2008年10月04日

10/5号  花粉症は林野官僚による「公害」である!


奥野修司著「花粉症は環境問題である」(文春新書 710+税)

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著者はフリーのジャーナリスト。
花粉症を語るには、林産業に詳しい人か、医療関係のベテランでないと信用するわけにはゆかない。
ど素人の、フリー・ジャーナリストの「オオカミ少年的な発言」など聞くに値しないと考えていた。他におもしろそうな本がなかったから、不本意ながら購入…。

読んでみると、やはり立派な素人。
花粉の侵入をシャットアウト出来る「高気密住宅」の存在すら知らない。
そして、家の中になんと8台もの空気清浄機を設置している。
「バカではないか」と言いたくなった。
第一線を離れた私ですら、少なくとも1000人以上の人々から「家の中にいる時は、花粉症の苦しみから解放され、症状も軽くなってきた。本当に助かっています」と感謝の言葉をいただいている。
ソーラーサーキットなどのように、室内に外気を流すインチキ住宅は問題外。
本当の高気密高断熱住宅を提供しているビルダーの仲間たちは、何十万、何百万の人々から感謝の言葉を頂戴している…。
花粉症になった場合、何はさておいても家を高気密仕様にリフォームし、きちんとした機械換気システムを導入すべき。

そして、驚いたことには重症花粉症患者が要する年間の治療費や予備のための経費が想像以上にかかっていること。
この著者の場合、毎年買っている3.4万円の空気掃除機や、スポット買いの7.1万円のスウェーデン製の掃除機は別にして、診療費、マスク代、鼻と目の洗浄液代、メガネ、サプリメントなどで毎年7万円以上も払っている。
しかも、これは1人分。家族全員では12.5万円もの費用。
このほかに、8台の空気清浄機が、半年以上にわたってフル稼働。
その電気代までも加算すると15万円以上になろう。
「たかが花粉症」とあなどることは出来ない。

こんなにも大きな出費と苦痛を、2000万人から3000万人の国民に与えているということを、日本のすべての山林地主の方は自覚していただきたい。これは、決して林野庁のお役人だけの責任ではない。
あなた方が山林の手入れという責任を放棄している。
このために、庶民が15万円もの高額な医療費を払わされている。自分が管理出来ないなら山林は地方自治体へ返還すべき。それが筋。

たしかに、花粉症で死んだという話は聞かない。
アスベストのように肺ガンを引き起こすわけでもない。
しかしこれは、四日市のエントツからの噴煙によるゼンソク公害に匹敵する「スギというエントツから出る黄色い噴煙公害」ではなかろうか?
戦後の林野行政がもたらした「林野官僚公害だ」と筆者は断言する。

そして、素人でありながら、なまじっかの林野関係の関係者よりも徹底的に問題点を探り出し、解決の方向まで明示している。
そういった意味では、筆者は決して素人ではない。
玄人ぶって、何もアクションを起こしていない林野庁をはじめとした各大学の諸先生、林業研究機関や山の現場で働く皆さん。
この素人のツメのアカを煎じて、早急に「効果ある公害対策」を発表していただきたいと、祈りに似た気持ちをこの本を読んで持たされた。

花粉症はアレルギー反応。
人は免疫という仕組みで身体に侵入する病原体から身を守る防衛システムを持った。
ところが人の身体を守るはずの免疫が、花粉症やアトピー性皮膚炎のように人に悪い振る舞いをすることがある。これをアレルギーという。
花粉などのアレルゲンが鼻の粘膜に付着すると、Bリンパ球が肥満細胞の表面に集まって戦闘準備に入る。刺激を受けた肥満細胞は、細胞内に蓄えていたヒスタミン、ロイコトリエンを一斉に放出。するとクシャミ涙、鼻水、咳が出るという過敏な症状が発生する。これが花粉症状。
花粉が水分で殻が壊れ、中のタンパク質粘液が溶け出し肥満細胞に運ばれるからという。

この花粉症というのは化学物質過敏症と同じで、ある時バケツ一杯になったら症状が出る。そして一生治らない。つまりバケツ一杯の状態が続き、減ることがない。
寄生虫がいなくなったから花粉症が増えたという藤田絃一郎氏の意見は間違っていると筆者は証明している。また。ディーゼル車からの排気が花粉の原因だとする意見も間違っているとデータを上げて立証。
ただ、アスファルトに落ちた30ミクロンの花粉はタイヤで潰され、1ミクロンとなり、車が通る度に巻き上げられて家に侵入して被害を与える。したがってディーゼル車は花粉症に全然関係がないとはいえない。
しかし、原因はどこまでも花粉にある。

日本国土の67.4%が森林。
このうち人工林は1036万ヘクタールで41%にも及ぶ。
そのうちの452万ヘクタールの44%がスギ。ヒノキを含めると709万ヘクタール、68.4%も占める。
この709万ヘクタールというのは関東の1都6県、中部の5県を合わせた広さ。
ここから黄色い噴煙が毎年巻き上がっているということ。

戦後、スギやヒノキは高値で取引された。
農地解放で山林の所有権は細分化され、タダで山林得た地主は、ひとときはたっぷりとした甘い汁にありつけた。
そして、スギやヒノキを植えると補助金が出た。
欲の皮が突っ張った地主は、広葉樹をなぎ倒し、本来はスギやヒノキを植えてはならない傾斜地や谷筋まで、ロープを使ってスギを植えた。
この山林地主としての節操のなさと、プロ意識が皆無の無定見さ。
そして、射倖心を煽った林業官僚と左翼を含めた無責任な政治家群。
日本の山林を、花粉症という公害の発生源にしたのはまさにこれらの人々。

間伐が行われず、モヤシのように密生し、下草も生えていなければ鳥や虫、動物もいない暗い、暗い死に体のスギ山。
根が浅くて地下水を吸い上げる力も弱く、台風がくればなぎ倒される。
それだけではない。地表は土砂崩れで大きな被害を頻発させている。
照葉樹などの広葉樹を混ぜた混合林にすると、それこそ立派な治山治水となる。自然が蘇る。
ところが治山は林野庁の仕事。これがあまりにもいい加減たった。
そして治水は、もっぱらダム造りしか考えない利権官僚の権化である国土交通省が担当してきた。国交省は、土建屋に国土を滅茶苦茶にさせ放題にしてきた。
かくて、国土の67.4%も占める山林が、国民の憩いと自然再生の場ではなく、細分化されて義務を放棄し私有権だけを主張する地主の存在によって、呪わしき公害の発生源と化してしまったのである。

2000年に発表された旧科学技術庁の「スギ花粉症克服総合研究」調査によると、スギ花粉にかかる費用は年間2860億円だという。
内訳は医療費1171億円、薬局代1088億円、労働損失601億円。
この調査は1997年からなされており、当時の花粉患者数は1300万人。それが10年たった今では2倍といわれているから5720億円はかかっているだろう。
別の試算では1兆円を超えているという説もある。

一方、林業白書によると、2004年度の木材生産額は2205億円。そのうちスギの産出額はたったの925億円。
たった925億円のスギの産出額のために、そのスギがまき散らす花粉症対策に1兆円もの大金を支払っている。
こんなバカバカしい話は聞いたことがない。
この原因は、何回も書くが、戦後の林野庁が「拡大造林」という単一樹種の密林を強行した政策の誤りに帰結する。そして、誰一人としてその責任をとろうとしない。
日本のスギを全部伐採した方が、はるかに国民のためになる。

しかし、いま直ぐすべてのスギを伐採することは出来ない。
宮崎県綾町の照葉樹を残し、早くから有機野菜づくりを行ってきた先見性。
「それらに学びながら、一日も早く公害の元凶を無くして欲しい」との筆者の心の底からの叫びに、深く同感出来る。
posted by unohideo at 13:38| Comment(0) | TrackBack(1) | 病気と医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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