2008年03月15日

日本のパッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(上)


昨年秋に、信州大学山下研究室の「RC造の超省エネ介護施設の計測結果と消費電力の考察」という資料を入手した。
延べ773m2(234坪)の施設のQ値が0.6Wとあったのでびっくり。
気密に関してのデーターは書かれていない。
だが私の経験値から、相当隙間面積はおそらく0.3cm2以下だと推測している。
日本に現存する建築物の中で、最も省エネ性能に優れた建物。
それなのに建築雑誌や住宅雑誌は、どこも取り上げていない。
悪口は言いたくないのだが「建築ジャーナリストの皆さん方は、省エネに関しては方向音痴ですね」と憎まれ口の1つも叩きたくなる。

http://www.takaneh-support.co.jp/sakura_h/index.html

山下研究室の資料を読んで、間違いなく日本におけるパッシブハウス建築の第1号と呼ぶにふさわしい内容だということがわかった。
ただ、研究室の資料はネット上に公開されていないようなので、変わりに下記の綿半鋼機のプレス・リリースを紹介しておく。

http://www.rf.watahan.co.jp/pdf/pressrelease070530.pdf

この資料の中の月毎の「消費電力量」資料の出典先が明示されていない。
これは山下研究室のもの。
8月の数値が異常に低いが、これはこの施設が2006年9月1日にオープンしており、本来は8月のデーターは抹殺すべきもの。そして残念ながらこの図は、8ヶ月間のデーターしか網羅していない。
また、図5に暖房及び冷房負荷のシミュレーションが載っている。これによると暖房負荷がゼロで、冷房負荷のみかかっているように見える。
つまり「無暖房の家」と言いたいわけ。
しかし、熱交換機には2.2kWのプレヒーターが付いており、残念ながら「無暖房」と呼称するわけにはゆかない。
田代育夫専務は「最初からパッシブハウスとして計画した。ハンスさんの無暖房設備住宅のことを日本では無暖房住宅と呼んでいるので、それに倣ったまでのこと。パッシブハウスだと自覚しています」という。

ともあれ、こうした資料を見て、一日も早く訪問したかった。
だが、空調や換気に関しては、プロに同行していただかないと私の浅学で判断したら大きな間違いを犯す怖れがある。
ということで、3月初旬まで延びてしまった。

さて、いろんな資料を見て、私が一番疑問に思ったことは、誰が、何時、どんな動機で、日本で最初のQ値0.6Wというとてつもない性能値の建築物を建てようと考えたのか。
あるいは誰がどんな勝算をもって建てさせようと考え、どのようなアプローチを行ったのか、である。

R2000住宅の場合もそうであった。
モデルハウスを建てることはいたって簡単。
しかし、今までになかった高額の新しい商品を販売するのだから、キーマンとなる施主が登場してくれないかぎり、なかなか弾みをつけることが出来ない。つまりPR塔になる施主の存在が不可欠。損をしても見つけ出さないかぎり新商品の販売を軌道に乗せることは、絶対に出来ない。
幸い、R2000住宅の場合は、歌謡番組の司会でお馴染みの玉置宏氏の奥さんに、このPR塔の役目を買っていただけた。
R2000住宅業界全体として本当に有難いことだった。
そして、次第にサッシや空調換気、断熱・気密の資材が安く入手出来るようになり、なんとか軌道に乗りはじめると東電や鹿島建設をはじめとしたゼネコン、三菱電機や東芝、あるいはIT関係の技術者、海外駐在帰りの銀行マン、商社マンなどに面白いように売れ始めた。

パッシブハウスでは、最初は2棟ともQ値を0.7Wで計画した。
しかし、自分がビルダーではなくなったので、損を覚悟で請負い、施主にムリなお願いを聞いてもらうわけにはゆかない。一切の責任を負える立場ではない。
施主の意向やビルダーの都合、あるいは法規上の制約などで0.9W前後の性能値に落ち着かざるを得なかった。
それだけに、0.6Wの性能値を選んだ決断が、眩しく輝いて見える。
しかも、介護施設でのトライ。


RIMG5694.JPG

視察は、まず綿半鋼機のEFE事業部長と担当者による施設の南面外観から始まった。
上の写真のように、RC造には珍しく軒の出が長い。
これは当然のこととして夏期の二階への直射日光を避けるため。
そして、本体とは別に、後で施設の方で一階の南側にデッキを兼ねたウッドによるパーゴラを設けている。
夏、天井面にスダレを敷くとこれまた直射日光が防げる。
そして、RC造だから駆体の外側にEPSボード300mmを外断熱として施工。
この断熱材の厚みの奥にサッシが納まる。
大きな庇がついているのと変わらない。
これが夏期の日射を遮蔽し、同時にサッシの耐久性を高めるのに役立つ。
当たり前のことだが、いろいろ考えられている。
ただ、この彫りの深さをもっと立体的に表現出来たら、一段と素晴らしいものになったであろう。

説明を聞きながら、綿半鋼機が施設側を口説き落としたのだと考えた。
そこで、それとなく宮下営業部長に探りを入れてみた。
ところが「私共は、ハンスさんのセミナーに誘っただけです。このプロジェクトをやろうと決めたのは、どこまでもタカネヒューマンサポートさんです」という意外な返事。
ゼネコンとかデベロッパー、あるいは介護関係の人々の頭は古い。
固定観念で固まっており、守旧派の集団である場合が多い。
そこでまず、田代専務の出身を訊ねてみた。

RIMG5697.JPG

「私ですか。早稲田の理工学部を卒業し、大手企業や外資系で超電導とかEDSLの開発などに携わってきました。会社をやめて障害者のボランタリー活動を手伝っているうちに今の仕事に落ち着いたわけです。超電導というのは表面が70℃で−174℃にまで温度を下げる。244℃も温度差がある世界です。全くの高気密高断熱の世界。したがってハンスさんの話は何の抵抗もなく受け入れられました」と涼しい顔。

「私は行けなかったのですが、最終的には社長がスウェーデンやドイツを視察して、ハンスさんにお願いしようということになったのです。たしかに、建築に疎かったから決断出来たという面はあります。しかし、茅野の気象条件はスウェーデンとはほとんど同じ。したがって理論的には十分に可能であると楽観していました。けれども、あまりにも未経験なことばかりなので、途中でシミュレーションが間違ってはいなだろうか。ムリな計画ではなかっただろうか、と不安になったこともあります。ともあれ、このプロジェクトをやろうと決意したのは私共で、私共からハンスさんにお願いし、地元の設計事務所と建築会社、外断熱協会の協力を仰いだのです」

業界の常識にとらわれなかった英断が、知名度の低かった同社をして新しい歴史を開くスターに仕立て上げたのである。
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