2008年12月20日

日射取得と日射遮蔽   ドイツパッシブハウス調査(14)



NHKの国際部を若くして退き、ミュンヘンに移住し、ドイツに関する著書を10冊余書いている熊谷徹氏。10年前に出版された「住まなきゃわからないドイツ」は面白かった。
曇天か雨の日が続き、やたらと夜が長い冬期。
ヨーロッパでは冬が雨期。春がくるということは雨期があけるということ。
春を迎えた時の人々の喜び。
太陽に対する飢餓状態から解放され、裸で日光浴をする女性。
表日本に住んでいる日本人には、ドイツ人の太陽に対する焦がれる想いが理解出来ない。

春や秋は、目一杯に太陽の光が射し込むように、やたらとガラス窓の大きな家が多い。
どんなに高性能な4-16-4-16-4のトリプルで、クリプトンガス入りのガラスであっても、熱貫流率(K値)は0.5Wが最高だろう。見てきたような0.15Wの外壁に比べると、熱損失は3倍以上と大きい。
パッシブハウスという15kWh/uの断熱性能を追い続ける合理的精神の持ち主であるドイツ人。
当然のことながら出来るだけ開口部を小さくするはずだと思うのだが、そうはゆかない。太陽教信者たちは、競って大きな開口部を求める。これはもう、宗教的というしかない。
つまり、太陽の光に対しては理性が働かない。
だだっ子のように、むやみとガラスをねだる。

そして、ドイツの戸建て住宅の最大の特徴は、南側にではなくて西側に大きな庭を設け、バルコニーやベランダを設けていること。
ヨーロッパのサマータイムは、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までの7ヶ月間実施される。正に、太陽の季節。
この季節、サラリーマンはいそいそと帰宅し、西日を浴びながらベランダでバーベキューをするのが最大の喜びであり、楽しみ。
ドイツ人は夕日族でもある。


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フランクフルト市の郊外に建てられていた高校教諭のW邸。
宅地そのものの形状が日本とまるっきり違う。道路づけが東側で、東西に長い敷地。南北は日本ほどではないが、かなり密集している。
したがって、プライバシーを守るということもあってか、写真のように右側の南面には開口部らしい開口部がない。主な開口部は妻面の西壁に付けられている。
日本人から見れば摩訶不思議な家。
そして、奥まった西側には広い庭がある。
そこに、奥行きが5メートルはあるウッドデッキが敷かれ、バーベキューが出来るテーブルと木のイスが置かれている。
そして、これまた長さが4メートルはあろうかという日除けが付けられている。これはご主人が日曜大工店から60万円で買ってきて、自分で取り付けたという。

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こんなふうに、ガンガンに西日が入る窓だから、夏場のことが心配になる。
どうしているのかとサッシをよく見たら、全てのサッシがブラインド付きであった。
北側のトイレの小さな窓にも…。
このサッシは、一番外側に単板ガラス入りのアルミサッシがついている。
その内側に手動のブラインドが内包されている。
そして、逆光で見にくいが、内側にアルゴンガス入りのペアのウッドサッシが入っている。
最近、この種のサッシがスウェーデンでも造られているらしい。スウェーデンホーム・ジャパン(スウェーデンハウスではない)が、これと同じようなサッシを採用している。

このサッシの良いところは、外がアルミサッシだから雨風による退化とかメンテナンスの心配が少ないこと。そして、全てブラインドを内包しているから、直射日光を遮ることが出来る。
そして、内側に高性能のウッドサッシが入っている。
外側のサッシがアルミの単板ガラスだから、ブラインドで反射された熱は、こもって内側のウッドサッシ側に伝わるよりも、熱伝導率の良いアルミと単板ガラスの方へゆく。
そして、足立博氏の受け売りだが、もし内側のウッドサッシの熱貫流率が1.0Wであるならば、アルミの単板ガラスを含めた全体のK値は0.85W程度になるらしい。

この一体型のサッシではなく、関東以西では内側のウッドサッシだけが内側に開くことが出来るサッシが欲しい。それがあると、夏の夜や中間期に外気温度が低くなった時、内側のサッシを開けておくと内部の熱が単板ガラスのアルミサッシから逃げてくれる。
換気のバイパス機能と同時に、放熱可能なこのようなサッシが開発されたならば、東京以西の冷房負荷がかなり大幅に減らすことが可能。

夏の夜、外気の温度が下がれば窓を開ければいいと言うワカランチンが未だにいる。
外気の絶対湿度が13g以下の時以外は、絶対に窓を開けてはならない。
夏期に27〜28℃の設定温度で生活をするためには、絶対湿度が12g以下であることが望ましい。高性能のペアガラスで逃げない熱を逃がすには、うまい考えだと思う。
また、これだと都心に多い準防地域でも、アルミサッシに網入りガラスを採用することでクリアーすることが出来る。まさに一石三鳥。
しかし、日本の大手サッシメーカーは、生理があがった女性のように新しい命を生む能力を完全に失っている。したがって相手にしていたのでは日が暮れる。パッシブハウス研究所のファィスト博士を真似て、ビルダー自身が中小メーカーに働きかけ、こうしたサッシの開発を促してゆく必要があると思う。
サッシでベンチャー企業を興したいというサムライを募集中!!!


P1000422.JPG

話が脱線した。
これはバウマンさんの新居。
13kWのサンヨーの太陽光発電が搭載されている。
政府の高価格での買電政策で、昨年は110万円の売電になったという。設置費の840万円は、8年以内に償却出来る勘定。200年住宅よりも、この政策の方がメリハリが効いていてはるかに効果的。
そして、手前側が南面で、左側の西面にバルコニーとベランダがついている。
そして、全ての窓にアルミのブラインドシャッターが付いている。
20年前に玉置宏邸のR2000住宅関東地域第1号に採用した。だが、日本ではいつの間にか姿を消してしまった。厚い壁の中に、ブラインドシャッターのボックスを内蔵させるのがコツ。このために非常にスッキリ出来上がっている。それだけに懐かしく感じた。

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これは、ミュンヘンのモデルハウス。
直射日光が当たる全ての窓にブラインドがついている。
そして、収納ボックスが現わしになっているが、デザイン的にうまく処理している点を見て貰いたい。どこかのメーカーの野暮ったいものは絶対使いたくないが、これだったら採用してもいい。

P1000473.JPG

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しかし、他のメーカーは、ほとんどが収納ボックスを厚い壁の中で処理していた。
サッシの外側で日射を遮蔽している。

日本の昔の住宅は、ほとんどが雨戸付きであった。
3ミリガラスで、台風が来たらたまったものではない。したがって、雨戸が木の建具の場合には不可欠だった。
それが、網入りガラスが登場したり、遮熱のペアガラスが登場したりして、いつの間にか雨戸はデザイン的にダサイという風潮になってきた。
そして、私などにも責任があるが、プロバンス・スタイルということで、ケラバの出の小さいデザインを普及させてきた。さらに、近年のシンプルモダンの流行。
その結果、現在の日本の住宅は、ことごとくと言っていいほど日射遮蔽を無視している。

今回のドイツの旅で、日本よりも日射の弱いドイツが、「ここまで日射遮蔽にこだわっているのか」と打たれた。もっとも、これはドイツの家にエアコンが入っていないせいでもあるのだが…。
夏が乾期のヨーロッパでは、相対湿度が低いので直射日光を遮りさえすれば、エアコンはほとんど不要。そのエアコンの設置費とランニングコストに相当するのが外付けのブラインドだと言えよう。

日本のエアコンの性能は世界一。香港へ行ったとき、タクシーはほとんどドイツ車なのにびっくりした。しかし、エアコンの効きが悪いのに呆れた。同じ思いをした人も多いと思う。
トップランナー方式で、日本の個別エアコンのCOPは6.5を超えるものが出回っている。
その性能にオンブして、われわれ住宅屋が日射遮蔽をサボってきた。アメリカやカナダのホームビルダーも軒並みサボっていたので、それが当たり前で許される行為だと考えていた。

ドイツで、そのことを深く、痛く反省させられた。
posted by unohideo at 07:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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