2008年05月05日

逆転結露  東京・福岡・札幌の屋根内湿度と調湿シート(下)


さて、壁の逆転結露に関しては、今までにいろんな実験が行なわれて、それなりのデータが揃ってきている。
しかし、屋根に関しては実験をやったことがない。また諸先生方の資料を拝見したこともない。
壁に逆転結露があるならば、当然屋根にあってしかるべき。
不思議なことだが、多分日本では誰も試験をやってこなかった。

ドイツのプロクリマ社は、実験ではなくフラウンホーファー研究所のWUFIというプログラムを使って、下図の東京の屋根内の温湿度状況を示してくれている。
この屋根構造は内側から石膏ボード→べバーバリア→繊維系断熱材→タイべック→通気層→合板→ルーフィング→屋根材という一般的なもの。


RIMG5850.JPG

この図を見れば、通気層があるので、真夏でも屋根断熱の温度は瞬間的には30℃を越すことはあるが、太い平均線を見ると30℃以内。
もちろんヒートブリッジになるランバーの部分は、こういった温度では済むまい。現しの隅タルキなどに触るとなかなかの熱さ。
そして、壁の中の湿度は5月から10月までは90%を越え100%に達する時があるが、太い平均線をたどってみると80%以内に納まっている。
この図を見ていると、屋根内の結露はそれほど心配する必要がないように感じる。


RIMG5859.JPG

ところが、福岡の湿度のシミュレーションを見ると、一年を通じて90%から100%に達している日が多い。そして、6月から10月までの5ヶ月間は平均湿度が80%を突破しているか若干下回っている。
尾崎明仁先生(現京都府立大教授)が提示なさっている夏期の逆転結露によるカビ・腐朽の予防基準・・・・相対湿度が80%以上で累積率25%以上という条件を満たしているのではなかろうか。
地球の温暖化が進めば、福岡地方はよりカビ・腐朽の条件が厳しくなってくるであろうし、やがてこのような状態が東京に及んでくると考えるべきだろう。
つまり、今は大丈夫でも30年先はどうなるか分からない。
200年住宅などと、寝ぼけたことを言っている場合ではない。


RIMG5856.JPG

さらにびっくりしたのは、上図の札幌の屋根内湿度状況。
この図をみると、福岡よりひどい。
北海道には梅雨がないと言われ、東京よりはるかに乾燥しているように感じていた。
ところが、この図では5月と6月を除けば、一年中屋根内の相対湿度の平均値の太い線が80%を越えている。
日本一の厳しさといっても過言ではない。
これは、WUFIというシステムそのものがおかしいのか?
あるいは、札幌の気象条件の入力時のミスなのか?
もしミスでないとすれば、札幌の屋根は夏期にはかなりの規模で逆転結露が起こっていると推測できる。
本当か?
そして、ここで気になるのは、札幌に多い無落雪の陸屋根。
急勾配の屋根は通気層をとるのも、棟換気の設置も容易。
しかし、陸屋根の換気は、それほど簡単ではない。
したがって、他人事ながら気になる。


こうしたデータを見ると「カビは不衛生ではあるが、病気や木材の腐朽、シロアリの被害など、直接的な影響を及ぼすことはない。したがって心配する必要は一切ない」と放って置いて良いものなのだろうか?
「壁内、屋根内のカビは、その死骸がダニのエサになっても、べバーバリアがあるので、ヨーロッパの冬期のようにダニがアレルゲンになるようなことはない」と割り切って良いのだろうか?
矢張り繊維系断熱材はダメだ。現場発泡のウレタン充填断熱にするか、あるいはEPSの外断熱に切り替えるべきなのか?

そこで登場してきたのが調湿シート。
ところが、今まで売られていたデュポン社の調湿シートはそれほど優れたものではなかった。

RIMG5845.JPG

図のように、ポリエチレンシートに比べて20%程度湿度を抑えてくれるという効能しかない。
このため、調湿シートと言われても、わざわざ関心を寄せるだけの価値がなかった。


RIMG5861.JPG

ところが、である。
ドイツのプロクリマ社の開発したインテロは、図のようにポリエチレンシートに比べて格段の差がある。
つまり、夏の壁内にほとんど湿気らしい湿気を貯めない。
つまり、透湿性があるということ。

イントロというのは厚さが0.2mmの白っぽいシート。
気密材だから空気は透さない。600パスカルの圧をかけてもびくともしない。
基本材質はポリエチレン・コポリマー。
それにポリプロピレンのメッシュが施されている。可変の分子構造が調湿を行うという。
そして最大の特徴は、冬期は石膏ボードの下にあって、壁内に入ろうとする湿気をシャットアウトし。夏期は壁内の湿気を部屋内側に放透する。
マジシャンのような高等な芸を見せてくれるのである。


RIMG5862.JPG

手品の仕掛けは、透湿抵抗値にある。
ポリエチレンシートは左上図のように、一定である。
これに対して、右上図のインテロは湿度の低い時は湿気を遮断し、湿度の高い時は湿気を透す。
つまり、透湿抵抗値が湿度によって変化する。
そのメカニズムを詳しく説明しろと言われても、文系の人間には無理な相談。
これ以上は、各自で調べていただくしかない。

しかし、いずれにしろイントロの出現で繊維系断熱材の冬期と夏期の壁内、屋根内、床内の結露の心配はなくなった。
これは本当に有難いこと。
だが、問題は価格。
かなり高いのである。
「タイべックの出現の時も価格は平米あたり800円と高かった。高いけど一番先に飛びついた。同じことで、そのうち日本のメーカーも開発して、使いやすい価格になってくると思う」(山口マイスターハウス社長)という意見がある。
しかし、プロクリマ社が特許をとったのが2003年というから、日本のメーカーがこれに匹敵する技術開発を行ってくれると、安易に期待することは出来ない。
なにしろ日本の建材メーカーは、ガラス業界以外は衰退する国内需要しか視野になく、ヨーロッパのメーカーのようなグローバルな視点に欠ける。
これは、建材メーカーを叱るより、よりすぐれた性能を求めない日本の住宅メーカーのイノベーションの努力不足を叱かるべきなのだと思う。
サッシにしろ、換気にしろ・・・。

あまり自虐的になってはいけない。
プレハブメーカーは国土交通省と一緒になって、世界へ技術輸出が出来るような「200年住宅」を開発してくれるかもしれない。
ゴールデンウィークの期間中だけでも、そんな夢を見ることにしよう。
posted by unohideo at 07:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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