性のハートを掴むことが出来るのだろうか?
猛勉強している男性の熱い期待を満たすことが出来るのだろうか?
マスターベーションにすぎないのではないか・・・と気になった。

施主のギシギシとした要望に揉みに揉まれた経験のあるデザイナーでないと、安心して信頼するわけにはゆかない。
したがってデザイン力というのは、そこいらの一級建築士に頼めばことが足りるという問題ではない。
ビルダーにとっては頭の痛い、基本的な問題。
大手のプレハブメーカーに負けないデザイン力を備えるというテーマは、一朝一夕に解決出来るような生やさしい問題ではない。


そして、トップのポリシーを、ネットで発信し続けてゆくということ。
これまた大変に難しい仕事。

誰もが気付いてきていると思う。
ホームページを立ち上げることは容易。
プロでなくとも、ある程度分かった人に頼むと、ホームページは簡単に出来る。
しかし、そのホームページを如何にリニューアルし、アクセス数を増やしてゆくか・・・。

つまり、ホームページは毎日アフターメンテナンスをやらないと、とたんに鮮度が落ち、賞味期限が切れてしまう。
賞味期限の切れた商品を並べている店にはお客は入らない。
しなびたダイコンやネギだけを並べている八百屋で、誰が買い物をするか。
3日間も同じアジやイカを並べている魚屋に、誰が足を運ぶか。

ところが、ほとんどのビルダーのホームページには、賞味期限切れのものしか並んでいない。
ということは、ホームページを立ち上げたということが、マイナスのイメージを世の中に与えているということになる。
むしろ、立ち上げなかった方がよかったということ・・・。

といっても、65才を過ぎた消費者を相手にしているのだったら、ホームページがなくても商売は可能。
しかし、50才台より若い人を相手に商売をしようとすると、ホームページは不可欠。
若い人は何でもネットで調べる。
ホームページも開設出来ないようなビルダー。
つまりI T に対する感度が低いビルダーは、デザインや技術に対しても感度が鈍いのだろうと考える。
昔の大工さんと同じで、古い「技能」しか身につけておらず、新しい「技術」に対しては対応力を持っていないのだろうと推測する。
したがって、ホームぺージを開設していないビルダーは、自動的にオフリミットされている。

ハーティホームがホームページを立ち上げたのは10年前。
ビルダーの中では早い方だったと思う。
しかし、最初は皆から「何を遊んでいるのか」という疑いの目で見られた。
とくに親会社のナイスは、その意義を理解する能力が欠如していた。
自宅にコンピューターを持っている施主も少なく、アクセスが増えない。
ということは、当初は営業支援に役立たず、趣味の遊びとしか見ていなかった。
そこで、「1日、30件のアクセス」を目標に作戦を練った。
それには、週に最低3つの情報を発信してゆく必要があると考えた。

発信する情報の第1は、顧客の生の声。
入居して1年経たないと、R-2000住宅の本当の住み心地は分からない。
お客さんの生の体験談、驚きや戸惑い、感動を中心に話してもらう。
そして、良い点ばかり並べたのでは、読む人は「ヤラセ」だと感じる。
したがって、まず問題点を中心に話してもらった。この方が、リアリティがある。
そして、1年経つと植栽も根付き、外観が馴染んできて写真の写りがよくなる。
プライバシーをさまたげない範囲で、室内のスナップ写真も一枚だけ撮らせてもらう。
幸い年間50棟近くこなせるようになっていたので、取材対象には困らなかった。
そして一年以上経過したほとんどの施主に、喜んで応じてもらえた。
中にはトラブルになった施主もある。しかし、そんな施主こそ優先的に訪問させてもらった。

2つ目は完成ならびに工事現場見学会の案内。
完成現場をオープンしてもらえるのは少ない。しかし、工事中の構造・断熱・気密の現場案内だとほぼ100%の施主の同意が得られた。
毎週土、日の現場案内が、私と工事関係者の仕事となった。
この現場案内というのは、特に完成現場案内というのは、ビルダーにとってアクセス数を増やす切り札と言っていい。

3つ目が、「車でゆける多摩地域のB級グルメのランチマップ」
これは、ラーメンを中心とした中華系の店、回転寿司やうどん・ソバを中心とした和食系、イタリアンやカレーなどを中心とした洋食系に分けての食べ歩きレポート。
このため昼飯は、毎週3日は新しい店を訪ねた。時には日に2店を訪ねたこともある。もちろんすべて自前。
多摩の4つの街道沿いの店を片っ端から訪れた。当時は今ほど路上駐車がうるさくなかったから出来た芸当。しかし、これがなかなかの反響。
ほとんどか1000円以下で、高くても2000円という店ばかりを選んだのが受けた。

当時はブログというものが流行していなかった。
このために、考えだしたのがこの3本立て。
こうして、週に最低3〜4の新しい情報を発信したので、1年目には目標の日に30件(月に1000件)、2年目には日に70件(月に2000件)、3年目には日に150件(月に4500件)平均のアクセスを得ることが出来た。
当時のビルダーとしてはトップクラスの成績。

そして、当然のことながら、契約したほとんどの顧客はインターネットを見ていた。
もちろん、インターネットだけで契約する人はいない。
インターネットはどこまでも導火線に過ぎない。
その後のプランなどの提案が良かったからとか、対応が良かったから契約に至ったことは間違いない。

3のB級グルメマップはさておいて、1のすべての顧客の声を集録するということと、現場見学会の発信は、すべてのビルダーが最低限行うべき。
それをやれないようでは、貴方の会社の将来は暗い。
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2007年11月30日

まずデザイン力とトップのポリシー   ビルダーのホームページ雑感(1)



ビルダー各社のホームページを見て痛感させられることがある。
一般的に訴える力が弱い。
会社とトップの熱意が伝わってこない。
何のためにホームページを開設したのか。
消費者の方に、少しでも多く自社のことを知って頂きたいから。
トップの考えに同調していただける仲間が欲しいから。
ところが、その効果が少ないものが多いように感じられる。
このため、気の付いた印象を書いてみた。


あらゆる産業界は、大手10社で日本のマーケットシェアの70%以上を占めている。
装置産業になればなるほど、この傾向に拍車がかかる。
これに対して住宅産業は、大手10社の占める比率が15%にも満たない。
建築業者の数がやたらと多く、まさに群雄割拠。

そして、かつて消費者は住宅を建てたいと考え、情報を収集しようとすると、住宅展示場へ足を運ぶか、住宅雑誌を買うかしかなかった。
しかし、インターネットの普及で、現在では消費者はあらゆる情報が入手出来るようになってきた。
だが、ネット上の情報には玉石混淆というよりは、圧倒的に石コロ情報が多い。
このため、素人で玉を探すのは非常に困難な仕事になってきている。

以前は、大量生産された消費物資を有難く買わせていただくというのが一般的な消費パターン。
しかし、大量の情報を入手した現代の消費者は、メーカーの一方的なPRに動かなくなってきている。
画一商品に対する反発が強まり、より自分らしさ、より個性的な商品を求めるようになってきている。
住宅の場合、自分らしさとか個性は、いろんな形で現れてくる。
それが間取りであったり、空間であったり、外観やインテリアのデザインであったり、あるいは自分の趣味を生かす設備であったり、こだわりの住設機器であったり、性能や機能であったりする。

ここで強調しておかなければならないことは、大手住宅メーカーは、かつての企画住宅の押し売り方式を卒業しており、こうした消費者の多様な要望にかなり対応出来る能力を身につけてきている、ということ。
トヨタホームを調べてみてびっくりした。
構造駆体は変えることは出来ないが、内装仕上げに関しては「何でもあり」。
タイルの床もあれば、無垢材の現しの階段もある。値段さえ出せば、どんな仕上げも可能で、設備機器類にいたっては何でも選べる。
駆体以外は、完全にフリー。
この現実を知らずして、ビルダーが如何に「フリープラン」を謳い文句にしても、消費者に対して訴える力を持ち得ない。
つまり、フリープランでは差別化が出来ない。
地場ビルダーの垢抜けしないデザインやインテリアに比べて、大手プレハブメーカーの方がまがい物を使っているにしても垢抜けてきている。
消費者はそれに動かされる。

つまり、これからの地場ビルダーは、何としてでも大手プレハブに劣らないデザイン力を身につけなければならない。
どんなに技術力があっても、「美に対する意識」が欠如していると、これからは消費者が相手にしてくれない。
美しい物を美しいと感じ、それを表現する能力が求められる。
ビルダーのトップの美意識がものを言う時代になってきている。
トップが、自分にその才能がないと自覚したときは、そうした人材を集めねばならない。
社員にする場合もあれば、提携設計事務所、提携インテリアコーデネィターとして独立させる方法もある。
そして、出来るだけ機会を設けて、日本だけでなく世界各国に足を運び、出来るだけ美しいものを見るとともに、新しい技術を体得してゆくことが生き残りの必須条件。

言いたいことは、かつてのプレハブは制約が多すぎてデザインは非常にダサかった。
15年前までは、プレハブと競合したとき、プレハブの出来ないプランをつくることによって簡単に撃破出来た。
つまり、フリープラン力が差別化の大きな力になってくれた。
したがって、プレハブと競合すると「しめた」と思った。
ところが、そのプレハブが大きく変化した。
そして、現在では地場ビルダーのデザイン力に見劣りが感じられる場合が多い。
やたらと木を使ったりしているが、コーデネィトされていない。
地場ビルダーに必要なものは、何はさておいても大手に負けないデザイン力。
そのことをまず自覚する必要があると思う。

消費者がネットの上で求めているのは、まずきちんとしたデザイン力。
特に女性の場合は、デザイン力のない会社は最初から相手にしない。
女性の発言力が強くなってきていることを考えると、これは深刻な問題。
貴方の会社のホームページは、女性の視線に正しく答えているだろうか?

そして、男性が知りたいと考えているのは、まず貴方の会社の実績を含めたポリシーと信頼性。
中小ビルダーの場合は、どこまでもトップのポリシーが物を言う。
とおり一遍の「地球に優しい家づくり」とか「個性と愛情に満ちた家庭づくりのお手伝い」などという寝言を言っていると、とたんに対象から外される。

トップが今までどんなことで悪戦苦闘し、どんな家づくりを行ってきたか。
そして、今までの経験からどんな反省をしているか。
そして、どんな家づくりを自分の生涯の仕事にしたいと考えているのか。
そのために、今は何を準備し、その成果はどこまで上がってきているか。
そして、既存の施主とはどんな関係にあるのか。
トップが求めている施主とは、具体的にどんな姿なのか。

そういったトップの本音がきちんと表明されていなくてはならない。
そして、一番大切なことは、自社の商品の特徴、つまりトップが提供したいと考えている住宅がどんなものであるかが明確に判ること。

トップは、ホームページに訪れた全てのお客に、愛想を振りまいてはならない。
こういう八方美人は、八方から相手にされない。
そうではなく、訪れた10人のお客のうち、1人のハートだけを狙うべき。
つまり、ビルダーが顧客を選別すべき。
トップは、自分の欲しい顧客をきっちりイメージしなくてはならない。
そして、そのイメージしたお客に、虚心坦懐に話しかければいい。
でないと、心に染み込んでくれない。
誰の魂をも打たない。
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2007年09月20日

「青年社長」の有機農業での改革奮闘記 (4)



農業へのエントリーの動機は単純。
ワタミの外食グループで、安全でおいしい食材でのメニューが出したかったから。

98年に北海道のある農協と契約して減農薬減化学肥料のジャガイモをつくってもらった。
しかし、これは「有機栽培」ではなかった。
「本物の有機ジャガイモはつくれませんか」と言ったら、反応は今一つ。
本格的な有機農業というと手間暇がかかるし歩留まりが極端に悪くなる。
「とても採算がとれない」と断られてしまった。

仕方がない。
「じゃあ、自分たちで農業をやってみよう」ということになり、02年に成田空港の近くの千葉の山武市に2.7haの農場を開き、ワタミファームを設立した。
しかし、現在の農地法ではすぐに農業法人として認可されない。
簡単に認可したら、土地目当ての不動産業者が農業法人として土地を取得し、転売で不労所得を得る可能性が非常に高い。したがって、簡単に企業が農業にエントリー出来ないシステムになっている。
そこで、社員を仲間の農事組合法人に1年間出向させ、農地をその農事組合法人で借りる形をとらざるを得なかった。

幸運だったことは、小泉改革で千葉県と山武市で「農業特区」が認可され、特区で農業法人としてスタート出来た。
そして、翌04年には北海道せたな町でも特区が認められ、有機栽培を営む「当麻グリーンライフ」と提携した。同社の農地は140ha。さすが北海道という広さ。
以降06年までに千葉の白浜農場、佐原農場、京都の京丹後農場、北海道の弟子屈牧場と順調に生産拠点を増やしてきている。

こうした農場で、現在3つの事業を展開している。
1つは有機農業の田圃。これが北海道から京都までで190ha。日本の平均的な農家の耕作面積が1.5haというか約130戸分。このほかに50を超える契約農家とタイアップして有機栽培を行っている。

2つは北海道のせたなと弟子屈で取り組んでいる略農と畜産。
せたな農場では今年の2月、日本で2番目の有機酪農の認証がとれた。牛乳、卵、そしてアイスクリームやバター、チーズなどの乳製品はすべてJAS有機。
弟子屈では短角和牛、アンガス牛、和牛、ホルスタインという牛肉を生産しているが、このうち短角和牛とアンガス牛は国産の飼料だけで飼育されている。

3は肥料の生産と供給。
鶏糞を水熱反応で処理すると低分子化されたアミノ酸中心の肥料が出来ることが偶然に発見。有機農業に使える肥料として画期的なもので、留萌工場でフル生産しても間に合わないほどのオーダーが殺到しているという。

このように、小泉政権の規制緩和という恩恵に浴することが出来たので、ワタミは比較的順調に農業分野へエントリー出来た。
しかし、実際に中に入ってみると、規制緩和と言いながら現実には農協(JA)系の農家のみを過保護しており、JAに属さない農業法人や個人とでは、はっきりとした差別がつけられているという。
本来の目的は食料自給率の向上。
そのための農地の保全、環境保全であり、リース農地や農業法人であった。
ところが、実態は「農業」を守ることをやっておらず、票田としての農家と農協という既存の権益を守ることばかりをやっている。

一番腹が立つのは、田圃を持った農家が国の指導通り減反し、他の作物を作ると国からお金が支払われる「転作奨励金」。
なぜ米づくりをやめたら、米をつくっていた時の粗利以上のお金がもらえるのか?
商店主に「一度店を閉めたら、1年分の利益をあげる」と言っているようなもの。
おそらく大多数の零細商店主は、楽をしてカネが入るのだから、さっさと店を閉めることだろう。国は怠け者を奨励しているということ。
こんな理不尽なことが、農業の世界では平気で通用している。
どんどん怠け者を育てているから食料の自給率は下がってゆく一方。
何の成果も上がらない補助金を、追い銭としてやる気のない人に渡している。

これからの農業政策は、食料の自給率の向上に的を絞って考えてゆくべき。
日本より狭い島国のイギリスですら自給率は70%を超えている。
100%を超えているフランスやアメリカは「食料の安全保障」という視点から考えている。
日本の政治家や「官」のいう自給率の向上は、単なるお題目。本音は「票」と農協という既存組織の利益擁護しかやっていない。
食料の安全を守るという一貫した方針と気概がない。

自給率を上げるためには、農業がビジネスとして成立しなければならない。
そのためには全ての農家が「経営として農業」を考えなければならない。
そのためには2つの道しかない。
1つは後継者や収益性から考えて、土地を貸すなり、売るなりして農業の第一線から退場する。家庭菜園の分だけを残してリタイアーする。そのことによって、農地を集約し、大規模化を図ってゆくという王道。
もう1つは必ずしも規模の拡大を求めず、専門化して特徴のある農産物に特化してゆく。そして自らの流通ルートと顧客を固定化してゆく。

当面、日本の農業を守るには、海外の安価な農産物との戦いに勝たねばならない。
海外との戦いに勝つには、生産者の顔が見えて、品質がよくて、安心・安全が確保されていて、そして何よりも鮮度が良くておいしくなければならない。こうした高い付加価値がついていなければ消費者は見向きもしてくれない。その切り札の1つとして有機栽培がある。
つまり、有機栽培をテコに、環境問題に寄与しながら日本の農業のブランド化を進めて海外の農作物との差別化を図って行く。
海外の大規模農業に対抗するには、価格面で対抗するのは不可能。
値段が高くても消費者が選ぶだけのブランド性がないと、日本の農作物に未来がない。
しかし、全ての農作物がブランド化して高くなってしまうと、普通の人々に安全でおいしい食品を届けたいという目的が失われる怖れがある。

こうした運動の中心になるのは、意欲のある現在の農家であるのは当然。
しかし、官の過保護のもとにあった多くの農家は、経営的な視点とセンスが欠けている。
新しい企業と個人のニュー・エントリーが絶対に必要。
そうしたエントリー組をJA系と色分けするのではなく、消費者のために正しく競わせる。
そして国家の安全保障としての正しい補助金制度を運用してゆく。

青年社長の、こと農業問題に関する提案には目新しさがない。
しかし、その体験に裏打ちされた発言には、肯かせられる点が多い。
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2007年09月15日

青年社長の「経営力」での病院・老人ホーム改革奮闘記 (3)



著者は病院の改革にもかなりのスペースを割いて書いている。
しかし病院改革では、感動するようなことはやっていない。
念願の学校経営に乗り出した03年に「大阪・岸和田の喜多病院の経営を見てもらえないか」という話が持ち込まれた。負債が7億円ほど。
しかし、学校を手がけたばかりで再三断ったが断りきれず、負債を個人で肩代わりして経営に乗り出した。金があったから出来たまでのこと。
この病院は極めて優れたプロの集団。決して医師としての意欲が欠けていて債務超過になったわけではない。原因は本業を重視し、採算を度外視して医療に励んだための赤字化。

つまり、現在の日本の医療制度では患者の入院が長引けば長引くほど診療報酬が減額される仕組みになっている。経営効率の良い病院とは患者の入院期間が短い病院のこと。
喜多病院は、病気でもケガの治療中でもない入院患者が35%を占めていた。そして治療が終わって療養中までを含めると55%から60%もが医療制度上の患者でなかった。
青年社長がやったことは、こうした「社会的入院患者」を追い出したこと。それと総合病院ではなく、病院の売りを「肺循環」と「間節治療」に絞って専門病院化したこと。
この程度の改革だと誰にでもやっている。本人が自慢するほどの経営力はさらさらない。
もっと優れた病院の経営事例はいくらでもある。

喜多病院は退院後のアフターケアをするために「訪問介護ステーション」を設けていた。
青年社長は追い出した「社会的入院患者」のことが気になり、ステーションの介護にスタッフに「退院された年寄りのその後はどうですか」と聞いてみた。
「大変です。お年寄りは病院を追い出されたら身の置き場がありません」という。
そこで、スタッフに案内されて在宅介護の現場を案内してもらった。
自宅で幸せな介護を受けているのはごく稀で、共働きの若い夫婦が用意して行くご飯は冷めているし、日中は放りだされたまま。その現実を見て愕然とした。

介護サービスの現場を見て歩き、マーケット調査をしているうちに「これは“福祉”にはなっているが“サービス”にはなっていない」ということに気がついた。
介護サービスの根底にあるのは「官」の作り上げた福祉の仕組み。
この仕組みでは、お年寄りに「最低限のことをやってあげる」のがせいぜいで、介護を受けるお年寄りのことを考えていない。つまり「顧客」を見ていない。
その中でも腹立たしかったのが「特殊浴」と称する年寄りの洗浄。
現在の介護保険制度では年寄りを風呂へ入れれば点数が稼げる。したがってカーウォッシャーのような風呂へやたらと入れたがる。
寝たきりの老人の身体を台の上に横にして、ジャーッとお湯を流し、次ぎにジャーッと洗剤を流し、またジャーッとお湯をかける。そして、最後に温風で乾燥させて一丁上がり。
食器洗浄機と同じ人体洗浄機。
本人の意志も確認せぬまま人前で老人を裸にして洗浄する。

このほかにも、介護の現場には奇妙な常識が充満していた。
おもらしすれば、すぐおむつ。
食べ物が噛めなくなると、なんでもミキサーで砕いて食べさせる。
さらには経管食といって、チューブで栄養食を流し込む。
足腰が弱るとすぐ車椅子。
体力が落ちるとすぐに寝たきり。
つまり、介護する側の都合さや便利さだけが優先的に考えられ、顧客である老人のことは忘れ去られている。
これが「官」の介護の実態。

2005年に神奈川県を中心に16棟の老人ホームを展開していた「アール介護」の経営権をワタミは93億円で取得した。いわゆるM&A(企業買収)。
そして、介護事業を展開するに当たって5項目の実現すべき目的を掲げた。
●おいしい食事を提供すること
●こころある接客サービスであること
●施設のメンテナンスは快適であること
●低コストの施設づくりであること
●施設開発能力を発揮すること。
基本的には月々18万円から20万円の年金の範囲内で、全てを賄える老人ホームの実現。
理想的な老人ホームの具体的な内容として「おむつ…ゼロ」「特殊浴…ゼロ」「経管食…ゼロ」を目標に掲げて常に努力を重ねてゆく。

買収した「アール介護」はスムーズに展開出来たわけではなかった。
1/3のベテランが辞め、当初は運営に苦労している。
そうした試行錯誤を通じて、介護サービスの中で老人が待ち望んでいる中心的なサービスは「食事」にあるということに気が付いて、愁眉が開けた。
つまり、外食産業で20年かけて開発してきた有機栽培をはじめとした「手づくり」「安心・安全」「季節感」「バラエティ豊かなメニュー」などのノウハウが、そっくりそのまま活用出来る。

ワタミのホームでは、他の多くの介護施設のように盛りつけてすっかり冷めてしまった食事を出すことはない。
和民で冷たい焼き魚や生暖かい冷や奴を出したら2度とお客は来てくれない。老人ホームのお年寄りは別のホームへ行って食事が出来ない。そんな弱みにつけいるやり方は、上から押しつける「官」の発想そのもの。
ワタミのホームにもミキサーにかけた「介護食」がある。しかし、ドロドロの流動食をそのまま出すことはない。
ミキサーにかけたあと再度味を整え、寒天やゼラチン、デンプンなどで固め、形のあるものにして提供している。料理によっては、バーナーで焼き色をつけ、よりおいしそうに見える工夫もしている。

また、ソフト面だけでなく、施設づくりのハード面でも不動産投資ファンドを活用して「借金ゼロ」でホームを立ち上げている。
不動産オーナーに直接働きかけ、利回りをいくらにしたいのか。造り替えたいのであれば割賦にしましょう。売りたいのであればこの外資ファンドに売りましょう。信用が必要であれば当社が一括で借りて保証を付けましょう…という具合に。
オーナーのニーズに応えられる多彩なノウハウを蓄積してきている。
そして、ワタミの全ての老人ホームは、採算ラインといわれる入居率70%以上を常に守り、安定したビジネスに育っている。

さらに面白いのは、デンマークに学んで「車椅子ゼロ」を目指して動きだしていること。
デンマークでは車椅子の老人はほとんど見かけない。
これは、車椅子に乗る前に透析をやめるわけでも、老人が死んでしまうわけではない。
「ロレーター」という優れた歩行補助器具があるから。
国が「足腰の弱った方はこれを使って歩きなさい」と支給している。
このロレーターの説明は長くなるので省略するが、樹脂製の4輪補助具。見た目はベビーカーやシルバーカーに似ているが、デザインが良くて機能が優れている。
そして、車椅子に乗るよりもなるべく歩く方が心身ともに健康になる。
このロレーターもワタミで製造販売するという。

と同時に、デンマークの老人ホームの凄いところは、お年寄りのお小遣いを3万円と決め、それが手元に残るようにして老人ホームの入居料金が決められていることだという。
こうした先進的な医療制度を目指して、民の力を結集し、官の間違いを糾してゆこうという青年社長の意気込みには、拍手させられる。
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2007年09月10日

青年社長の「経営力」での学校改革奮闘記 (2)



青年社長は、ワタミが上場したのを1つの区切りにして学校の設立を真剣に考えるようになった。
外食産業に携わって人材の育成、すなわち教育ほど重要なものはないと痛感した。
外食産業の教育というと「マニュアル教育のことだろう」と早合点しがち。
青年社長は、そのマニュアルが大嫌い。
仕事の場とは、自分の夢を叶えるために必要な有形無形の価値を学んで、成長をとげてゆく場だと考えている。事業を伸ばすことは人を成長させることにほかならない。
その成長過程を目撃するのが大好き。
という少し青っぽい動機から「教育の場をつくる」ことに執念を…。

しかし、学校教育の世界は極めて閉鎖的。
居酒屋の成り上がり社長がどんなに力んでも、新しい学校をゼロから造れる可能性は不可能だということを思い知らされる。
八方塞がりで悩んでいた時、文京区にある私立の中高一貫の男子校「郁文館」から「再建のため一肌脱いでもらいたい」との声がかかった。
郁文館は夏目漱石の「我輩は猫である」にも登場する1899年に創立された由緒ある学校。
したがって定員割れを起こしているわけでもなく、受験者数が著しく低下しているわけでもない。一見まともな学校なのだが28億円という巨額な負債を抱えていた。
この借金返済のために修学旅行の積立金にまで手をつけるという自転車操業に…。
経営が完全に破綻していて、一般企業ならばとっくに倒産。

著名な学校がなぜこんなんみっともないことになったのか。
それはバブル期に銀行やゼネコンにおだてられて長野県に豪華な研修施設を造った不動産投資が原因。
バブルが崩壊して研修施設をホテルに改修して収益を確保しようとしたが、所詮は紺屋の白袴。赤字がふくらみ続けた。
ともかくバブル時の銀行はポリシーもなければ節操もなく、いたずらに資金を貸し付け、多くの企業と個人を投資に走らせ、破綻に陥れた。
そして、その責任をとった銀行の経営者は1人もいない。
日本の頭取共は、世界一の無能で無責任な人種であることを天下に公知。
郁文館も、その犠牲者の1人にすぎない。
しかし、そのお陰で青年社長のところへ話が持ち込まれた。
渡りに舟と、1億円の私財を寄付し、30億円の銀行借り入れに対して個人の債務保証をして、青年社長は理事長に就任した。

そして、意気揚々と郁文館へ足を踏み入れたら、腰を抜かさぬばかりに驚かされた。
一番ひどいのはゴミ。
ともかく校内はゴミだらけ。そんなゴミだらけの廊下を歩いて教室へ入ってみたらここもゴミの山。紙くずをはじめ何もかもその辺に捨て放し。
おまけに生徒たちは挨拶を全然しない。
そのうえ、全校生徒1600人のうちひどいときは1/3の500人前後の生徒が遅刻してくる。
それが当たり前になっていた。
ということは、ツッパリやヤンキー類の不良学生が目立つ荒れた学校かというと、そうではない。むしろ逆で、東京の普通の家庭のまあまあいい子が集うのんびり、おっとりとした校風が感じられる。

職員室を覗いてみると、教師たちはてんでばらばら。チームワークのかけらも感じられなく、1/3がやる気を喪失していた。
教育を通じて生徒たちを幸せにしてゆこう。学校の仕事を通じて自分自身が人間として成長していこう。
こうした教育者としての基本的な気概を、全く見失っていた。
この学校を改革してゆくわけだが、学校経営の基本数字を知っておく必要がある。
全ての産業界に基本数字がある。この基本数字を軽くクリアーすることがイノベーション。
もちろん、住宅業界にも基本数字がある。

私は注文住宅業界で、ニューエントリーした企業2社を、なんとか黒字化してきた。
しかし経営の基本は非常に単純なもの。
1つは、常にイノベーションを追い続け、大手住宅メーカーにはデザインを含めた商品開発面で絶対に負けないこと。
2つは、1人当たりの生産性を8000万円以上になるように努力すること。

モデルハウスをもっているビルダーの場合、この数字にさえ抑えておけば、総資本回転率とか月次決算などというこまかい経理的な数字を無視できる。
例えば1人当たりの生産性が5000万円とする。粗利が25%とすると1人当たりの粗利が1250万円。このうち直接人件費として払えるのは1/3の420万円。
福利厚生費や交通費などの間接人件費や事務所費、展示場経費、広告宣伝費などの諸経費が直接人件費の2倍はかかる。
ボーナスを含めた年間平均給料が420万円では、優秀な人材は絶対に得られない。
平均700万円以上の年収を保証するには、1人当たり生産性が8000万円で、粗利が27%なくてはならない。
ナカジマホームの松岡社長は、エリアと商品を絞り、ひところ1人当たり生産性が1億円を超え、粗利30数%という驚くべきイノベーションを達成して脱帽したことがある。
この松岡氏には敵わないが、経営数字そのものは難しくはない。注文住宅で一番難しいのはイノベーションを続け、大手に絶対に負けない商品力を持ち続けられるか否かにある。
それがないと1人当たりの生産性と粗利が確保出来ない。

著者によると、学校経営の基本数字はあまりにも単純。
売上げは、入学費×受験者数+学費×生徒数+補助金+寄付
これに対して支出は人件費と固定費。
まず、この固定費を30%以内に抑える必要がある。
ところが35%の固定費を支出、しかも70%を人件費に充てているとこがある。当然赤字。
私学振興財団の調査によると国内の私学高校のうち1992年度には赤字高校が12.1%だったものが、2005年には50%にもなっているという。
ということは、定員割れを起こしているからか…。そうではない。
とすれば赤字の原因は? 建物の減価償却費? それとも光熱費?
答は人件費。これが70%を超えているのに経営的な対策を講じられていないから…。

生徒数1500人の郁文館では人件費の損益分岐点が50%。これを超えたらビジネスにはならない。50%が「望ましい」のではなく、絶対に抑えなければならない生命線。
どうしたら50%に抑えられるか。安直なリストラでは教師の意欲が損なわれる。現場の教師によるプロジェクトを立ち上げ、試行錯誤を繰り返し、その中で見事に郁文館では50%に抑え込んだ。
このため28億円の負債は2008年度中に完済し、2010年には校舎が新しく建て直され、男女共学校としてスタートする見込みという。

あまりにも経営の話に的を絞りすぎた。
青年社長の学校改革のポイントは「学校は生徒のためにある」というポリシーの徹底。
つまり生徒が「お客さん」であるという思想で教員の意識改革を進めた点にある。
生徒がお客だということは、未熟な子どもに媚び、へつらえということではない。
居酒屋の客へのサービスはその日で完結する。しかし、学校でのサービスが結実するには時間がかかる。
居酒屋のサービスは「消費」だが、学校のサービスは「投資」。
その違いはあるが、学校の「お客」は決して教師ではなく、どこまでも生徒。
ただし、すぐれた教育というサービスを提供するのはどこまでも優秀な教師とその意欲。

教師の意識改革のためワタミで3日間の研修を受けてもらったり、誰もが納得出来る公平な評価制度をつくったり、授業崩壊という現実を根本から変えたり、イジメは「自分がしてほしくないことを相手にすることだ」と徹底的に排除したり…。
こうした改革についてゆけず、1/3の教師が離脱していった。
しかし、残った意欲的な教師の多面的なアイディアによって、郁文館は蘇生した。
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2007年09月05日

「青年社長」の学校・医療・介護・農業分野での改革奮闘記 (1)



高杉良著「青年社長」を読まれた方は多いと思う。
父親の事業の失敗を見て、子どもの時から「将来は社長になる」と決め、明治大学商学部卒業後北米を放浪した後に、事業資金を稼ぐため過酷な労働条件で名高かった佐川急便のセールスドライバーとなり1年で300万円貯めた。
そして1984年に渡美商事を設立してつぼ八のFC店を買い取ってフランチャイジーになる。1986年にはワタミを設立し、居酒屋のチェーン店を展開し、2000年には東証一部に上場した。まさに青年社長そのもの。

著作も多く、私も「サービスが感動に変わる時」「思いを形に変える」「ありがとうの伝説が始まる時」「夢に日付を!」など数冊を読んでいる。
しかし、好感の持てる若手経営者ではあるが青っぽく「青年社長」の域を出ていないという印象が強かった。
そして「きみはなぜ働くのか」は、拾い読みして途中で捨てた。
稲盛和夫氏の最近の著作と一緒で、やたら説教臭くて面白くなかった。

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したがって、たいした期待もなく「もう、国には頼らない」(日経BP社刊 1300+税)を遅ればせながら買ってきた。
ところがこの4年間に、青年社長は農業に続いて学校経営、病院経営、介護老人ホームへと手を拡げ、果敢なる挑戦と改善で大きな成果を挙げてきていた。
居酒屋チェーンの「青年社長」から、官の厳しい許認可の監視下におかれている業界に殴り込みをかけ、そのイノベーション力で立派な「経営者」に変身していた。
これほど短期間に、経営者として多面的に急成長した人物は珍しい。
日本の産業界が産んだ奇跡の1つと言っても過言ではない。

そしてこの本は、今までの著作と問題提起の重要度がまるっきり違う。
規制緩和の遅れている業界の実態をつぶさに体験し、その中から体当たりで解決策を発見し、その効果を実証してきている。
常識にとらわれない自由な発想と、お客さんから「ありがとう」を言ってもらえる企業こそが存在の価値を持っているという初々しいポリシー。
それがキラキラ輝いている。
20日前に、渥美俊一著の「流通革命の真実」を、経営関係では今年最大の出版物でないかと取り上げたが、それよりもこの著書の方が迫るものがある。
画期的な内容を持っているのに、何故各書評で大きくとりあげられなかったのか…それが不思議。

とはいえ、新しい事業にエントリーしていずれもわずか2〜4年。
したがって、理論的にも実績的にも完成度はまだまだ低い。
しかし、官と政治家が支配する遅れた業界で、短期間にこれだけの業績をあげたという事実は貴重で、かつ頼もしくて重い。

そのポリシーと行動力は、住宅産業人も徹底的に学ぶ価値がある。
したがって、いままでの書評は一度で終えていたが、今回は数回にわたってその細部を紹介したい。
皆さんに、感動の押し売りをしようという魂胆…。
そして気の早い人は、私の数回の記述を待たずに本屋へ走るなり、メールで著書を取り寄せて読んで頂きたい。
もし、感動しなかったら「産業人としての感性が失われている証拠」と断言したい。
さっさと退場した方が、世のため人のためかも…。
この本は「産業人としてのリトマス試験紙」であるというのが私の見立て。


まず、行政が幅をきかせている公的サービス分野と対極的な、何の規制もない外食産業の実態から見てゆこう。
ここは徹底的な自由競争、究極の市場経済の世界。
ライバル同士がノーガードで殴り合いをしている。
たとえ「和民」が成功したら「〇民」が出てくる。看板も内装もそっくり。メニューもそっくりというのが当たり前。
物真似ビジネスの横行と、あまりにもの過当な競争の世界。
しかし、規制の話は「官」や「政」のサイドから出たことがない。
これはこれで大問題なのだが、このノーガードの自由競争のおかげで、日本は世界でダントツの外食王国になることが出来た。
外食業界がこの自由競争で得た恩恵は、そのまま消費者に還元される。
ライバルより1人でも多くの客に来店していただきたい。1円でも多く売り上げたい。1店でも多く出店したい。
そのあくなき競争心がメニューの種類を増やし、料理のクオリティを上げ、接客を向上させ、店内をピカピカにし、そして価格を下げ、チェーン展開をスピードアップしている。

なんの規制もないマーケットはイノベーションが出やすい。
消費者の要求レベルがどんどん高くなり、それに合わせて企業が工夫を続けるから。
このサイクルがイノベーションを生み、新しい商品、新しいサービス、新しい業態を生む。
自由競争のマーケットでは、良い商品・サービスを生む原動力は消費者。

「つぼ八」のフランチャイジーとしてスタートしたとき、スタッフがおしぼりを両手でもってさし出し、ひざまずいてオーダーを聞くサービスを始めた。小さな工夫だがリピーターが増えた。
メニューについても、お客は敏感に反応する。どのメニューが何食出たかはデーターですぐわかる。
それまで「かつおだしの素」を使っていたのを頑張って枕崎のかつおぶしにしてみた。するとメニューの数値が黙って上がる。日本の消費者の舌はかつおだしの素と高級かつおぶしのダシの違いを見抜く。
冷凍の鶏肉をフレッシュな鶏肉に変えただけでフライドチキンの売上げの伸びが違う。

日本の消費者の舌はここまで進化している。
したがって、お客相手に絶対に手をぬくことが出来ない。
手を抜いたそのときに、わが社の商売は終わる。
市場経済というのは、企業が毎日消費者から「選挙」されているようなもの。
小手先の工夫やネーミング、メニューの写真の見栄えを良くしても、好反応は一回きり。
味とサービスを向上しない限りリピーター客は納得しない。
つまり選挙民である消費者の満足と支持が得られない。

教育、医療、福祉・介護、農業の世界も基本は全て同じ。
「お客さま」を敬い、畏れなければならない。
お客さま本位で商品やサービスを選べるようにすれば、客は最善の選択をする。
その結果、お客は幸せになり、サービスの水準も上がり、サービスの担い手も幸せになれる。
にもかかわらず「行き過ぎた自由競争はよくない」と役人や政治家が市場メカニズムを排除しようとする。「公」が崩壊するからという。
「公」と「官」をイコール視することがそもそもの間違い。
「官」の権益を守るために情報公開を拒んでいる。
そして「官」の仕切っている公的サービスは消費者のニーズに応えていない。
それだけでなく、ほとんどが経営的に青息吐息。
もはや何をか言わんやだが、絶望するにはまだ早い。

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2007年08月15日

読みごたえのある「巨大企業群誕生」の歴史的証言



面白い。
あっという間に読了させられた。

最近の若い人で「渥美俊一」の名を知っている人は少ない。
あのスーパーダイエーをはじめ、イオン、イトーヨーカ堂、西友、ユニー、いなげや、東急ストア、ハローズ、ヤオコー、マミーマート、しまむら、サンドラック、カインズホーム、ジョイフル本田、トステムビバ、ショップ99、セブン・イレブン、ミニストップ、AOKI、はせがわ、ニトリ、サイゼリア、すかいらーく、吉野家、幸楽苑、リンガーハット、ワタミ等々、日本を代表する小売業や飲食店のチェーンストアを育て上げた理論家であり実践の人であるということを。

戦後、日本にあった大きな商店は百貨店だけ。小売業とか飲食業は年商1億円ゆけば大成功者。百貨店を除くと全国にわずか1300社しかなかった。
それ以外はほとんどがパパママストアの零細企業で、その数は130万店。
人情は豊かだが、日本の消費者は先進国に比べて悪いサービスと魅力が乏しく、しかも高い商品の購入を余儀なくされていた。

読売新聞の記者だった渥美氏は、休日の前日から月曜にかけて、この1300社を三年かけて1人残らず面談する計画を立て、それを実行した。そして、その中でポリシーと意欲のある人々に呼びかけてチェーンストアの研究団体「ペガサスクラブ」を1962年に設立した。そして、チェーン化することによって小売業を産業化することに力を貸した。
「50ヶ年プロジェクト」を計画させ、年商1億円前後の社長に「チェーン店を200以上つくり、年商50億円のピックストアになろう」と呼びかけた。
1960年時点で年商50億円を超していたのは21社だけ。そのうち20社が百貨店で残りの1社が丸善。
そんな時代だから、50億円というのは夢のまた夢。
ともかくアメリカの小売業を徹底的に研究し、夜を徹して議論を重ねた。
その結果、年商1兆円を超すビックストアが当初のペガサスクラブのメンバーの中から何社も生まれて来ている。

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渥美俊一著「流通革命の真実」(ダイヤモンド社刊、1800円+税)は、単なる評論ではない。
50年に亘る闘いの記録集。
常に流通革命の真っただ中にあって、獅子奮迅の活躍。
第三者ではなく、常に当事者であった。
産業界にこれほど強大な影響を与えたコンサルタントはいない。
したがって、書かれている内容はそんじょそこらの経営者の自叙伝に比べて重さが違う。
また、薄っぺらな知識しかない最近の経済記者の書いている表皮的な記事とは内容の深さが比べものにならない。

渥美俊一氏には、私は数回面談の機会があった。
氏と下村治氏を講師に招いてセミナーを開催したこともある。
また、リティリングセンターに招かれて、アメリカの住宅産業について話をしたこともある。ホームセンターがこれから花を開こうとしていた時で、その方面への関心が高かった。
ともかく、氏の周辺には熱気が渦巻いていた。
建設省の住宅局長に、氏のマーチャンダイジング論を「面白いですよ」と渡したりもした。

そんな氏ではあったが、最近ほとんど出版物に接する機会がなかった。
ダイエーの中内功さんとともに過去の人になったのではないかとゲスの勘ぐり…。
偶然、図書館でこの本を見付け、とんで帰ってその日の内に読み終えた。
ところがどっこい。大正15年生まれの氏は、かくしゃくとしていた。
背筋がピンと張っていて、微塵のゆらぎもない。
そして最近読んだ経営本の中では、抜群の切れ味が冴える。

流通の専門用語「日本型スーパーストア」と「スーパーマーケット」。「SB」と「PB」。「業態」と「フォーマット」の違いなどが分からなくても、この本は著者の言わんとすることが正確に伝わってくる。

著書は15章からなっている。
どの章も面白く、それぞれが生きた産業界の50年史そのもの。
その中で、私が特に面白く感じた章のほんの一部だけをピックアップして紹介する。

まず、1章の「セルフサービス」
私共は最近ではセルフサービスが当たり前のことと捉えている。しかし、日本で最初にセルフサービスを採用したのはごく少数のスーパーのみ。
セルフサービスはノーサービスと誤解したり、省力化の手段と勘違いしている面が今でもある。しかし、このセルフサービスにこそ流通革命の真髄が凝縮されている。
セルフサービスというのは、お客にとって選びやすい商品の分類がなされており、落ち着いて気軽に、自由に、短い時間で買い物が出来るプレゼンテーション。その技術体系が日本では未熟。サービスを良くしょうと言うことで対面接客を強化するのは間違い。

4章の「日本型スーパーストア」
1990年代に入ると日本型スーパーはおかしくなりはじめた。
時流に合わない最大の問題は価格政策。アメリカの婦人用品は全体の8割が3000円以内。日本型スーパーはそれが出来ないでいる。
第2は部門別管理の欠如。アメリカのウォルマートもセーフウェイもシアーズも部門別管理表のソフトを持っているが、日本は持っていない。そして坪当たり年商はピークの331万円から157万円へ激減している。
そして、品質問題。日本では食品の場合トレーサビリティばかりを問題にして、品質に対して一家言持ったエキスパートがいない。有機栽培だから、無農薬だから「安心」というが、まず「安全」であることを科学的に立証することがポイント。また、添加物のないことをPRするより高カロリー、塩、脂肪のとりすぎが問題。有害なものは売らず、ヘルスフードで味が保証されていること。この品質管理が出来ていない。

5章の「フォーマット」
1980年代、アメリカで一番新興勢力だったのがホームセンター。ビルダーに資材を売るハードグッズのセルフサービスの大型店。ドイトがハードグッズ専門店を開設したが、それ以外で家庭用品が主力の日本独自のホームセンターが生まれてきた。
その背景は、オイルショックの時「安かろう、この程度で良かろう」という品質の見直しがビックストアで行われ、問屋や中小メーカーが取引停止になった。その日用品雑貨を扱ってくれたのが日本型ホームセンター。
この日本型ホームセンターは日本型スーパーストアと同じ運命に陥っている。価格問題への取り組みはもちろんのこと、使う人の側に立って品質を問題にしていない。買える魅力のある商品が少ない単なるよろず屋になってきている。

11章の「ダイエー」
たしかに中西功さんは失敗した。しかしチェーンストア草創期に果たした功績の大きさは絶対に否定出来ない。氏は2つの面で画期的な革命を達成した。
1つはビックストアとは何かを最初に実例で示した。ともかく店を増やす努力をした。このため銀行借り入れのため常に増資を続けた。それと収益。収益をあげるために薄利多売を実行した。これはウォルマートの創業者と同じオーソドックスな論理。
もう1つの革命は、日本で初めてチェーンの本部を独立してつくったこと。
しかし、中西さんはドラッグストア、スーパーマーケット、フードサービスと様々な業態を日本で最初に打ち出し、画期的だった。だがチェーンストアのフォーマットの確立に失敗した。マーケティング上、TPOSごとに必要な商品の品質が違うということに気がつかなかった。それと、メーカーとは違う商品のあるべき性質を決めるトレードオフが出来なかった。マスストアオペレーションの技術確立で失敗。本来店舗が増えればマスの効果が出てくるのに、経営効率は店数に反比例して低迷していった。
そのダイエーが25年間も小売業のトップの座を維持し続けられたのは政府の出店規制策のおかげ。既存店の売り場面積の比率で認可されるから、トップであり続けられた。

残念ながら紙数が尽きた。
経営者たる人の必読書。技術論もさることながらポリシーを学んで頂きたい。

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2007年05月30日

最上級の面白さ。中小企業の「ものづくりド根性物語」

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読み始めたらとまらない。
食事をするのも忘れて、一気に読み終えた。
息を吐く間もないとはこのこと。久々に巡り会えた中小事業家の歯ごたえのある生き様。

中小企業のものづくりのヒーローとして、最近やたらと取り上げられているのが岡野金型製作所の岡野雅行氏。各出版社が2匹目、3匹目のドジョウを狙ってのことらしい。
「俺が、つくる!」(中径出版)、「あしたの発想学」(リヨン)、「町工場こそ日本の宝」(PHP)、「仕事がおもしろくなる発想法」(青春出版)、「人のやらないことをやれ」(ぱる出版)と、すっかりスターとなった。
たしかに、痛くない超極細注射針の開発話などは面白い。
しかし舞台が特殊すぎて、われわれビルダーのものづくりの参考にならない。
ところが、赤澤洋平著「ロボットおやじの“ものづくり魂”」(出版文化社 1600円+税)はわれわれビルダーにとっても教えられる点が非常に多い。一読しただけで勇気をもらうことが出来る。

父親は鉄工所のおやじだった。小学生の時に父親に連れられて鉄工所へ行った。狭い工場でものすごく暗く、油臭く、ちっとも楽しくなかった。
6人兄弟の5番目。高卒の長男が後を継いでいたので、漠然と近大を卒業して物理の先生になることを考えていた。大学2年生の時、父親がガンにかかった。父親の気持ちを察して機械科に転科し、卒業と同時に下請け専門の鉄工所へ入社した。
航空機や電車の足回りの部品加工が主な仕事だったが、当時は仕事がいっぱいあり、外注係を命じられた。外注先の職人と徹夜で酒を交わしたりして学び、なんとか仕事をこなしてもらった。
そして、バブルがはじける4、5年前までは工場長として工場や外注が自分の思うとおりに動かせるようになってきた。
仕事はどこまでも大手の下請け。だが発注先を教えてもらい、その業界の好不調を考えて瞬時に見積もりを出すシステムを考え出した。このため会社の売上げはピークで6億円だったが、順調に伸びていった。
黒字でボーナスはたくさん払えるし、社員の家族までグアムやシンガポールへつれてゆける。仕事仲間とゴルフも出来るし、オーケストラの指揮者になった気分だった。

そして兄が60才で引退し、社長をバトンタッチされた年にバブルがはじけた。
あっという間に最悪の事態。落ちる時は、まさにつるべ落とし。
今までの経験から、2年ほどで回復すると考えていたが一向に回復せず、創業以来初の赤字決算。一体何が起こっているのかさっぱりわからない。
得意先からの発注が一気に減り、大阪の製造業の空洞化が始まった。
「もう、おしまいか」と何度となく思った。

当時、会社では300種類の仕事をしていた。平均工程が10工程とすると全部で3000工程。どの機械で、誰と誰にやらせ、どの外注を使えば何時までに出来るということは工場長として全て頭の中に入っている。しかし、社長になったのだからこれを書きだして社員に覚えてもらわねばならない。何か良い方法がないかと考えている時、コンピューターと出会った。コンピューターの「コ」の字も知らなかったがNECの知人から生産管理システムに使っている会社があると教えられた。2ヶ月かけてデーターベースをつくり、3000万円かけてなんとかシステムが出来た。
このおかげで社長業に専念出来た。そして、鉄工所のコンピューターということで一躍有名になって講演依頼がきたほどで、当時としては画期的なことだった。

次ぎに社長として何をすべきか。徹底的に講演会を聞いてまわった。
経営理念として (1)人と技術を大切にしてゆく (2)合理性・創造性の追求 (3)戦略的経営を上げ、改善提案制度を創った。
提案を5級から1級に等級わけをして皆の前で発表し、ファィルにまとめた。
年に100件ほどの提案があり、働きやすい職場にしようということで整理、整頓、清潔、清掃、しつけ、整備で、工場は鉄工所とは考えられないほど綺麗な工場に一変した。

そして、航空機の部品をつくっているのに「鉄工所」では受注面とリクルートの面でハンデが大きい。そこでコーポレートアイデンティで社名をシステクアカザワニ変えた。とたんに就職の資料請求が600枚も届いた。発注先は工場を見てくれ、仕事も増えた。
また、航空会社の仕事をしているのでISO9001も取得した。

大きな転機は、ドイツで毎年開かれているハノーバメッセへの参加で得られた。
ハノーバメッセは想像以上の規模に圧倒された。その中の何号館かが部品ばかり並んでいた。小企業ばかりのブースが集まった館で250社が出展していた。
それぞれのブースの前に立って「これは何の部品か」を聞いて回った。
プリンター、建築用ボルト、船のクランク、電車の台枠……それぞれの部品に存在感があった。
「これは、どこの下請けの仕事ですか」と聞いた。
「下請け? 俺たちはメーカー。ドイツだけでなく世界中に得意先を持っている!!」

「下請けではなく横請けでいこう!」
帰国後直ちに10社に呼びかけて「GATグループ」という会を創った。
1社の設備は10台でも10社集まれば100台の設備となる。それぞれの得手を合わせれば、今まで断っていた大きな仕事や難しい仕事もとれる。
そして「10社の社長はそれぞれ営業マンになろうではないか」ということでスタート。
しかし、当初はなかなか軌道に乗らなかった。会社のピンチは続きボーナスも払えない。役員退職金の積み立てを崩し、不要なものは処分し、加工の生産性をあげ、やれることは全部やってリストラだけはやらなかった。これこそがものづくりとしての自慢。
そして次第に横請けが軌道に乗り、一番苦しい時期を乗り越えることが出来た。

ずっと下請けでやってきたのだが、自社製品をつくらなければと考えていたとき、大阪市の島屋ビジネス・インキュベータの存在を知った。産・学・官のネットワークで新ビジネスの研究開発を支援する機関。
前から「罫書きが自動で出来たらいいな」と考えていた。これは職人の世界で自動化がなされていない。そこで「三次元自動罫書き装置」の開発を申請したら審査が通った。
しかし「白紙にものを書くというのはこんなにも大変なものか」ということを嫌と言うほど知らされる。
CCDカメラ、レーザー、パソコンがあればなんとかなると思ったがレーザーに思うようなものがない。6年間の開発で費用は5000万円もかかった。
「もうだめだ」と思った時、新しい炭酸ガスレーザーとヤグレーザーが出現してくれ、なんとか製品化に漕ぎ着けることが出来た。
そして、ベンチヤービジネスコンペ96の大賞を受賞することが出来た。

この三次元自動罫書き装置がきっかけとなって、大阪市が産・学・官連携で立ち上げた「次世代ロボットテクノロジー産業創出研究会」の委員として参加するように呼びかけられた。
もちろん、ロボットの「ロ」も知らない別世界。
しかし「CCDカメラと炭酸ガスレーザー、ヤグレーザーを使い、コントローラーがあってそれがパソコンに繋がっているということはロボットのテクノロジーのかなりの部分が入っている」と座長の浅田阪大教授に言われてロボットの世界に足を踏み込んだ。

ご存知のとおり「Team OSAKA JAPAN」は2004年にリスボンで開かれたロボカップで優勝し、大阪はロボットの街として世界にその名を知られるようになってきている。
たった4年前に出来たロボット産業創出研究会の大きな成果。
その詳細は、是非本を買って読んでいただきたい。
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2007年03月11日

ハウス・オブ・ザ・イヤー  トップランナー方式の性能表示(下)

次は、新しい「認証制度」

「品確法」では「温熱環境」として4ランクで評価しています。
 4等級  次世代省エネ基準をクリアーしている
 3等級  新省エネ基準をクリアーしている
 2等級  旧省エネ基準をクリアーしている
 1等級  その他

これを見た時、私は「品確法とは付き合うのは止めよう」と決めました。
私共の供給していたR-2000住宅は5等級。
最近はQ-1住宅が登場しています。これは6等級。
パッシブハウスにいたっては間違いなく7等級。
それなのに、品確法は4等級で打ち切り。
結果として技術の進歩を抑圧している……時代錯誤の危険な法体系。
したがって品確法は無視することが消費者のためになります。品確法は消費者蔑視法。

最近、ルームエアコンでCOPが6を超えるものが続々と開発されてきています。
COPが6ということは、1の電力で6倍の電力に匹敵する性能を持っているということ。
つまり1の電力をテコにして、ヒートポンプで空気中から6倍のエネルギーを汲み上げているのです。まさにCO2削減の鑑。
最近のエアコンは、10年前に買ったエアコンとは異次元のもの。
消費電力は半分以下。
したがって、買い換えた方が数年間で元がとれます。

ルームエアコンがなぜこのように急速に技術の進歩を見せたのか。
それは経済産業省がとった「トップランナー方式」にあります。
各社で技術を競わせ「優れた商品が生まれればその性能を表示してよい」としたのです。
今までは「とりあえずCOP3の商品開発を当面の目標にする。この目標に到達したものを推奨品とする」という方式でした。
それが「COPは5でも6でも良い。良い性能が出たらそれを表示して良い」とした。
このため各社は英知を絞り、あっという間に世界一の性能アップに繋げたのです。
これを「トップランナー方式」といいます。

COPに関しては、技術的には限界がないと言われています。
今後ともすぐれた性能の出現が期待されています。
しかし一方で、COP偏重の問題点も指摘されています。
消費者がCOPの数値だけにとらわれて、排熱ドライなどの除湿機能を無視したり、小型のルームエアコンだけに焦点が集まり、より効率的なセントラル空調換気システムを等外視する傾向が見られることなど。

住宅の性能面で求められているのは、このトップランナー方式。
次世代省エネで打ち止めということであれば、日本の住宅でのCO2削減運動は頓挫します。国土交通省は経済産業省のツメの垢を煎じて飲むべし。
これは、非常に重要なポイント。
そして、涙が出るほど嬉しいのは、新しい認証制度ではこのトップランナー方式を採用してくれそうなこと。

新しい住宅の「年間燃費は何万円か」。
これこそが消費者の求めている省エネの性能表示。
Q値とかK値ではありません。
暖房費だけでよい北ヨーロッパでは平方メートル当たり何リッターの灯油を消費する住宅かを表示しています。
何回も書きますが、つい数年前までは3リッターハウスが合い言葉。
120u×3g=360g。 g当たり70円とすると年間のセントラル暖房費が25,200円。
それが、最近では北ヨーロッパ共通の目標として15kWh/uの家になってきています。
これを灯油に換算すると1.5g/u。
10月から5月まで暖房の欠かせないあの寒い国々で年間暖房費が12,600円。

つまり、日本でも年間冷暖房費+給湯費の合計が〇〇kWh/uで表示されることが理想。
少ないkWh/uで済む家をつくることこそが住宅業者の仕事。
しかし、システムや機器の種類、あるいは使用する電力が夜間電力であるか否かによって電気代が違ってきます。kWh/uで表示しても、現在のところ年間〇〇円で済む住宅だと断言できないのです。
シミュレーションは多用されていますが、実測のデーターがあまりにも少なすぎます。
暖房だけを考えればよい北ヨーロッパと、暖房+冷房+換気+除湿+給湯をまとめて考えなければならない日本とでは計算ソフトづくりの難しさは比較になりません。

そこで、とりあえず段階的に採用されようとしているのが「次世代省エネ基準との性能比較方式」
つまり、次世代基準の省エネ+給湯費を100とする。
これに対してA社のB商品は140の性能を持っている。
C社のD商品は175の性能値があり、E社の全製品が200である。という具合に。
私は段階的にこの方式を採用するのは、素晴らしいことだと思います。
そして数年以内に「年間冷暖房費+給湯費の合計が5万円です」と断言出来るようにしたいもの…。これは悲願。

この計算ソフトを開発し、認証するのがスマートハウジング委員会(坂本雄三委員長)です。これも後ろに「イン・エレクトリック」が付いています。
地場ビルダーにとって最大のメリットがあるのがこのスマートハウジング。
今まではR-2000住宅とか、Q-1住宅とか、限りなく無暖房に近い住宅などと言ってきました。しかし、制度的に保証されていたのはR-2000住宅だけ。後は業者の方で勝手に呼称してきただけ。業者のマスターベーションにすぎなかった。
したがって、消費者は本気になって付いてきてくれなかった。

ところが、スマートハウジングで認証され、そのロゴを使って良いということになると社会的に大きな信用が得られます。
しかも、認証料は20万円以下のはず。
となると、ビルダーからの応募が殺到すると考えられます。
最低1棟建てれば、その資料をもとに認証が得られ、商売がやりやすくなる。
となると、中には実用性のない高い性能の認証を取って、それを看板にしてロゴ以外の安いものを売る会社が出現してくる怖れがあります
現に「無暖房」という看板で、安物を売っているビルダーが存在しています。
いわゆる「羊頭狗肉」。これは絶対にダメ。
こんな輩が混じると、折角のスマートハウジング制度そのものがおかしくなる。

次世代省エネ基準に比べると最低でも150以上の性能を持っていて、価格もこなれていて、やたらな壁厚でなく、施工も簡単で、これこそ自社の商品として半分以上をそれに置き換えて売ってゆける自信のある商品を開発する。それを認証してもらうのが王道。

大手住宅メーカーは百貨店。これに対して地場ビルダーは専門店。
1つの商品に特化している業者は専門店として信頼出来ます。
何種類もの工法を売っているビルダーは、私は経験的に信用していません。営業が威張っている会社で信頼性に欠け、スマートハウジングの制度には馴染め難いビルダー。
せいぜい扱っても2種類以内でないと専門性がないという烙印が…。
小規模で何でもやるのはリフォーム屋さん。ビルダーではありません。

●●本制度はジェントルマンシップに則った制度です●●
これこそがハウス・オブ・ザ・イヤーのポリシーですと、伊藤滋委員長は高らかに謳っています。
ジェントルマンシップを持った会社であるかどうか。
この基準で、厳しくビルダーが選別されるのだろうと推測しております。


最初にお断りしたように、まだ細部が確定していません。
ここに記したのは、あくまでも手元にある資料を読んでの個人的な憶測であり、一見解にすぎません。思い違いや勘違いが多々あると思います。それを承知の上で参考にされ、着実に地場で売れる新商品の開発準備を進められることを期待いたします。
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2007年03月10日

ハウス・オブ・ザ・イヤー  なぜイン・エレクトリックになった?(中)

さて、もう少し具体的に内容を見てゆくことにしましょう。
まず、表彰制度。

「カー・オブ・ザ・イヤー」は誰でも知っています。その年に開発された自動車の中で最も優れた自動車。
受賞すれば箔がつき、売れ行きが違います。

その大向こうを張ろうというわけ。
そして「ハウス・オブ・ザ・イヤー」は単にデザインが良い、耐震性に優れている、バリアフリーである、ということでは選ばれません。
一番の選定基準は「CO2の削減に貢献する住宅であるかどうか」です。

CO2の削減に貢献する住宅とは燃費が少なくて済む住宅であることは間違いありません。しかし、必ずしも年間暖房費が少ない住宅とイコールではありません。
たしかに北海道とか東北では暖房費の比重が高い。しかし、関東以西では暖房費だけでなく冷房費のことも考えねばなりません。
そして、関東以西の一般家庭の統計を見ると想像以上に大きなウェィトを占めているのが給湯費。
これは全館空調の家庭が少なく、暖冷房費をケチって寒さや熱帯夜の寝苦しさを我慢しているためで、住宅メーカーの怠慢がもたらしている哀しい現象…。
しかし、当面は給湯が大きな課題になってこざるを得ません。

この給湯で大幅にCO2を削減するとなると、現時点ではヒートポンプのエコキュートの採用がベスト。
寒冷地ではまだ問題があるようですが、関東以西では「エコキュートを採用する」と割り切るしかないのが現実。
将来、家庭用燃料電池の開発が進めば、必ずしもエコキュートにこだわる必要はないでしょう。しかし、燃料電池の実用化はそれほど近未来に実現するとは考え難くなってきています。

つまり、関東以西の住宅で、現時点でCO2を削減する住宅というのは如何にヒートポンプを活用するかということになります。ヒートポンプのエコキュートを使い、COPの大きなヒートポンプエアコンを採用し、ヒートポンプ冷蔵庫と洗濯機を採用する。
これが最も手っ取り早いCO2削減策。
ということになると、このハウス・オブ・ザ・イヤー運動にはガス会社とか灯油会社は参加しにくい。
いや、ガスまでも包含して考えるとピントがぼけてしまう怖れがある。
そこで、割り切って「イン・エレクトリック」となったのです。
ハウスメーカーがそれを認めたと言うこと。

勘違いしないで下さい。
この「イン・エレクトリック」は電力会社が売り込んでいる「オール電化住宅」とは異なります。
IHヒーターは必ずしも推奨していません。
電磁波のことではなく、IHヒーターにしたからといってことさらCO2が削減されないから…。
オール電化ではなく「家電メーカーと住宅メーカーがより多面的に協力して共同開発を進めることによりCO2の少ない住宅づくりを推進しよう」という大義名分が出来、形式上は大連合が出来たということです。

CO2の少ない住宅の開発がメインであるならば、地場ビルダーにもハウス・オブ・ザ・イヤー大賞を受賞する可能性があるのでは……と考える向きがあるかもしれません。
残念ながらその可能性はほとんど無し。
なぜなら、いくら大幅にCO2を削減する住宅であっても、それが高価であったり、あるいはほとんど売れていなかったりしたのではハウス・オブ・ザ・イヤーの対象にはならないからです。

ハウス・オブ・ザ・イャーは「CO2削減の技術コンペ」ではないということ。
コストもこなれていて、ある程度幅広く消費者に受け入れられている商品でなければならない。
つまり、最低でも年間100戸とか200戸以上売れていないと、大賞の対象にはならない。
ということは、年間20戸とか40戸しかこなしていない地場ビルダーは、「お呼びではない」ということ。

大賞の可能性のあるのは大手住宅メーカーか、フランチャイズなどのチェーンということになってきます。
あるいは、北洲ハウジングのような広域地場ビルダーの場合には可能性があるかもしれません。
特化すれば新商品を200戸以上こなすことが不可能ではないからです。

とはいえ、最初から地場ビルダーが対象外というのは面白くありません。
全国的な大賞は大手に譲にしても、エリア大賞とか、地場大賞とかということで、優れた地場ビルダーを表彰するように働きかけて行きたいと思います。
しかし、まだ始まったばかり。
省エネという面で腰が引けている大手メーカーのアプローチが少ないかも知れません。また、今まで大手で本格的な省エネ住宅と呼べるのはハイムのシェダンだけしかなかったという実績を考えると、地場ビルダーが脚光を浴びるかもしれません。
脚光を浴びるようにハウス・オブ・ザ・イヤー委員会(伊藤滋委員長)に積極的に働きかけて行く運動も皆でやりましょう。

「ハウス・オブ・ザ・イヤー大賞の副賞はどれくらいですか?」と私は無粋な質問をしました。
「500万円ぐらいではないですか」との返事。もちろん未定。
しからば、そのカネはどこから出るのか…。つまりスポンサーは誰か?
おそらく全電力メーカーが参画することになるのだろうと推測します。

いずれにしろ、民間が中心になってCO2削減運動を展開しようというのですから、これは画期的な出来ごと。
この表彰制度が軌道に乗ることを心から祈念いたします。
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2007年03月09日

ハウス・オブ・ザ・イヤー  新しい性能評価制度と表彰制度(上)

(財)日本地域開発センターはさる5日に「ハウス・オブ・ザ・イャー」制度の新設を発表しました。
http://www.jcadr.or.jp/

この発表に関して、多くのビルダーの方から「もう少し詳細に、具体的な内容を教えて欲しい」というメールをいただきました。
事務局に聞いてみましたら、今は最終的に委員会のメンバーで認証・表彰システムの細部や、計算・評価ソフトの妥当性をチェックしている段階。
これらのチェックを4月中に終え、5月には詳細を発表する。このため、ビルダーが具体的に認定システムに参加出来るようになるのは5月以降になる予定、とのことです。
したがいまして、5月にならないと具体的な細部が判りません。
しかし、それでは意欲のあるビルダーの皆さんが、何をどのように準備をして待てば良いかが判りません。そこで、私の知っている範囲でこの制度の経緯と内容を書いてみたいと思います。
お断りしておきます。これはあくまでも私の個人的な印象であって、日本地域開発センターの正式な見解ではありません。くれぐれもその点を間違われることなく、準備を始めていただければとお願い致します。


(財)地域開発センターは、その組織図を見てみれば分かるように、伊藤滋会長、大西隆理事長をはじめとして学界を中心に、産業界とで組織されています。
そして、「都市再生特別措置法」や「景観法」に基づいて、地域の都市再生運動に指導的な役割を果たしています。

この地域開発センターが、2004年6月に「環境と暮らしにやさしい住まいとまちづくり検討委員会」を設置しました。
集まった委員は、
●学者
委員長の伊藤早大、坂本東大、射場本東電大、黒川計量研
●住宅メーカー
旭化成、積水化学、セキスイハウス、ダイワハウス、東急ホーム、パナホーム、ミサワホーム、三井ホーム、三菱地所ホーム
●設備メーカー
ダイキン、東芝、日立、松下、三菱
●電力他
東京電力、東北電力、三菱総研

委員会の名が示すように「環境にやさしいまちづくり、家づくり」について1年間で、2ヶ月に1度委員会を開催し、提言書をまとめるということでスタートしています。
委員長の伊藤滋先生はかつて小泉首相のブレーンの1人といわれ、専門は都市計画と都市防災。したがって「なんとかCO2削減に役立つ提案が行えたら…」という軽いノリでスタートしたのではないかと推測致します。
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2002/itou.html

当初、6回程度の会議でまとめる予定の報告書の内容が、途中から大きく変わり、なんと11回にもおよび2005年12月までかかっています。
その委員会の分厚い報告書を読んでゆくと、おおよその経緯が分かります。

まず、議論されたのが民間による住宅格付け機関の必要性。
政府による性能評価制度はあるが、消費者の負担が大きくてそれほど普及していない。
民間による格付け機関が多く出てくると競争原理が働き、消費者はその格付けを参考にすれば住宅選びが容易になる。ユーザーの立場に立った評価センターの出現が望まれている。

次は、次世代省エネ基準住宅の普及率の低さ。
大手住宅メーカーは、当時で60%程度が次世代省エネ基準をクリアーしていましたが、大きなシェアを占めている地場の弱小ビルダーは省エネ意識が低すぎてほとんど普及していなかった。とくに温暖地での在来木造にこだわるビルダーは無頓着。
これを解決するためには、大手メーカーが起爆剤になり、省エネ意識をビルダーに拡げて行く運動が不可欠。

そして、最初は単に住宅だけでなくまちづくりやリフォームまでも包括しようと欲張っていたが、とりあえずは新設の住宅だけに絞るべきではないかということに変わってきています。

そして、第4回目の委員会で初めて「ハウス・オブ・ザ・イヤー」構想が提案され、大方の共感を呼んだようです。
ハウス・オブ・ザ・イヤーを選定するためにも選定の基準がなければならない。
住宅各メーカーはそれなりに個々の消費者にシミュレーションをして省エネ性能を表示しているが、プランや開口部の大きさなどによって大きく異なるので、シビアな計算が出来ないでいます。
やはり住宅の性能だけでなく、給湯やエアコンなとの設備機器とリンクしてエネルギーの使用量、つまり燃費をアウトプット出来るように工夫すべき。
それと、同時にCO2の排出量とコストを踏まえて評価すべきではないかというふうに意見が次第に集約化されてきています。
ここで、国土交通省と経済産業省から個別に担当官を呼んで、ヒヤリングも行い、7回の会議を重ねてきています。

私が総研の吉田氏を通じて専門家の1人としてこの委員会に呼び出されたのは第8回目から。
この新しい制度を大手住宅メーカーだけでなく、地場の中小ビルダーにも普及させてゆくために参考意見を聞かせて欲しいということなのだろうと想像しました。

伊藤委員長から、まず私にあった質問は「中小のビルダーで、こうした性能評価制度や表彰制度に関心を持っている業者はどれくらいいるか」というもの。

「高気密住宅を手がけていて高い関心の持っているビルダー500社以上はいる。しかし、あまり無責任なビルダーを加えて、制度そのものの信用が落ちたのでは困る。実直なビルダーだけに限定しても200社〜300社は挙げられます。ただし、認定料とか登録料がどれくらいになるのかにもよりますが…」と答えました。

IBEC、いわゆる建築環境省エネ機構の個別認定を得ようとすると、百万円単位での費用がかかります。フランチャイズで一儲けをしょうという考えのないビルダーは、一般的に省エネ機構には無関心。
しかし、新しい制度が、10万円単位の費用で「自社の性能を認定」してくれるということであれば、私の知っている多くのビルダーは名乗りを上げるはず。

ほとんどのビルダーは、いずれかのフランチャイズなりボランタリーのチェーンに加入しています。そして、高気密・高断熱のノウハウをそれなりにマスターしてきています。そして、同業他社と差別化するために独自の旗を立てたいという強い願望が…。
しかし、IBECで個別認定を受けるには膨大な資料を揃えなければならない。費用もさることながらその手間暇がなく、それに精通した人材がいない。したがって、じっと我慢しているというのが現実。個々に聞いてみると素晴らしいアイディアが多々あります。

したがって、フランチャイズ・チェーンから抜けるということではなくて、併行して自社ブランドを持つという動きが怒濤のように起こるのではないかというのが私の推測。
ハウス・オブ・ザ・イヤーに応募するだけの力量と勇気はないけれども、客観的な評価のある自社ブランドが得られるということであれば、私なら飛びつきます。

まだ制度の内容が固まっていない時点で、私はこの制度は大手住宅メーカーだけでなく、地場ビルダーにとっても大きな武器になる可能性が高いと判断しました。
posted by unohideo at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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