2008年05月15日

山林の生産性  独力で大型機を導入した先見性(上)


森や木に関する情報はネット上にあふれている。
ちなみに、下記の2つにアクセスしただけでもかなりの情報量。

http://plaza.across.or.jp/~hsgwtks/index.html
http://www.wood.co.jp/index.html

しかし、こうしたサイトをいくら開いても、日本の林業の将来が見えてこない。
やはり、全体的な動向はとりあえず「森林・林業白書」(17年度)を読むのが早い。

http://www.maff.go.jp/hakusyo/rin/h17/html/index1.htm

白書は全体を網羅している。
そして、基本的なスタンスは「森林は緑の社会資本だから、国民全体がボランティアで関わりを持つべきです」と、上からのお仕着せの命令調が強い。
日本の山が荒れているのは安い外材が輸入されたからで、山林地主も林野庁も被害者だったというニュアンスが、根強く残っている。

日本の林業が衰退した最大の原因は、戦後の一時期のバブリーな成金で舞い上がり、コスト削減という経営努力を地主が怠ってきたことにある。
それにもまして大きかったのは、都会の消費者とビルダーの需要動向の大きな変化を知ろうとしなかったマーケティングの不在にある。スギとヒノキの角材さえ生産しておれば良しとする消費者無視の短絡的な姿勢が、傷口を拡げた。
消費者やビルダーは、外材に負けない強度を持ち、乾燥した性能と精度のよい構造材が、適切な価格でコンスタントに供給されることを願っている。
だが、地場の森林組合の供給量は極端に限られ、品ぞろいも性能もまちまち。
それこそ天然資源そのもので、諸外国の林産品のように木材が「工業化材料」になっていない。
未乾燥の木材を、有機野菜のように「地産地消」の掛け声で、いかにも新鮮で優れたものであるかのように装って売っている。

林業は産業である。
産業である以上、生産性を高めないと世界に太刀打ち出来ない。
戦後の農地解放によって、日本の農地も山林も細分化された。
白書によると、保有山林面積は下図のように5ha未満が34%、5〜20haが49%、20〜50haが11%、50〜100haが3%、そして100ha以上は3%にすぎない。
つまり、20ha以下が3/4以上を占めている。この細分化された私有権が障害になっている。そして村に住んでいない不在地主も多い。

RIMG5902.JPG

林業白書が言うように、森林は緑の社会資本であるべき。それなのに個人の私有権をのさばらせ、経営努力の放棄を黙認している。それが緑を破壊している。
山林所有者は、いたずらにボランティアや補助金におんぶするのではなく、まず社会的な責任を自覚すべき。そのことに対して、林野庁も地方行政も、政治家も一言も注文をつけていない。もちろん白書でも触れていない。
そして、票欲しさに補助金を注ぎ込む。
山林の生産性を上げるためには、私有権にある程度の制限を加えてゆかねばならない。

RIMG5900.JPG

白書では、上記の素材生産規模別の生産性を挙げている。
これによると、日本の平均は4.4m3/人工にすぎない。
残念ながら白書には、諸外国の生産性のデータが掲載されていない。
天野礼子著「緑の時代をつくる」の中で、銘建工業の中島社長は「オーストリアでは10〜15m3/人工で、スウェーデンやフィンランドでは場合によっては50m3/人工だ」と話している。つまり、ヨーロッパでは日本の3倍から10倍の生産性があるという。
また「オーストリアの森林面積は日本の1/6しかない。それなのに用材の生産性は日本とほぼ同じ1400万m3。つまり国全体の林業の生産性が日本の6倍だということだ」とも言っている。

同じようなことを田中淳夫氏は「森林からのニッポン再生」の中で次のように書いている。
「人工林面積は日本とドイツはほぼ同じ。ところが生産量は日本の3倍の13兆円にもおよび、山林業は巨大産業として存在している」と。
さらに、「日本では傾斜が急で機械化が出来ないと言っているが、ヨーロッパだって地理的な条件は同じ。それなのに、GPSを搭載した乗用車タイプの大型機械を導入し、雨天に関係なく仕事をこなしている」とも書いている。

また、東大北海道演習林講師の尾張敏章氏は「科学の森研修センター」2007年2月号のコラムの中で「スウェーデンの調査事例では、大型林業機械の生産性は1時間当たり16〜17m3。そして年間稼働時間は2300〜3000時間だという。このように極めて高い生産性と稼働率によって、生産コストを1000〜1800円/m3にまで低減することに成功してきている」と書いている。
これらの真偽は定かではない。学者や官民の研究者から正確な調査データの提出を期待したい。いずれにしろ日本の山林の生産性の低さにこそ問題が潜んでいると、公的に確認されつつある。

そこで、白書は生産性大きく左右する大型林業機械についてどのように記述しているかを見てみた。
16年度で国内の「高性能林業機械」は2726台になった、とある。
「その中で一番多いのがプロセッサで949台。あとはフォワーダやスィングヤーダなどが導入されている」と短い記述。
いきなりプロセッサとかフォワーダとか言われても、部外者には分からない。
そこでコマツフォレスト社をはじめとして林業用機械センターなどの情報を漁ってみた。

RIMG5889.JPG

まず、なんとか上図のプロセッサをさぐり当てた。
これは(1)枝払いと(2)玉切りと(3)造材の集積の3つの機能を果たすということがわかった。

RIMG5892.JPG

RIMG5894.JPG

フォワーダというのは、材を集めて積載し、運送する機械。
日本で使われているのは圧倒的にキャタピラが多いが、スウェーデンでは大型タイヤ付きのものも多い。たしかにタイヤの方がスピードが早そう。そして岩手県の調査団の報告書によると、下の写真のように急な坂道で滑らないようにチェーンを巻いている場合もあるらしい。

RIMG5896.JPG

そしてスイングヤーダと書かれているのを見て、瀬戸山玄著「丹精で繁盛」という本の中に出てくる山形県鶴岡市の農林業の加藤周一氏を思い出した。(独善的週刊書評の124号、今年の3月7日付を参照されたし)
日本に3%しか存在しない100haの山林の所有者で、農協を脱退して補助金を当てにしない米づくりもやっている。委託生産を含めて米づくりで1000万円の売上げ。
そして04年に独自で2000万円を投資してスィング・タワー・ヤーダを購入。自分で操作を覚え、毎年300本の硬くて丈夫なスギを伐採して売るのと機械を地元森林組合のメンバーに指導付きでレンタルしている分を併せて1000万円。計2000万円稼いでいる先見性の人。
米の産直をやっているから、てっきりホームページがあると思って「加藤周一」を捜したら文芸評論家の名しか出てこない。
やむを得ず森林組合へ連絡して電話番号を教えてもらい「写真を送って欲しい」と頼みこんだ。
「いいですよ。庄内総合支庁の森林整備課に私のところの写真が一杯ありますから、メールで送らせます。それに、昨年はさらに2000万円投資してキャリア・ダンプ、つまりフォワーダも買いました。生産性が一気にあがりましたよ。設備投資は短期間に償却出来ます。その気になれば林業は十分にやってゆけます」と力強い言葉。その意気軒昂さにうれしくなった。

スイングヤーダ.jpg

スイングヤーダ作業状況.jpg

キャリア.JPG

写真は上2枚がスィング・タワー・ヤーダで、下がキャリア。
このスイング・タワー・ヤーダというのは6つの多機能を発揮してくれる大型作業機。
まずプロセッサの(1)枝払い (2)玉切り (3)集積のほかに (4)伐採 (5)架線を架けての集荷もやってくれる(その時、スィングして材を集めることが出来るのでこの名がついている) (6)ヘッドを変えれば作業道づくりのパワーショベルにもなる。

遅ればせながら、日本の山でも本格的な生産性向上運動が始まっている。
posted by unohideo at 01:08| Comment(1) | TrackBack(0) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こっそり、遊びに来ました。

お時間がある時で結構ですので、宜しければ
私のブログにも遊びに来てください。
Posted by ゆかりん at 2008年05月15日 21:50
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