2008年05月30日

「エコタウン信州茅野」を全部木構造でやったら?


大安の今日、エコタウン信州茅野の地鎮祭が行われている。
医療関係者でもないのに、なぜそんなに介護ホームに関心を示しているのか? という疑問があろう。
仰せのとおり医療に関しては全くの部外者の素人。
厚生労働白書によると、各種介護保険施設や各種共同生活施設のほかに通所介護施設を含めると全国に施設の数は12万ヶ所にも及んでいる。
そのほとんどがRC造だが、中には木軸や206による枠組み壁工法のものも若干ある。

今まで住宅では高気密高断熱化が叫ばれてきたが、介護施設では高気密高断熱化がほとんど叫ばれてこなかった。
高い建築費をかけてもそれに見合う効果が期待出来ない。費用対効果の関係で過剰投資を避けたいというのが関係者の一致した考え。そんなことより見栄えを良くし、食事を良くする方が訴求力がある。
こうした風潮に果敢に挑んだのが、何回も紹介している桜ハウス玉川。
ともかく、いきなりQ値が0.6Wというパッシブハウス仕様を採用した。
そして、この8月で丸3年を迎えようとしている。
この3年間で、同施設は介護施設における超高気密高断熱のメリットを見事に実証してくれた。

メリットの第1は、何と言っても暖冷房費の大幅な削減。
つまりコストパフォーマンス。
田代専務によると、延べ234坪の施設をパッシブハウス仕様にするために断熱材を外壁300mm、屋根400mmと厚くし、Q値1.3W弱の高性能サッシを採用し、熱回収率86%の熱交換機システムを採用したために2500万円(坪当たり約11万円)も余分にコストが膨らんだ。
しかし、今まで不可欠と考えられていた床暖房施設が不要になり、同時に差別化のために投じていた余分なデザイン費用などが削減出来、実質的なコストの上昇は1500万円高(坪6.4万円)に抑えることが出来た。

そして、このところの灯油の急激な値上がり。
このため、近隣の同規模の施設だと、推定値だが冬期150万円、夏期90万円、中間期120万円、計360万円もの暖冷房費がかかっている。
これに対して桜ハウスの年間暖冷房費は、昨年実績で38万円。
一昨年よりはかなり減少している。
これはコンクリートが乾燥してきたのと、パッシブハウス施設の使い勝手が職員、入居者ともに慣れ、要領が分かってきたことによる。

つまり、パッシブハウスにしたことで、年間暖冷房費が300万円はセーブ出来る。
1500万円のコスト上昇分は、単純計算で5年間で償却出来る。
このことを実証してくれた。これは貴重な資料。

パッシブハウスのメリットは、こうしたランニングコストだけにとどまらない。
●老人臭がない。
1.0回/時の熱交換による完全な計画換気で、介護施設にみられる老人臭がなくなった。

●ドラフトがない。
つまり、食堂であれ、個室であれ、浴室・トイレ・廊下・階段室であれ、温度差がなくなった。このドラフトのなさが老人に与える影響は大きい。バリアフリーの中でも最大のバリアが温度差。それを解消した効果は予想以上。

●トイレの回数が減り、水を飲むのが怖くなくなった。
ドラフトがないということは、余計な神経や筋肉が収縮しない。その負担が無い分、気分も身体も休まる。その結果として夜間のトイレの回数が極端に減ってきている。多い者だと一晩10回も通っていたのが平均して2回になってきている。
このため、今までは水を飲むのをできるだけ我慢していたが、水を飲む怖さから解放されてきている。
つまり、老人がのびのびと生活している。

●暖房設備がないのでメンテナンス費がかからない。
灯油の燃焼機具はメンテナンスが不可欠。換気のプレヒーテング以外に暖房設備がないので、メンテナンス費がかからない。

●外断熱だから構造駆体が長持ちする。
しかし、外壁の補修費が不必要だったということではない。ベースコートに軽い亀裂が入って修理をしている。ただ、外気に晒されていない構造駆体は、当然のことながら長持ちしてくれるはず。

パイオニアの果敢なトライによって、こうした数々のメリットが列挙された。

つまり、住宅以外の建築物でも、そこに人間が住み、呼吸しているからには超高気密高断熱のパッシブハウス仕様が非常に有効。
ということは、今までは単にデザイン性とか耐震性ということでしか考えられてこなかった多くの建築物に、高気密高断熱という省エネのメスを大胆に入れてゆかねばならぬということ。
その端緒となったのが介護施設。しかし、これからは保育園、幼稚園、学校、診療所や病院、公共施設に拡がってゆく・・・。

さて、そこで問題になってくるのが、超高気密高断熱ということが前面に出て来た場合、今まで公共施設では当たり前と考えられてきたRC造とか鉄骨造が、本当にふさわしい構造体であるかどうかという疑問。
ドイツの例などから、RC造に100mmまでの外断熱の有効性は確認されている。
だが、これが200mmから300mmとなった場合に、地震国日本では果たして耐久性、防火性の面で問題がないのだろうか・・・。
この検証がこれからの重要課題となってこよう。
そして、パッシブハウス建築物の場合は、スウェーデンなどで試みられているマッシブホルツなどの複合木構造の方が、中層建築物でもRC造より性能面、価格面で本命になってくるのではなかろうか・・・。
というのが、このところの私の最大の関心事。


RIMG5761.JPG

RIMG5757.JPG

上図は、すでに3月25日にこの欄で掲載したエコタウン信州茅野の平面図と完成予想パース図。
この中の戸建て住宅10棟と平屋のレストランは木造。
これらの木構造をQ値0.7Wから0.8Wで建築するノウハウはすでに存在している。
門型フレームやKMブラケット工法などを応用すれば、耐震性、耐久性、防火性で何1つ問題がないまでに条件が整備されてきている。
問題は価格。
それもサッシの性能と価格に絞られる。

そして、中層の介護施設やセンタービルと低層の共同住宅。
この建築物に求められるQ値を0.7Wから0.8Wと仮定する。
ヨーロッパでは、この数値を実現するには木構造の方が安く入手出来る。
しかし、日本では木軸、ツーバィフォー工法とも個々にアプローチしていて、木構造として全体的にアプローチをするという視点が不在。哀しいことに両者とも敵対関係にある工法と捉えている。
木構造の許容応力度を世界の水準にするという初歩的な運動すら、未だに見られない。

今までの構造強度の単価だけの単純比較だと、RC造とか鉄骨造が有利。
しかし、パッシブハウスという高性能建築物の費用対効果という観点から捉えるなら、木構造が俄然有利になってくるはず。
木構造に関係する皆さん。
口先だけで木構造の復活とか、日本の山林資源の保護と活用を叫ぶより、上図の介護施設やセンタービル、あるいは低層共同住宅を徹底的に解明して、「こうした木構造システムを採用すればこれだけの価格で出来る」というシミュレーションをやっていただけないだろうか。

ともかく、現時点の計画では戸建てとレストランは木造。それ以外はRC造。
そして、全体の建築費は環境省の「街区丸ごとCO2 20%削減事業」の補助金を入れて11億円というところ。
すでに着工が始まろうとしているので、エコタウン信州茅野では全ての建築物を木構造にすることは時間的に不可能。
しかし、これらの全ての建築物を木構造にしてゆくためにはどうしなければならないのか。開発しなければならない技術と課題は何か。そして価格的にどこまで可能性があるかという壮大なシミュレーションの裏付けのある提言がどうしても欲しい。

田代専務は「茅野での試みが成功すれば、全国50ヶ所ほどで同様なエコタウン計画を展開してゆきたい」と熱く語っている。
東大の安藤直人先生をはじめ全国の林産関係者、木構造関係者の英知が結集され、1つの叩き台を提示して頂くことが出来れば、日本の木構造は大きく前進する契機になるのでは・・・。
もちろん、個々の企業でも果敢にトライして頂きたい。トライするだけの価値がある客観条件が揃いつつあると考えるのだが・・・。

と、今回は身の程知らずの妄想発言。
この記事へのコメント
 
[ エコタウン信州茅野 ] のプロジェクトは、とても素晴らしい取り組み・挑戦だと感動しております。

平面図と完成予想パース図を拝見しましたが・・・
これから確実に全国へ「影響をあたえ広がっていく」であろう、このプロジェクトの発信源になる場所にしては、少々『物足りない』と感じました。

田舎暮らしの人が『直線的で合理的』な建物に囲まれ、多くの人間が密集する場所(都市部)などに行ってくると必ず「疲れやストレス」を訴えます。
この場所を利用する大半の人が、茅野・八ヶ岳山麓周辺の景観の中で生活してきたはず・・・
それなのに本当にリラックスして生活するのにはほど遠い『直線ばかりが目につく合理的なデザイン』の建物に見えてしまったのです。

そういえば、エコかつ楽しめる人間的な建築デザインを手がけた、画家のフンデルトヴァッサーがデザインした保養施設や構想はとても感動的でした。(あくまでも参考として)

話しがそれましたが、「魅力的かつ革新的な構想」である [ エコタウン信州茅野 ] の建物への「こだわり」は中身だけではもったいないのでは・・・
Posted by 自然の住人 at 2008年05月31日 15:05
突然ですが、コミュニケーションサイトを運営しております。
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重複してご案内になりましたらお詫び申し上げます。
なお、全く興味のない方は、削除してください。
失礼いたします。
Posted by magazinn55 at 2008年06月01日 20:31
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