2008年05月25日

ドイツのRC造の断熱改修  湿式外断熱の実績


日本では「耐震補強」が叫ばれている。
とくに四川大地震で多くの学校が倒壊し、空前の規模で若い命が失われた。そのニュースを見て、学校の耐震補強が大きく叫ばれている。
耐震補強のなされていない学校が、全国に40%あるという。
「道路建設より学校の耐震補強を優先すべし」という意見に肯かされる。

一方ドイツでは、大きく叫ばれているのが「断熱改修」。
戸建て住宅もさることながら、RC造の中高層アパートなどが主な対象。
とくに旧東ドイツ時代のアパートは、断熱面できちんとした工事がなされていなかった。
古い建物は、一定の期間がくると外装などの改修が必要になる。
どうせ改修をするのなら断熱まで改修をした方が、消費者と地方自治体と、おまけに地球のためになる!
ということで、サッシの取り替えとRC造の外側にEPSやロックウールを外断熱として施工をしている。こんな現場はザラで、ドイツでは珍しい現象ではない。

木造住宅の場合は、壁の中へ断熱材を充填する「充填断熱」が世界の主流。
それで不足すれば、壁の外側とか内側へ断熱材をプラスする。
木造で、外断熱しかやっていないというのは折角の空間のムダ使い。こんな馬鹿げたことをやっている国は、先進国では日本しかない。
実にお恥ずかしい話。

しかし、RC造の場合は充填断熱という器用なことは原則として出来ない。
RCの内側か外側のどちらかで断熱するしかない。
暖かい日本では、ごく最近まで断熱の必要性がそれほど叫ばれてこなかった。断熱材を入れたとしても内側に25mmとか、最大でも50mmの断熱材の施工。
ところが、寒いドイツでは内断熱だと結露が多発し、とくに冬期にカビ、ダニが発生してシックハウスの最大の原因に挙げられ、社会問題化してきている。
このため、早くから外断熱が採用されてきた。

そのRC造の「湿式外断熱協会(WDVS)」が、なんと50年前に設立されている。
そして、さる23日にNPO外断熱協議会主催のセミナーが開かれ、ドイツ湿式外断熱協会の専務理事ヴォルフガング・セッツラー氏が講演を行った。
この講演は、特別新しい技術情報はなかったが、今まで知らなかった側面を教えてくれて面白かった。先に取り上げたエネルギー・パス問題にしても、同協会の周辺からドイツの新しい情報がいろいろ発信されてくる。
木造住宅にあまり関係のない話だが、日本では公営・公団住宅をはじめとして古いマンション住宅や社宅などRC造の断熱改修が急がれている。
CO2の削減には、新築住宅もさることながら既存の古い「非断熱共同住宅」の改修がこれからのポイントになってくる。
ということで、今回はドイツの湿式外断熱に焦点を当ててみた。


RIMG5911.JPG

50年前に始まったドイツのRC造の外断熱での改修。
強固な保持金物をコンクリートに打ち込み、断熱材を施工し、サイデング等の乾式のパネルで仕上げる方法は各国で試みられている。
しかし、これでは建物の質感やイメージが全く異なってしまう。そして、コストは必ずしも安くない。
そこで、断熱材を接着剤で外壁に固定し、その上に薄いモルタルなどで仕上げる湿式工法が早い時期から試みられてきた。
ところが、最初の時期にはキツツキが薄いモルタルを破いて中の断熱材の中に巣をつくるとか、サッカーボールが当たって亀裂が生じるとかのクレームが続出した。

そうした試行錯誤の結果、現在行われて方法に集約化されてきている。
その方法とはRCの外表面をよく洗い、あらかじめ混合された接着剤を塗布して70mmから100mm厚のEPS、または板状のロックウールを施工する。
その断熱材の上にセメントを含まない樹脂系のベースコートを薄く塗布してグラスファイバーのメッシュを入れ、その上をもう一度ベースコートで抑える。
そして仕上げは着色自在な2mm〜4mm厚の塗装仕上げ。
この塗装仕上げのほかに、非凍結の疑似レンガによる仕上げ方法もある。

そして、現在では湿式外断熱として名乗りを挙げているメーカーの数は100社にも及び、認可を受けているシステムは350にも及ぶという。とても特許と言えるような状態ではなさそうだ。
低層木造用の木質繊維系の外断熱の場合も、薄いベースコートとグラスファイバーを使っている。このベースコートと仕上げの塗装は、湿度を透すようになっている。
グラスファイバーのメッシュが開発されたことによって、薄くても亀裂が生じなくなったことと、断熱材の種類によって透湿、非透湿の仕上げ塗料を使い分けられるようになったことが、ドイツで湿式外断熱が普及した大きな原因と考えていいようだ。

RIMG5913.JPG

さて、RC造における外断熱用の断熱材の比率は、上図の通り。
EPSが圧倒的に多くて82%も占めている。そしてもっと多いと思われたロックウールが以外に少なくて15%。残りの3%が木質系や真空パネルなど。
ドイツでESPが圧倒的に多いのは、防火に対する考え方が日本と根本的に違うという点に留意しておくべき。
ESPは自己消化性があるからといって、日本の防火や準防火地域の中層住宅にそのまま採用されるとは考えられない。おそらく、試験データを提出して認可を受けなければならないはず。
詳しく調べたわけではないか、ドイツでは防火認定をとらなくても、中高層住宅にPVCやウッドのトリプルサッシが使える。
そして、サッシの上部分に防火のカバーを取り付けるとか、界床部分に全面に縁を切る防火カバーを施工すれば良いとされているようだ。
日本では、何でも試験させられ、役人のOBが食ってゆけるようになっている。
消費者のことを考えて、良いシステムをオープンにしてゆこうという考えがない。
湿式外断熱はこうした防火の面で、日本の役所の対応という大きな壁にぶつかることになろう。

さて、その湿式外断熱工法の普及である。
2007年のヨーロッパにおける普及率は下記のようだったと専務理事は言う。

ドイツ        4000万m2
ポーランド      1000万m2
チェコ         960万m2
オーストリア      860万m2
スイス         360万m2
フランス        300万m2

そして、ドイツでは過去50年間に7億6000万m2の湿式外断熱を施工してきているという。これは新築と断熱改修の両方を兼ねた数字だと考えられる。
この湿式外断熱の施工によって節約されたオイルは2500億リッターにも及ぶという。これをユーロに換算すると1500億ユーロ以上(24兆円)というけたたましい数字になる。

こうした断熱改修された住宅は、今年の7月から始まる「エネルギー・パス」で明記されてゆく。省エネ性能の高いアパートとか戸建てが評価されるシステム。
先に見たように、このエネルギー・パスという制度は、消費者にとって最も分かり易い優れた省エネ性能表示システムだと思う。
このシステムの登場によって、日本の各省、各団体、研究機関から提案されていた省エネ性能表示システムは完全に影が薄くなってしまった。
日本で、エネルギー・パス制度が採用されると、断熱改修工事が一気に進むことになる。断熱改修とエネルギー・パス構想は表裏一体の関係にある。
このことを強調しておかなければならない。

ドイツの省エネ基準は過去30年間に以下のように変化してきた。
1977年     200kWh/m2
1984年     150kW/m2
1995年     100kWh/m2
2002年      70kWh/m2
2009年      50kWh/m2
2012年予想   35kWh/m2
2020年予想   15kWh/m2

つまり、2020年にはパッシブハウスの提唱している15kWh/m2という数値がドイツの省エネ基準になるというのである。
昨年のパッシブハウス実績はドイツ7000戸、オーストリア1600戸、その他400戸、計1万戸だったという。これがあと10年余30万戸から40万戸になるというのだ。
そして、省エネ基準が厳しくなれば、当然断熱改修の基準も厳しくなってゆく。
過去10年間に湿式外断熱の断熱材の厚みが、1998年の74mmから2007年の100mmへと26%も増加してきている。この動きはエネルギー・パス政策の実施によって、更に加速されることになろう。

RIMG5915.JPG

ドイツの新築住宅の着工量は10数年前に比べて半減してきている。その分、ゼネコンとか住宅業者が断熱改修の分野へ進出してきているのだと考えていた。
ところが、上図のように出身業種は塗装と左官が圧倒的。
これには意表を突かれた。日本の塗装屋さんと左官屋さん。ちーとは考えた方がいいですよ。
そしてゼッツラー氏は次のように叫んで講演を終えた。
「環境と消費者に貢献しながら利益をもたらすことが出来るのが断熱改修工事だ」と。
posted by unohideo at 11:42| Comment(1) | TrackBack(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑(機械工学における摩擦の中心的モード)の原理をついに解明。名称は炭素結晶の競合モデル/CCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象(機械工学における中心的摩擦現象)にかかわる広い説明が可能な本質的理論で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後48Vハイブリッドエンジンのコンパクト化(ピストンピンなど)の開発指針となってゆくことも期待されている。
Posted by 地球環境直球勝負(GIC結晶構造材料) at 2017年08月05日 01:13
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