2008年03月20日

パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(中)



今日は祝日だということをうっかり忘れていた。
昨日までに経営数字や性能値について再確認をとっておくべきだった。
したがって、記述内容に間違いがあるかもしれない。その場合は、後で訂正させていただくということでご了解を・・・。

桜ハウス玉川の延べ234坪の当初建築予算は1億8000万円。坪当たり77万円。
これは、次世代省エネ基準の性能値でしか考えていなかった。
これがハンスさんのQ値が0.6Wのパッシブハウスに変えると断熱材、サッシ、熱交換換気設備などで予算が15%、2700万円もオーバーしてしまう。2700万円も余分にカネをかけたのでは、10年間での償却予定が12年間にもなってしまう。
介護ホームは社会奉仕事業ではない。採算性を無視しては存在出来ない。
そこで、性能面以外は、デザイン面も含めて徹底的にシンプル化とコストカット化が進められた。

まず代表的な性能だが、外壁の外断熱にESPボード300mm、天井にESPボード400mm。土間床で床にXPSボード100mm。
サッシはPVCでドイツからの輸入サッシで3-16-3-16-3のアルゴンガス入りのU値1.2W。それと綿半鋼機のスペーシアを使ったアルミウッドの1.25W。
熱交換機はスウェーデンから輸入されたプレヒーター付きの顕熱交換機で、熱回収率は86%。

(写真はスペーシシアを使ったトリプルのアルミウッド)

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介護ホーム業界も競争が激しい。
繁盛させるためには差別化をしなければならない。
どこで差別化をするかというと、1つはサービス。人手をかけ、高いサービスを謳い文句にする。
もう1つは経費、つまりランニングコストの削減での低価格の維持。
桜ハウスが狙ったのはこのランニングコスト減。
つまり、建築費を当初計画の1億8000万円に抑え、年間の光熱費を最小限にすることによって利用しやすい価格を維持する。

だが、2700万円にもおよぶ予算オーバー。これを予算内に納めることはとてもムリだと考えられた。
しかし、ほとんど暖房がいらないということであれば、今まで不可欠と考えられていた床暖房設備を不要にすることが出来る。空調やサッシには余分にカネはかかるが、しかしそうしたサッシや設備は最初からある程度予算が組まれており、差額を考慮するだけでよい。
ということで、厳密に計算するならば、差し引きでパッシブハウス化に要した予算は1500万円程度。残りの1200万円は、過剰なデザインや資材を見直すことで予算内に納めることが出来た。

そして、実際の省エネのデータはどうであったか・・・。
桜ハウスは、見てきたように床暖房やパネルヒーターなどの暖房設備を持っていない。
しかし、夏期の冷房のために各室や廊下などには補助空調として天井吹き出しのエアコンが設けられている。
しかし、昨年の冬はほとんどエアコンが使われることがなかった。プレヒーターで一番寒い時の外気温−20℃を0℃近くまで上げてから熱交換する。
それと内部発熱によって、山下研究室のデータによると1、2階とも室温は20℃から24℃に維持されている。
プレヒーター代以外に暖房費がかかっていない。

下の写真の(上)は1階に設けられた熱交換機。
(中)は熱交換機を開いたところ。右中央部のオレンジ色の部分がプレヒーターで、左上部分は調整盤。
(下)は2階の厚い吸音材の中に設置されている熱交換機。

RIMG5709.JPG

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そして、面白いのは内部発熱の比率。
電灯からが51%、熱交換器から37%、人体からが12%となっている。
本来は厨房などからの調理、冷蔵庫、テレビ、洗濯機などからの発熱もある。
それを別にして電灯、換気、人体だけでみると、冬期は電灯が暖房器になっていることが良くわかる。そして静かな老人からの発熱は意外に少ない。

このほかに、下の写真(上)のようにエコキュートを室内空間の中に設置している。
この効果も馬鹿に出来ない。それだけでなく(下)のように給水タンクも室内に設けている。これによる省エネ効果も大。

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そして、一番心配されたのが夏期の冷房費。
1、2階とも庇とスダレで日射を遮っているということもあって、ピークの8月の冷房費が2万円で上がっている。
このため、年間冷暖房費は約500万円の節減になるという。
ということはパッシブハウスにしたことに要した実質費用は1500万円だから、3年間で元がとれるという勘定。

今、ほとんどの介護施設は、石油の高騰による床暖房費の維持代に悩まされている。
何しろこの数年で灯油代が3倍近くに値上がりした。介護施設や病院などの利益のほとんどが、光熱費の高騰で帳消しになっている。

これに対して桜ハウス玉川では、ドラフトのない暖かさが人気を呼んで、賑わいを見せている。
温度差のない暖かさは、年配者には有難い。何よりのサービスであり、おもてなし。
温度差がないという最大のバリアフリー。
この有り難さを体験すると、もう昔の生活にはもどれない。
人生の最後にして、最高の環境が得られたのである。

「日本の最高級のホテルよりも快適だということです。この実体験が口コミで広がってゆきます。当初は、この施設の償却を10年間と考えていました。しかしおかげさまで、6年間で償却できるのではないかと考えています」と田代専務。

2年目の冬を越して、パッシブハウスのメリットを、桜ハウスは立派に証明してくれた。
今月下旬には、与野党の国会議員が揃って視察にくるという。

そうした反面、いろんな問題点も明らかになりつつある。つまり、トライしたことにより改善点がクローズアップされてきている。
次回は、そういった点を中心に記したい。
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