アメリカのNo.1コンポーネント住宅メーカーの National Homes 社を訪れたとき、大変な失敗をやらかしてしまった。
「クレームをどのように処理していますか」と質問した。
これは大変に失礼な質問であることが、後でわかった。
National Homes社の代表は、怒ると言うより呆れ顔で答えた。
「日本では、クレームを前提に住宅を供給しているのか?」
残念ながら答はイエスであった。
今でも「住宅産業はクレーム産業である」と堂々と話し、恥を感じていない大企業のトップが日本に存在する。
日本の住宅産業は、今でもプレハブメーカーと国土交通省の官僚を中心としたメーカー志向型で、真に消費者志向型ではない。
品確法も「消費者のため」という装いをしているが、この法律は住宅局の役人の天下り先確保を目標に制定されたもの。参考にしたと言われるフランスの法律は、天下り機関が認定したりするようなものではなかった。
そして、消費者からカネを巻き上げることが目的のこの悪法を、プレハブ大手メーカーは容認した。
この品確法と表裏一体の形として住宅の保証機関が設立された。
天下り役人の受け入れ先として(財)住宅保証機構がまず認可され、民間のJIO(日本住宅保証検査機構)なども機能し始めてきている。
今までにくらべると一歩前進で、それはそれで喜ぶべきことではあるが、こざかしい役人の底意地が透けて見えるので、本心から喜ぶわけにはゆかない。
私は昔から建設省解体論者。
建築基準法という一つの法律で、北は北海道から南は沖縄までの住宅を一括して縛ろうという発想そのものが古く、現状に即していない。
なるべく早く道州制を採用して、エリア単位に建築基準や省エネ基準を定め、それを地域の住人と市のインスペクターで細かくチェックし、安全と環境を保全するというシステムに切り替えない限り、日本の都市と住宅は救われない。
とくに都市環境と美観がこれだけ破壊されたのは、中央集権的な権力のせいで、市民参加を第一義的に考えなかったことの悲劇。
ところで、アメリカの住宅の検査というのはどのようになっているのか?
日本の住宅保証機構よりは安くてマシなことをやっているのか?
それとも、National Homes 社のトップの発言はハッタリで、アメリカの検査も財団法人のようにホームビルダーに委託していて、日本と同様にクレーム産業そのものなのか?
アメリカは、州によって建築基準法が異なる。
全部の州の法律や実情を調べたことはない。
私が調べたのはカリフォルニア州の分譲住宅とアパート建築の場合のみ。
したがって、戸建て散在需要の検査制度がどうなっているかについては判らない。
多分、日本の検査機構よりはましな検査をやっていると思うが、これは若い建築家の皆さんが調べる課題だと言いたい。
バトンはあなた方の手に渡っているということを自覚いただきたい。
カリフォルニアで開発をやるには、当然のことながら市の建築基準法(Building Code)を調べ、ゾーニング・マップ(Zoning Map)で用途地域を調べなければならない。用途は次のように分けられている。現在は多少異なるかもしれない。
No.1 (1戸建て地区) 4〜5unit/エーカー
No.2 (タウンハウス地区) 10unit/エーカー
No.3 (アパート地区) 30unit/エーカー
No.4 (高層アパート地区) 45unit/エーカー
これに基づいて小さな開発は郡へ、それ以上の開発は特定行政庁へ提出する。
そして、カリフォルニア大きな分譲住宅のすべての住宅に、横10cm、縦25cm程度の検査用紙が柱や壁に取り付けられている。
それには、以下の22項目の検査項目がプリントされている。
そして、Inspectorのチェックがないと工事を進めてはならないことになっている。
Building
●基礎 ロケーション
●フォーム シートバック
Pour No Concrete Until Above Has Been Signed
●フレーム、ファィアーストップ、ブレーシング、ボルト
●ラス(内)、ドライウォール
●ラス(外)
Electrical
●スラブの埋設
●ラフ線架
●ラフ ライテング
●調整 パワー
Mechanical Fan C Ref Boiler
●燃焼と循環 エアコン、ダクト、ベンチュレーション、その他
●ロケーション クリアランス、アクセス
Plumbing
●スラブ埋設工事
●ラフ プランビング
●ラフ ガスパイピング
●敷地内下水
●浄化槽、洩れピット、排水フィルド
Final Approvals
●電気
●ガス パイピング
●メカニカル
●プランビング備品
●ビルデング
残念ながら、Inspectorから直接話を聞く機会がなかった。
したがって、それぞれの項目の詳細内容についても、また現場に足を運ぶ回数も、一人のInspectorが担当する戸数や範囲についても、検査費用や検査員の資格試験等々についても調査することが出来なかった。
しかし、日本のように配筋、上棟、完了という三回程度の検査でお茶を濁していないことだけは十分にわかった。
そして、現場監理のトップであるSuperintendentが口を揃えて言っていた言葉がある。
それは「Inspectorには公平さ、身辺の綺麗さが厳しく求められている。ホームピルダー側からハンカチの一枚でも、コーヒーの一杯でももらったことが判ると、即クビになる」というもの。
こうした厳しい検査と検査項目が、アメリカの住宅からクレームを追放してきている。
どなたかもっと詳細を、継続的に調査してくれませんか……。

