2008年04月25日

いわゆる「逆転結露」解消への福音(上)


イーアイ主催の「ドイツの省エネ技術」の講演の中の「エネルギー・パス」についてはすでに紹介した。
もう1つ逆転結露を解消する「インテロ」という画期的な調湿シートの紹介があった。
これは価格が高い。しかし、なかなか魅力的な新素材。
単に、この新素材の効能を紹介するのではなく、日本における逆転結露問題に関する経緯や研究成果などを含めながら、解説してみたい。

夏期の逆転結露が大問題として提起されたのは20年前。
冬期の壁内結露を防ぐために、外壁の内側、つまり石膏ボードの下にポリエチレンなどの防湿層としてべバーバリアを入れる。
断熱材が薄く、気密性がそれほど良くない時は、結露は冬期だけに限られていた。
ところが断熱材が厚くなり、気密性能もR2000住宅のように1.5回転/h・50pa(相当隙間面積0.9cm2)以下というように飛躍的に向上すると、今度は夏期にべバーバリアの裏側に結露が生じる怖れが出てきた。
これを日本では、逆転結露と称している。

最初にそのことに気が付いたのは、部下の開発担当の若い設計士だった。
定常計算をさせてみたら、結露が生じるという。
この定常計算というのは、夏期外気温度が35℃、相対湿度が80%。そして室内音頭が26℃、相対湿度が60%の状態が10時間以上続くという設定での計算。するとべバーバリアの断熱材側にどうしても結露が生じてしまう。 
まだ、逆転結露という概念が普及していなかった時期。
そこで、断熱材メーカーの2、3の技術者に確かめてみたら、異口同音にやはり結露が生じるという。
なんとか解決の方法はないかと問うたら、石膏ボードの下に10mmの断熱性能の高い硬質ウレタンボード1号を施工すれば、東京では解決することが定常計算上明らかに・・・。

当時、アキレス社が石膏ボードの裏に10mmの硬質ウレタンをサンドイッチした複合建材を売っていた。
早速、町田のモデルハウスで採用してみた。
コンセントボックスやスイッチボックスからの漏気対策と、配管などのコーキングとジョイント部分をきちんと施工すれば、べバーバリアがなくても高い気密性が得られるということも分かった。
使える!
しかし、厳密に言うならば、これはツーバィフォー工法にとってはマイナスの作用を及ぼす。なぜならば、石膏ボードの裏に断熱材を入れるために石膏ボードの保持力が弱くなり、石膏ボードを耐力壁としてカウント出来なくなる。このため、価格面から考えてもあまり使いたくない。
だが、それ以外に方策がなく、R2000住宅の設計・施工マニュアルの外壁の仕様に、石膏ボードの下に10mmの硬質ウレタン1号を使った断面を書き加えた。

ところが、R2000住宅を建設大臣認定制度として発足させる間際になって、ツーバィフォー協会の梶山初代専務からクレームが付いた。
「夏期の逆転結露に対して、絶対に安全であるという確証のデーターを提出しなさい」と。
この梶山専務は建設省の指導課長、金融公庫の理事を経て協会の専務になった実力者。
ツーバィフォー協会は現在では三井ホーム協会と呼ばれているが、梶山専務の時代は三井ホームの横暴を完全に抑えていて、文字通り社団法人として指導的な活動をしていた。
なぜなら、ツーバィフォー工法のオープン化に中心的な役割を果たしたのはホームビルダー協会だったし、建設省がその運動を認め、公庫が標準仕様書をつくったからツーバィフォーが陽の目をみた。遅れてきた三井ホームは恩人の梶山専務や杉山英男先生には大きな顔が出来ない背景があった。

その梶山専務が、中小ビルダーに過ぎない私に逆転結露の保証書提出を求めた。
当時、私の所属していた会社と現マイスターハウスでは、個別に東洋大土屋研究室に2年間にわたって実物のモデルハウスで逆転結露の研究調査を依頼していた。そのことを専務は知っていて、調査内容をオープンに公開しろと迫ったということ。
だが、オープンしたくても調査途中の段階。東京では一時的に結露が生じても、問題になるようなことがなさそうだという感触は先生から聞いていた。しかし、正式に発表出来るような結論は出ていない。
それでも「なんとかしろ」とせがまれて坂本先生に泣きついた。
困った坂本先生は、空気線図に東京、鹿児島、那覇のMaxの●印をつけただけのものを出してくださった。これは、残念ながらそれほど説得力のあるものではなかった。
しかし、設計・施工マニュアルに硬質ウレタンボード併用の図があり、さらに坂本先生の空気線図を加えることで、やっと梶山専務のOKが出た。
梶山専務が逆転結露問題にこだわったのは、協会の有力会員社から強力なヨコヤリがあったからであろう。

このような経緯があって、R2000住宅が夏期の逆転結露問題に火をつけた。
その中でいろんな研究が発表されているが、私が一番注目していたのは建築技術2002年7月に発行された別冊「結露の完全克服間マニュアル」の中の尾崎明仁氏(当時北九州市立大助教授)の「夏期の逆転結露はあるのか」という論文。
先生は「逆転結露はあるか?」と聞かれれば「あると答える。ただし冬期と比べると発生割合は低い。ただし夏期結露はカビ・腐朽の原因になるため冬期より深刻な被害をもたらす場合もある」としていた。
そして、カビ・腐朽の予防基準として「相対湿度が80%以上の累積率が25%」、内部結露の予防基準として「相対湿度が90%以上の累積率10%」を許容限界値とするとした。
その上で、主要都市の西壁と北壁の基準値を超える数値例を挙げている。(この壁体は外側に通気層あり、繊維系断熱材、ポリエチレンフィルム、ビニクロス仕上げ。シミュレーションの詳細条件は省略)

都市      西壁          北壁
      80%   90%    80%   90%   
仙台                 27    12  
冨山         13      30    12   
前橋         12      25    11   
名古屋        14      31    15   
大阪         11      27    10  
広島         14      37    17  
福岡         15      35    17  
熊本         14      32    16
鹿児島        14      37    18      
那覇    30    19      52    28    

この表を見て不思議に思ったのは東京が入っていないこと。そして、仙台、富山、前橋が入っている。いずれも北側の壁にカビ・腐朽の可能性と壁内結露の可能性がある。そして温暖化が進めば、この範囲は次第に北上し、東京も危険地域に入ることは間違いなかろう。
温暖化は、単にCO2の問題や省エネの問題ではなく、壁内結露によるカビ・腐朽の問題でもある。そして、カビの発生はダニの発生にからむかも・・・。

こうした研究発表がなされていたが、私は危機感を感じていなかった。それは、ウレタンの現場発泡をメインとしていたため壁内結露の心配が皆無だったから。
しかし、ウレタンの現場発泡だと解体時はランバーと一緒に燃焼償却をするしかなく、いつまでも石油系断熱材に依存しているわけにはゆかない。やはり繊維系断熱材の研究とその逆転結露対策を考えてゆく時期にきているという印象を強く持つ。

今までの逆転結露に対する懸念は、建築技術2004年1月号で坂本雄三先生が書かれている下記内容が、共通の認識になっていたと思う。

「夏型の内部結露については、本州以南ですでに確認されているものの、晴天日の日中にしか発生しない現象であることも確認されている。そのせいもあって、この結露水は微量で、これが原因で木材腐朽の被害が発生したという報告はない。したがって、省エネ基準では夏型の内部結露防止のために特段の規定を設けてはいない。このように、結露と言っても実害がない微量の結露は許容するというのが平均的な考え。ただし、この実害という言葉があいまいで、カビは不潔であっても即病気を招くものでないから実害としては考えられていないとしているが、本当にこれでよいのかどうかはわからない」
posted by unohideo at 06:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
夏型結露について調べております。築10年のパナホーム「ソラーナ」を昨年末に購入し賃貸に出しています。8月初旬に1F和室天井から水滴が落ち出し天井を剥がし調べたら躯体鉄骨部と2F床下コンクリート板に大量結露していました。店子さんは40坪の家を24時間全室解放で23度の冷房をしていたそうです。当時の露天温度は22度程度ですが、和室は南・西に面し、更に2Fベランダにも面していますので22度の露天温度よりずっと高いのでは思います。。コンクリートに発生したカビを除去し原状回復工事をしましたが、抜本的解決の為にパナホーム技術部が1F天井に換気扇を設け天井裏の温度を室内と平均化することを考えています。
ただ、この現象は起きるべきして起こったと考えます。メーカーの製造責任の無さを強く感じています。
Posted by 安田 三枝子 at 2017年09月11日 03:45
はじめまして。福井市在住の大嶋昌治(おおしままさはる)と言います。聖書預言を伝える活動をしています。

間もなく、エゼキエル書38章に書かれている通り、ロシア・トルコ・イラン・スーダン・リビアが、イスラエルを攻撃します。そして、マタイの福音書24章に書かれている通り、世界中からクリスチャンが消えます。その前に、キリストに悔い改めて下さい。2020年を悔い改めの年にしてください。携挙に取り残された後のセカンドチャンスは、黙示録14章に書かれています。
Posted by 大嶋昌治 at 2020年08月14日 19:07
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