2008年11月10日

パッシブハウス研究所(上)   ドイツパッシブハウス調査(6)


パッシブハウスというのは、今から17年前の1991年にヴォルフガング・ファィスト博士がフランクフルトから15キロほど南にあるダルムシュタット市に建てた写真のタウンハウスのモデル棟をもって嚆矢とする。

P1000094.JPG

このタウンハウスは南面から見れば地下室を持った3階建てだが、屋根が片流れになっていて北側は下の写真のように2階建て。
タウンハウスだから左右には窓がない。
開口部は出来るだけ南面にとって北面は最小限にしているのは、ヒートロスを出来るだけ小さくしようとする知恵。
そして、北側の外にはガラスのカーテンウオールが付けられていて北風の侵入を防いでいる。
これは最初から付いていたかどうか…?

P1000098.JPG

そして、屋根には藤森照信先生が自慢げに見せびらかしている謳い文句の草が植わっている。
このモデル棟だけでなく近隣のタウンハウス10数棟の全ての屋根に植えられている。
屋根だけではない。壁にも蔦が這っていて、紅葉が美しい。
これを見るとタンポポハウスとかニラハウスは、二番煎じもいいところで、立派な物真似発想であることがわかる。

P1000097.JPG


このモデル棟で、ファィスト博士は何をやろうとしたのか?
出来るだけ暖房費のかからない家を造ろうとした。
だが博士は、決して「無暖房の家」を造ろうとは考えなかった。
暖房設備が一切ない家は、造ろうと思えばいくらでも造れる。けれども万が一の寒気のことを考えると断熱材の厚みは非常に大きなものとならざるを得ない。コストが2割はアップしてバカ高になってしまう。
したがって、そんな万が一の事態の対応する過剰投資はやめて、最小限の暖房設備は用意する。そして、年間暖房費が15kWh/uで上がる家づくりを目指した。
コストシミュレーションをやってみたら、それが最良だという答えが出た。非常に現実的で、説得力のある対応である。
「無暖房」などという消費者を欺くような言葉は、学研の徒としてのファィスト博士は絶対に口にしない。
それがなんとも頼もしく、かつ信頼が出来る。

しかし、今から17年前に年間暖房費が15kWh/uの家をつくるということは、資材の調達の面ではとんでもない難問が待ちかまえていた。

まず、屋根と壁のK値を0.15Wとした。
これは木軸だと5寸角柱の外壁に150mmの高性能グラスウールを充填し、外側に100mmのロックウールを施工すれば得られる。
ツーバィフォーだと206の外壁に140mmの高性能グラスウールを充填し、KMブラケットで100mm厚のロクセラムというロックウールを外断熱として併用すればほぼ近い数値が得られる。つまり現在では250mmの断熱厚でこの0.15Wという熱貫流率が簡単に達成出来る。
300mm以上の壁厚は、現在では必要がない。
したがって、断熱に関してはファィスト博士もそれほど苦労はしなかったはず。

問題は換気とサッシ。

換気に関しては、アース・チューブ方式を1991年のタウンハウスで採用している。
一番上の写真の中央部にカギ型の2つの「「という形を反転した排気口が見えるが、この写真では残念ながらアース・チューブに関して十分な説明が出来ない。
そこで、前回紹介した高校教諭のW邸を例にとって説明させていただくことにする。

DSC00795.JPG

W邸の庭の南面に上の給気口が見える。これは冬期用の給気口。
ここから吸い込まれた空気は、地下室の下に敷設された30メートルのパイプを通って地下室の機械室へ運ばれる。
30メートルの深地下パイプを通っている間に氷点下だった空気が10数度に暖められるという地熱利用システム。
冬期はそれでよい。だが、夏期だとパイプの中で結露が発生してしまう。ジャブジャブの水たまりが生じてしまう。
このため、夏期は別の給気口からダイレクトに空気が取り入れる。下の写真の南側の壁際に設けられている給気口がそれ。

P1000048.JPG

さて、こうした冬期用と夏期用の給気パイプはどのように緊結されているか?
下の写真は熱交換システム。
アース・チューブで暖められ空気は、熱交換でさらに暖められて各室へ給気される。

P1000065.JPG

そして、わかりにくいが、下の写真の赤い装置が冬期と夏期の給気の自動切り替え装置。

P1000066.JPG

この自動切り替え装置をもってしても、このシステムではどうしても結露の発生を完全に避けることが出来ない。そのため、換気装置の裏側に結露水を吸い上げるポンプの吸い上げ口が付いている。これで結露対策は大丈夫。
そして、熱交換された排気は、東側の道路沿いに設けられた排気口から排気される。

P1000050.JPG


日本の換気メーカーの製品に見られるような、給気口と排気口が30cmという短距離で隣り合わせというようなバカ現場は、ドイツでもカナダでも決して見られない。
出来れば、給気口と排気口は別の壁面で行うように指導している。
それが難しい時は、最低でも2メートル以上の間隔をとるように義務付けている。
これが世界の常識。
ところが、かつての寡占メーカーであった三菱電機とナショナルの給排気口は、仲良く並んで設置されている。排気された汚れた空気は、ショートカットして給気口に必ず吸い込まれる。
小学校の低学年でも分かるロジック。
こんなバカげた設置を許している日本の基準がおかしいと学会の席上、某大学の先生に詰問したら「問題ありません」と言われてしまった。あえてその先生の名を言わない。どの先生か犯人探しをやって欲しい。そして、徹底的に吊るし上げて欲しい。
換気メーカーべったりの、日本の換気学界は狂っている。

パッシブハウス研究所では、つい最近まではパッシブハウスである以上は、このアース・チューブを装置することを絶対的条件としていた。
ところが、熱回収率の高い換気装置が開発されるようになって、アース・チューブがなくても、熱回収率90%以上の換気装置が付いておれば、パッシブハウスとして認定するようになった。大きな一歩前進。

パッシブハウス研究所で、熱回収率が90%以上と認定された機種がすでに5〜6点ある。
そして、研究所の中には、熱回収率92%のPAUL社のシステムが見本として展示されていた。

DSC00942.JPG


寒冷地においては、熱回収換気システムは絶対的な条件。
ところが、北海道などでは未だに第3種換気を前提に考えていたり、部分的に全熱交換機を採用したり、換気装置を別にしてQ値を計算したり表現するというおかしげなことが横行している。
ドイツの生真面目なパッシブハウスを見ていると、日本のメーカーやビルダーの往生際の悪さが、どうしても気になってくる。
posted by unohideo at 06:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして^^
通りすがりにお邪魔させて頂きました^^ 応援ポチッ!!
宜しければ私のところにも遊びに来てくださいね♪
Posted by @音三昧 at 2008年11月23日 18:26
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。