2008年10月30日

進んだ建築物理学、遅れた木質構造学?  ドイツパッシブハウス調査(4)


我ながら、呆れた題をつけたもの。
無知の強みで、勝手なことを言わせてもらう。

有名なドイツのフラウンホーファー建築物理研究所。ここは、驚くほどの人材を抱えている。
正確な数字は忘れたが、万を超える単位。
日本の独立行政法人建築研究所や北総研などは、ノミのような存在にしか見えない。
そのフラウンホーフォー研究所が「建築物理」という言葉を、堂々と使っている。
人真似が人一倍好きな日本人だが、まだ「建築物理学」という看板をかけている大学も、研究機関もない。(はずだと思う)

ともかくエコロジーとか、温熱環境とか、建築生態学などではドイツは世界のトップクラスにあることは間違いない。それらを総称して「建築物理学」と命名したのだろうと素人は想像する。
しかし、ドイツには地震がない。
細い柱のRC造の代表的な建築物を案内されて、こんな建築が許される国だから構造力学が発展しないのは当然のことだと今まで納得してきた。こと構造に関してはドイツには学問が存在せず、学ぶべきものは無いと考えていた。
その思いを、木造住宅の56棟の展示物を見て再確認させられた。
それが、表記の呆れた題となったという次第。

ご存じのようにドイツの国土面積は、日本の38万km2とほぼ同じの35km2。
そして、森林面積は日本の2408万haの半分以下の1074万ha。
この数字から平地が多くて、小さな森林国にすぎないと捉えがち。
ところが、ドイツの森林の伐採量、つまり素材の伐採材積は日本の約3倍だという。
どちらが森林大国?
長沼隆・横井秀一氏の報告によると、2005年のドイツの製材量は2000万m3で、これはアメリカ、カナダに次いで世界第3位だという。
針葉樹だけの製材量でも、ドイツはスウェーデンとヨーロッパのトップの座を競っている。つまり、ドイツは木材大国なのだ。

それが、今までRC造とか木骨レンガ造などの横行を一方的に許してきた。
たしかにRCとかレンガ造は蓄熱という面では優れている。
だが、熱伝導率がはるかに低く、高断熱住宅時代にはふさわしくない。
3リッターハウスとか、パッシブハウスという時代がもたらした「省エネの大合唱」に呼応して、木造住宅が大幅に見直されてきているということだろう。
それなのに、学問体系は進んでいるのだろうか?
建築物理学の中には、当然のことながら木質構造力学が加わらなければならない。
ところが、私の知っている範囲では、そうした木質構造の学者や専門家が日本へ紹介され、講演を行ったという話を聞いたことがない。

というよりは、日本が関心をもっていなかったのだと思う。
日本の林業関係者は、かなり頻繁にドイツを訪れ、黒い森などを訪ねて林業だけでなく木材加工産業、木造住宅業、家具産業など関連産業のリポートを書いている。林業関係者は、決してドイツの木材産業を等閑視していない。
しかし、日本の木質構造関係の学者先生は、ほとんどドイツを訪れていない。
私が親しくお付き合いをさせて頂いた故杉山英男先生やそのお弟子さんの野口、菊池、鈴木、安村などという錚々たる顔ぶれの諸先生が、ドイツの木質構造の勉強に出かけたという話は聞かない。
杉山先生亡き後の大黒柱である安藤直人先生も、訪れておられないはず。
つまり、日本の木質構造界にとっては、ドイツの木質構造は研究の対象にならないと、無意識のうちに敬遠されてきた。新井信吉さんからも、北欧の話は何度か聞かされたが、ことドイツに関しては寡黙であった。

だからドイツの木造住宅に関する情報は、林業視察のついでに語られるものしかなかった。この資料不足にはいささかイライラさせられた。
ただ、その中にあって、唯一救われたのが「www.germantimber.com」。
これによると、無垢の木材に関してはKVHという規格を持っているらしい。
含水率は人工乾燥で「15%±3%以下」。
プレーナー加工と面取り加工が施され、提供される材の長さは13メートルまで。
そして見え隠れの部分に使われるのはKVH-Siといい、現しで使う材をKVH-Nsiという。
これは、柱材に使われる規格らしい。

一方梁材としてはデュオ梁材とトリオ梁材がある。
写真で見る限り、木目模様の違いとしかわからない。最大含水率は15%までで、18メートルまでの長尺が用意されているのは嬉しい。
見え隠れと現しに使う区分は、柱材と同じ。

無垢材とは別に厚板、または厚板ラミナを4枚接着した集成材の規格もある。
含水率が「10%±2%」というのが嬉しい。
中堅住宅メーカーの工場で「含水率はいくらか」と聞いた時、即座に「12%以下」と答えてくれたのはウソではなかった。
こうした基本的なことが分かっただけで、ドイツの木質構造材は、日本の軸組工法よりも製品の品質レベルではるかに進んでいることがわかる。
しかし、それが木質構造学のレベルに到達しているのかどうか?

ここまでは、調査に出発する時点で分かっていた。
しかし、柱や梁に使われるランバーの寸法体系。スタッドや梁、たるきの寸法とピッチの関係。用いられているスパン表。その根元となる木材の短期荷重の許容応力度。使われている樹種とグレーデングの方法。構造的な特徴や使用金物の種類。継ぎ手や仕口の構造……ともかく分からないものばかり。
しかも今回の調査目的は木質構造ではなくてパッシブハウス。
木質構造はあくまでもついでの項目。
したがって私の報告には勘違いや思い違いが多いはず。しかし、ともかく問題点を提起することが何よりも大切だと考える。このため、恥を覚悟の上で「ドイツの木質構造」を語ることにする。

ドイツの木造住宅に使われている主な樹種は、人工林のトウヒが最も多く、ついでモミ。ブナやタモの人工林もあるという。
天然林の主要樹種はモミとブナ。このほかにアカマツ、カエデ、ナラがある。
住宅工場では北欧材も使われていた。一部だがアメリカのダグラスファーや日本のカラマツも使われているという。それぞれのグレーデングについては分からない。

そして、木造住宅は「木軸工法」と「壁工法」に二分される。
ミュンヘンの56棟のモデルハウスでは、やや壁工法の方が多いように感じた。しかし断言するのは控えたい。
まず、木軸から見てみる。
日本の林業関係者の話を総括すると、製材されている柱材は最低で16cmからで、最大で30cmだという。
日本のように10.5cmとか12cmの角材は挽かれていない。
このため、使用されている材木の量は0.35m3/m2で、日本の2倍に相当すると池田憲昭氏は書いている。下の2枚の写真を見るとそのことがうなずけると思う。

P1000466.JPG

P1000507.JPG


しかしこの軸組は、ホゾ、ミゾだらけの日本のそれとは全くの異質。
ジャーマンティンバーから転写した下の写真を見てもらいたい。
まず、地震がないので木骨土壁工法の伝統を受けて、通し柱が一本もない。そして、窓マグサがないというか小さい。屋根の鉛直荷重は敷き桁が一切負担している。
そして2階の根太は、胴差しの上に配されていて、持ち送り梁でバルコニーを形成している。この考えは北米のブラッとフォームに酷似している。つまり、日本の継ぎ手、仕口ニ類するものは皆無に近いと見受けられる。
これを、プレカット工場で作り、現場へ運ぶ。

P1000634.JPG

さて、次はピッチ。屋根たるきのピッチは約2尺間隔に見える。ところが、この屋根たるきのピッチと壁の柱のピッチがずれている。角柱のピッチは4尺に見えるが、2階根太のピッチとも必ずしも連動していない。
この骨組みを見ると、木材の規格はしっかりしていても、木質構造体としては学問的な解明がなされていないように感じる。

そして、たるき材は現しの部分はカットされていてセイが小さく見えるが、3×8程度のものを多く見かけた。おそらく16cm×20cmの梁材を半分に挽いたのではないかと想像する。そして、壁工法の場合も、同じ大きさのたるきを使っているように感じた。

P1000482.JPG

P1000448.JPG

根太は4尺飛ばす場合は16cm×20cm。根太間隔が2尺の場合は半割れの7.5cm×20cmというのが標準的な仕様と見受けた。

P1000476.JPG

これは、壁工法の断熱仕様を見せている断面模型。
模型の上に置いている緑の旅行日程表の長さが17.7cm。
したがって壁構造のランバーのセイが16cmあることが分かる。
したがってスタッド寸法は7.5cm×16cm。

これをスリー・バイ・セブン材(3×7)と呼称してみたが、いかがなものだろうか。

posted by unohideo at 06:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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