2009年07月20日

全記事一覧

20070105
「無暖房住宅」のテレビPRが始まった
20070110
外壁の最低の性能値(K)はどの程度にすべきか
20070115
グローバリゼーション音痴の日本の住宅業界
20070120
無暖房住宅の先駆的なトライで判明した問題点(上)
20070125
熱交換機に必要なバイパス回路   判明した問題点(中)
20070130
実態の裏付けの乏しい冷暖房費ソフト  判明した問題点(下)
20070205
CO2では最大のプレゼンテーター・ゴア元副大統領「不都合な真実(わやな地球)
20070210
久しぶりに骨太の企業小説に巡り会うことが出来ました!
20070220
耐震偽装事件の核心!   イーホームズ藤田社長の恨み節
20070220
真空断熱材の登場! 次はサッシメーカーの存在価値が問われる番!!
20070225
脱石油の雄・エタノールのために失われるアマゾンの森
20070305
政治には触れたくないのだが……「小泉官邸秘録」の面白さ
20070309
ハウス・オブ・ザ・イヤー  新しい性能評価制度と表彰制度(上)
20070310
ハウス・オブ・ザ・イヤー  なぜイン・エレクトリックになった?(中)
20070311
ハウス・オブ・ザ・イヤー  トップランナー方式の性能表示(下)
20070315
これは使える!真空断熱!!  真空断熱・熱訪の2日間
20070320
イノベーションの3大目的が、より明確に!
20070325
真空断熱材の価格は高かった!  お詫びと試算
20070330
札幌市郊外の、世界一醜い風景にこそイノベーションのチャンスが!
20070405
宅配屋のしがない営業課長が逆転の発想で立ち上げた新事業
20070410
東京地域の理想的省エネ外壁(1)  132m2(40)のプロトプラン
20070411
東京地域の理想的省エネ外壁(2)  206合わせ柱はスタッドが35%
20070414
東京地域の理想的省エネ外壁(3)  1,2階の側根太、端根太にも工夫を
20070419
東京地域の理想的省エネ外壁(4)  情けないL金物の多用
20070420
東京地域の理想的省エネ外壁(5)  スウェーデンの下屋の一例
20070425
東京地域の理想的省エネ外壁(6)  208かそれとも206+外断熱か
20070430
東京地域の理想的省エネ外壁(7)  効果的な充填+外断熱(KM+ロックウール)
20070505
「消費者志向」から「テクノロジー・オリエンテッド」へ
20070510
お笑い番組を見る気安さで「東京でのサスティナブル」を実感する本
20070515
初めて接した「電磁波で具体的な対策」が書かれた本
20070520
私どもの固定概念をメタメタに粉砕してくれる驚きの書
20070525
オープンスペース・コミュニティというコンセプト
20070530
最上級の面白さ。中小企業の「ものづくりド根性物語」
20070605
住宅屋が知っておくべき「植栽」に関する基本知識
20070610
米・カリフォルニアの検査制度とクレーム
20070615
教育とはこんなにも素晴らしい事業であったのか!!!
20070620
NHK教育テレビのフォーラム「地球温暖化と森林」に異議あり
20070625
本気でアメリカのInspector制度の研究を!
20070630
2007年上半期 読んで面白かった本のベスト10
20070705
窓の断熱性能表示ガイドラインに対して意見書の提出を!
20070707
地場ビルダー、設計事務所対象にKM+ロックウール外断熱セミナーと現場見学会
20070710
東京の夏、窓を開けて良い日はたった3日しかない!
20070715
台風4号前の、一階床組工事の雨養生!
20070720
今年もやっぱり絶対湿度!
20070725
軸組とツーバィフォーの本格的な合体こそ!
20070730
成熟化社会を先導する「農」の新たな役割を問う好著
20070805
坂本先生の「予想される省エネ基準」講演と現場見学会
20070809
外壁の単位が1桁間違っています
20070810
NOはいうべき! ナンバーワンビルダーの現場監督」
20070815
読みごたえのある「巨大企業群誕生」の歴史的証言
20070820
この国をどう変える? 「格差是正」は赤子でも言える
20070825
中国の若者の意識と社会の現実が本当に良くわかる好著
20070830
「住宅の履歴書」は絶対に必要だが
20070905
「青年社長」の学校・医療・介護・農業分野での改革奮闘記 (1)
20070910
青年社長の「経営力」での学校改革奮闘記 (2)
20070915
青年社長の「経営力」での病院・老人ホーム改革奮闘記 (3)
20070920
「青年社長」の有機農業での改革奮闘記 (4)
20070925
カナダ生まれのアンさんの「産農協同の無農薬米による酒づくり」
20070930
十勝で考えたこと(1)  これから移住するなら北海道に限る?
20071005
十勝で考えたこと(2)  無落雪ではなくシンプル・モダン
20071010
十勝で考えたこと(3)  2X4の普及率が50%ということ
20071015
十勝で考えたこと(4)  先進地域のいろんな試み
20071020
十勝で考えたこと(5)  Q-1よりも3リッター住宅
20071021
十勝で考えたこと(6) 訂正
20071023
十勝で考えたこと(7) 再訂正
20071025
これからの10年が勝負! 温暖化地獄へ転落か、踏み止まれるか!
20071030
Kさんが選んだ無暖房・光熱費ゼロのパッシブハウス
20071031
訂正
20071105
パッシブハウスとは?  最初にPassive House Instituteありき。
20071110
『無暖房は過大広告』 『パッシブは垢まみれ』  (塩尻随感1)
20071116
「暖・温・冷・換」の年間燃費での表示こそ!  (塩尻随感2)
20071117
リッターでの表示
20071120
日本でパッシブハウスと呼べるのは茅野の「桜ハウス玉川」だけ  (塩尻随感3)
20071125
日本の住宅政策に対する外国人ベンチャーの強烈パンチ! 
20071130
まずデザイン力とトップのポリシー   ビルダーのホームページ雑感(1)
20071205
絶対に行うべき2つの定期的な発信   ビルダーのホームページ雑感(2)
20071210
社長のブログのアキレス腱   ビルダーのホームページ雑感(3)
20071215
他社をよく研究しょう   ビルダーのホームページ雑感(4)
20071220
EUでは再生可能エネルギーの半分が木質バイオマス
20071225
塩ビはダイオキシンや環境ホルモンの真犯人ではなかった!
20071227
2007年下半期 読んで面白かった本のベスト10
20080105
魂のヒダ
20080110
あの上勝町には安月給の全てを料亭に注ぎ込んだ馬鹿がいた!
20080115
危機管理を見事にやり遂げた普通の村長の驚異的大変身
20080121
日本は世帯当たりエネルギー消費量が少ないという詭弁
20080125
地球温暖化防止に果たす「菌」の想像以上の大きな役割
20080130
日本のガソリンは本当に高いのだろうか?
20080205
20の世界の木構造と断熱と換気   旭川で学んだこと()
20080210
20の世界の木構造と断熱と換気   旭川で学んだこと()
20080215
20の世界の木構造と断熱と換気   旭川で学んだこと()
20080220
地熱エネルギーで再認識させられた貴重な資料!
20080225
アメリカのEDU誌がトップで取り上げたパッシブハウス()
20080229
EDU誌のパッシブハウスFeist博士へのインタビュー ()
20080305
EDU誌のパッシブハウス博士へのインタビュー ()
20080310
建材展示会の実態と「儲かる見本市」を開発した男の哲学
20080315
日本のパッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(上)
20080320
パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(中)
20080321
訂正
20080325
パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記 (下)
20080327
桜ハウス玉川の記事訂正
20080330
電磁波公害に対する静かな客観的指摘に共感!
20080405
3冊の面白い女流作家の小説(物語)に遭遇しました
20080410
ハウス・オブ・ザ・イヤーの画期的な側面と提起している問題
20080415
住宅のエコ性能表示を義務化。ドイツの「エネルギー・パス」
20080419
訂正
20080420
珠玉の17編を集めた「世界一素晴らしい動物紀行」
20080421
再訂正  ドイツのエネルギー・パス
20080425
いわゆる「逆転結露」解消への福音(上)
20080426
逆転結露(補記)
20080430
逆転結露  壁内結露とRC造の壁表面結露(中)
20080505
逆転結露  東京・福岡・札幌の屋根内湿度と調湿シート(下)
20080510
推理小説よりは100倍も面白い「生命科学の謎」へ大接近
20080515
山林の生産性  独力で大型機を導入した先見性()
20080520
山林の生産性  団地化と路網整備と地場ゼネコン()
20080525
ドイツのRC造の断熱改修  湿式外断熱の実績
20080525
訂正
20080525
追加訂正
20080530
「エコタウン信州茅野」を全部木構造でやったら?
20080605
ビルダーのホームページに施主が登壇してもらうコツ!(上)
20080610
Q0.6W0.7Wの性能をR2000仕様の5%高で!!  施主に登壇してもらうコツ()
20080615
Q1.1W以下でのコストパフォーマンス  施主に登壇してもらうコツ()
20080620
なぜドイツが太陽光発電で日本を追い抜けたのか?
20080625
男性の左脳に性能をアピール、女性の右脳に物語を語る!!
20080630
2008年上半期 読んで面白かった本のベスト10
20080705
太陽光発電が原発を凌駕出来る条件とは?
20080710
珍しく「経済」と「政治」の本をとりあげます
20080715
日本の暖房費はなぜ韓国の1/3なのか?
20080720
ドイツの断熱・気密工マイスターの仕事ぶりに学ぶ
20080725
Q値が2.0W/uの住宅は、外断熱だけでは処理出来ない
20080730
日本におけるバイオエタノールの問題点
20080801
再生可能エネルギー世界フェアの会場のスナップ写真
20080805
hiro@首都圏」邸の温湿度にこだわった家造り白書 (1)
20080810
温湿度にこだわったhiro邸の家造り白書 (2)
20080815
温湿度にこだわったhiro邸の家造り白書 (3)
20080820
温湿度にこだわったhiro邸の家造り白書 (4)
20080825
温湿度にこだわったhiro邸の家造り白書 (5)
20080830
日本の官僚制度の弊害をこれほど糾弾した著書はない!
20080905
建築関係で久々の読み応え「磯崎新vs丹下健三物語」
20080910
財務省の無能さを内側から告発した異色の財務官僚!
20080915
建築の基本に迫るエッセイ。28話のうち14話に感激!!
20080920
丸8年目の自殺寸前に咲いた無農薬無肥料リンゴの花!
20080925
平成版「農地解放」なくして自給率の向上なし!
20080930
國が進めるリサイクルの欺瞞性を徹底糾弾!
20081004
10/5号  花粉症は林野官僚による「公害」である!
20081004
10/10号 10年間に54ヶ国。足で書いた本年度No.1の傑作
20081015
木質住宅の驚異的実力  ドイツパッシブハウス調査(1)
20081020
西洋館の歴史的宝庫を発見  ドイツパッシブハウス調査(2)
20081025
木造住宅のデザインポリシー  ドイツパッシブハウス調査(3)
20081030
進んだ建築物理学、遅れた木質構造学?  ドイツパッシブハウス調査(4)
20081031
重大なミステーク
20081105
悩ましい床根太スパンと驚異の遮音  ドイツパッシブハウス調査(5)
20081110
パッシブハウス研究所()   ドイツパッシブハウス調査(6)
20081115
パッシブハウス研究所()   ドイツパッシブハウス調査(7)
20081120
パッシブハウス研究所()   ドイツパッシブハウス調査(8)
20081125
ドイツの木造は400年住宅   ドイツパッシブハウス調査(9)
20081130
壁の熱容量と断熱改修の実態   ドイツパッシブハウス調査(10)
20081205
サッシ工場見学記   ドイツパッシブハウス調査(11)
20081210
換気+ 工場見学記   ドイツパッシブハウス調査(12)
20081215
中堅の住宅工場見学記   ドイツパッシブハウス調査(13)
20081220
日射取得と日射遮蔽   ドイツパッシブハウス調査(14)
20081225
肥満と調理とシャワーと   ドイツパッシブハウス調査(15)
20081226
2008年下半期 読んで面白かった本のベスト10
20090105
パッシブハウス研(PHI)の目標値は日本の目標に相応しいか?()
posted by unohideo at 04:30| Comment(56) | TrackBack(0) | 全記事一覧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月05日

パッシブハウス研(PHI)の目標値は日本の目標に相応しいか?(上)



パッシブハウス研究所(PHI)の掲げている目標数値は下記のとおり。

http://www.passivehouse.com/English/PassiveH.HTM

この図から年間暖房費15kWh、年間給湯費6kWh、年間換気費4kWh、年間家電費11kWh、計36kWhと読みとることが出来る。
つまり、二次エネルギーの燃費が36kWh/uaで、一次エネルギーが97.2kWh/uaで上がる住宅のことを指すのだと考えていた。

この数値を達成させるためには、外壁などの熱貫流率(K値)0.15W/u以下で、サッシは0.8W/u以下であるべき。そして気密性は0.6tims/50pa(相当隙間面積0.3cm2)以下でなければならせない。また換気の熱回収率は80%以上であることが絶対的な条件になると言っている。
そして、パッシブハウスという名称を用いた理由は、ヨーロッパで広く用いられている温水ラジエーターによるセントラル輻射暖房装置を、住宅から追放してゆくという目的を明確にするためであった。
つまり、「セントラル温水式輻射暖房装置を追放した住宅」ということ。

日本では、北海道だけでなく10数年前からV地域やWa地域でもこのセントラル温水式輻射暖房のクリーンさと快適さが認められて、かなり広く普及してきている。
東京ガスなどが提案している床暖房よりもはるかに温度コントロールが容易で、セントラルシステムとして使いやすく、床暖房よりはるかに快適だから。
しかし灯油価格の高騰から、この給湯方式が寒冷地では見直されてきている。
V地域やWa地域では、深夜電力のエコキュートを使えば、灯油よりもはるかに安くなってきた。このため、灯油から深夜電力利用の給湯方式に切り替わった。
しかし、北海道などではエコキュートのCOPが低いので、温水輻射暖房から深夜電力利用の「チクダン」などへ切り替わってきている。
残念ながら、暖房機器の本格的な追放運動は起きていない。
「無暖房住宅」という勇ましい掛け声は聞こえてくるが…。

そういった点から考えると、ヨーロッパ人が不可欠と考えていたセントラル温水式輻射暖房装置の追放を叫んだパッシブハウス研究所の先見性と、それを推進してきた馬力には頭が下がる思いがする。
しかし、昨年秋に同研究所を訪ねた時「新しく冷房負荷基準として15kWhを加えるつもりだ」と言われた時、裏切られた思いがした。
まさしく「100年来の恋いが醒める」想い。
今までの二次エネルギー36+15=51kWhとなる。
これだと、単純計算をすると一次エネルギーは137.7kWh/uaとなってしまう。今まで唱えていた120kWhが霧散してしまうではないか、と考えた。

横浜国大建設卒で、ドイツStuttgart大建設学部でDiploma学位を取得し、アイルランドでパッシブハウスの普及に努めているMiwa女史から昨年秋にメールが入った。そして近くパッシブハウス研を訪れる予定があることを知った。
その折に、2つのことを訊いていただくように依頼した。
(1) 昨年末までにパッシブハウスの累積建築戸数は2008年末に1万5000戸に達すると聞いたが、この数値はむPHIのコンサルタントが一戸一戸確認した数値か、それともおおよその推定値か。
(2) 新しく冷房の15kWh/uaが加えられるということだが、その根拠と具体的な内容について細かく教えていただきたい、と。

この2点についての返答メールが、12月15日にとどいた。
(1) 1万5000戸というのはPHIの社員と認定コンサルタントが一戸一戸確認し、認定した数値だという。
したがって、R-2000住宅やQ-1住宅の累計戸数が推定4000戸というのとは訳が違う。改めて、凄い数値だと感じさせられた。
(2) 新しく追加される冷房負荷については、COPを1とした場合の建物が必要としている上限のエネルギー量であるとのこと。

つまり、kWhで表現するから二次電力使用エネルギーと私などは勘違いしていた。そうではなくて省エネ基準で定義されている年間冷暖房負荷と同様の建物性能の定義。つまりギガジュール(GJ)を使った方が理解が早い。
仮に、赤道直下でパッシブハウスを建てるとなると暖房負荷はゼロだが、冷房負荷は最大15kWh以内にしなさいということ。
そして、東京で暖房が12kWh、冷房が10kWhの住宅を建ててもパッシブハウスとは呼べない場合が出てくる。二次エネルギーはクリアーしていても、一次エネルギーの120kWhをクリアーしないとパッシブハウスとは認定されないから…。
だから冷房15kWhという基準を加えても、問題がないというのがPHIの見解。

それと、もう一つ重要なポイントが隠されている。
夏が乾期で乾燥しているヨーロッパでは、クーラーを用いなくても、つまり冷房除湿装置がなくても過ごせる場合がある。その場合には、建築物の二次エネルギーが15kWh以下であれば、一次エネルギーはゼロ。また、冷房のことだけを考えればよく、日本のように除湿について細かい配慮が要らない。
ただし、MiwaさんがPHIに計算を依頼した日本の例だと、絶対湿度が12g/kg(DA)以下であるようにして計算されているという。結果は、「日本は夏の夜、温度が低くなっても窓をあけてはいけない」という当然の答が出てきたという。
しかし、冷房負荷15kWh/uaを決めた時に、絶対湿度が12g/kg以下になるようにエンタルピ負荷を考慮して決めたのかどうかが定かではない。

また、太陽光発電を搭載していると、暖冷房費がいくらかかっても一次エネルギーは
ゼロ。だから、5キロワット以上の太陽光発電を搭載さえしておれば、冷暖房負荷に対する配慮がいい加減な住宅でもパッシブハウスとして認められる可能性がある。
原子力発電を必要以上に忌み嫌うドイツらしい方程式。

こういった冷房除湿に関する諸点の他に、給湯と家電のエネルギー消費量でもいろいろな疑問点が浮上してきた。

まず、給湯。
これは、すでに何度も書いていることだが、ドイツのモデルハウスにはほとんど浴槽がついていなかった。
今までドイツで泊まったホテルには、いずれもシャワーしかついていなかった。
このため200リッターの貯湯槽のコンパクト・ユニットが普及していた。
データで見てもドイツの世帯当たりの年間給湯エネルギーの使用量は7ギガジュール。
これに対してセントラル空調換気システムが普及していない日本では、肩まで湯に浸かって身体を暖めなければならない。ストレスを解消するためにも浴槽は不可欠。そして追い炊き機能が求められている。
このため、日本が給湯に使用するエネルギーはドイツの2倍の14ギガジュール。

7ギガジュールのドイツやフランス、オーストリア、オランダなどを前提にPHIは給湯の目標値を6kWh/uaと定めた。
その基準をそのまま日本へもってくることは本当に正しいのか?
2倍の12kWhは無理としても、10〜11kWh/uaを見込む必要があるのではないか?

日本は、基本エネルギーを原子力に依存する方向を定めた。
原子力発電は稼働率を変えることが出来ない。
したがさって、東京などの産業が集中している大都市では、夜間の電力の利用が大問題になってきている。そして、深夜割引料金がこれからも維持されてゆくであろう。
このため、夜間電力を利用している給湯費は非常に安い。月2000円を超すことはまれ。
しかし、年間の二次エネルギーで見ると、簡単に15kWhを突破してしまう。
つまり、東京以西では暖房よりも給湯エネルギーの占める割合が非常に高い。

このほかに、省エネ家電の開発が進んでいるとはいえ、日本の家庭での家電の使用量はドイツに比べて5割近く多い。
また、調理費もドイツの家庭の2倍。
このあたりを考慮しないと、PHIの目標値は単なる高嶺の花と、日本の消費者から無視されてしまう可能性が高い。

そして、更に言うならば、最終的な目標がCO2の削減にあるならば、半分近くの電力を石炭に依存しており、風力や太陽光、バイオに力を入れてはいるが、これらの占める比率がまだ10%に過ぎないドイツ。
これに対して日本で原子力発電が進んでゆき、フランスのように80%近くになったとしたら、日本のCO2は大幅に削減されることになる。
そういった点まで含めて考えると、パッシブハウスの基準を金科玉条のように考えることには、どうしても疑問符がつく。

温暖地で、冬期の過剰乾燥と夏期の異常な多湿を抱える日本の場合は、PHIの貴重な動きは大いに参考にしながらも、独自の省エネ目的を掲げてゆくことが非常に大切だと考える。

2008年12月26日

2008年下半期 読んで面白かった本のベスト10


恒例の面白本のベスト10。
上半期のノミネートは120冊にも及んだが、下半期は2/3の86冊。
ちょっと少ないようだが、建築関係と小説で久しぶりに面白い本に沢山出会うことが出来た。しかし、住宅関係は相変わらずの凶作。
年末年始に読む本を買おうと考えている方の参考になればと、早めに公開します。

【環境・農業・食品・医療】 20冊
・最強ウイルス                 NHKプロジェクト    NHK出版
・食がわかれば世界経済がわかる         榊原英資     文春文庫
・ips細胞ができた!             山中伸彌・畑中正一    集英社
・床屋も間違える驚異の毛髪術           黒木 要     日本書院
・「長寿食」世界体験記               家森幸男     ちくま文庫
・アフリカに緑の革命を!             大高未貴      徳間書店
・日本型バイオエタノール革命           山家公雄      日経新聞
・食の安全はどこまで信用できるか        河岸宏和    アスキー新書
・癒しの森 ひかりあふれる尾久島         田口ランディ  ダイヤモンド
・中国汚染                      相川 泰   ソフトバンク
・偽善エコロジー                  武田邦彦     幻冬舎新書
・花粉症は環境問題である             奥野修司      文春新書
・食べることを、やめました             森美智代     マキノ出版
・奇跡のリンゴ                    石川拓治      幻冬舎
・いのちを生む                    大野明子他     学 研
・水の未来                    フレッド・ピアス    日経BP
・自立農力                     尾崎 零    家の光協会
・はたけのある生活                 伊藤光歩     朝日出版
・里山ビジネス                   玉村豊男    集英社新書
・飢餓国家ニッポン                 柴田明夫   角川SSC新書

【技術・科学・教育】  11冊
・雷に魅せられて                 河崎善一郎     化学同人
・葉っぱのふしぎ                 田中 修 サイエンスアイ新書
・大学院生物語                  伊良林正哉      文芸社
・Suicaが世界を変える               椎橋章夫     東京新聞
・5万年前                  ニコラス・ウェイド イーストプレス
・宇宙から見た地球             ニコラス・チータム    河出書房
・海から見た地球温暖化          JAMSTEC編集委員会     光文社
・動物の赤ちゃんはなぜかわいい           増井光子      集英社
・都市型集中豪雨はなぜ起こる!          三上岳彦    技術評論社
・タンパク質の一生                  永田和宏     岩波新書
・眠れなくなる宇宙のはなし             佐藤勝彦      宝島社

【経営・経済】  20冊
・イオンが仕掛ける流通大再編!          鈴木孝之   日本実業出版
・花失せては面白からず               城山三郎     角川書店
・中国が予測する“北朝鮮崩壊の日”     リン・イエ 富坂聰   文春新書
・夢のサムライ 村橋久成             西村英樹  北海道出版企画
・経営の未来                  ゲィリー・ハメル    日経新聞
・エネルギー危機からの脱出             枝廣淳子   ソフトバンク
・公務員クビ!論                   中野雅至     朝日新書
・ソニーを創った男 井深大              小林峻一      ワック
・官僚国家の崩壊                   中川秀直      講談社
・怒濤のごとく 菊池寛実伝             早乙女貢      原書房
・全国から人が集まる不思議な自動車教習所    小河二郎       PHP
・風に吹かれて豆腐屋ジョニー           伊藤信吾      講談社
・さらば財務省!                  高橋洋一      講談社
・世界は仕事で満ちている              降旗 学      日経BP
・中国の大乱を乗り切る日本の針路       長谷川慶太郎  ベストセラー
・政治と秋刀魚              ジェラルド・カーティス     日経BP
・奈良の小会社が表参道ヒルズに店を出す      中川 淳      日経BP
・この街は、なぜ元気なのか?            桐山秀樹    かんき出版
・小池百合子の華麗な挑戦              大下英治     河出書房
・なぜユニクロだけが売れるのか          川嶋幸太郎     ぱる出版

【小説】  15冊
・カゼヲキル 助走編・激走編・疾走編       増田明美      講談社
・秋瑾 火焔の女                  山崎厚子     河出書房
・小説 防衛省                   大下英治     徳間書房
・『十五少年漂流記』への旅             椎名 誠     新潮選書
・不祥事                        池井戸潤   実業の日本
・くたばれ成果主義                江波戸哲夫     飛鳥新社
・下北サンデーズ                  石田衣良      幻冬舎
・ポジ スパイラル                 服部真澄      光文社
・本当に生きた日                  城山三郎      新潮社
・スタンド・バイ・ミー                小路幸也      集英社
・茨の木                       さだまさし     幻冬舎
・プラチナタウン                    楡 周平      詳伝社
・マリアの選挙                   三輪太郎     徳間書店
・蒼翼の獅子たち                 志茂田景樹     河出書房  

【ノンフェクション・旅行】 11冊
・トスカーナのスケッチ帳              堀 文子       JTB
・マイ・ドリーム             バラク・オバマ自伝   ダイヤモンド
・エブリワン氏の「裁判員日記」           一橋総研       PHP
・K2苦難の道程                  出利葉義次    東海大出版
・海中奇面組                    中村征夫      ベスト社
・隅田川のエジソン                 坂口泰平     青山出版
・体の中の美術館                  布施英利     筑摩書店
・尾久島で暮らす                  菊池淑廣    山と渓谷社
・アフリカ・レポート                松本仁一     岩波新書
・仕事道楽                     鈴木敏夫     岩波新書
・少年院のかたち                  毛利甚平    現代人文社

【建築・住宅】 10冊
・スウェーデンの家具職人になる!         須藤 生     早川書房
・写真な建築                     増田彰久      白揚社
・東京建築50の謎                  鈴木伸子  中公新書ラクレ
・磯崎新の「都庁」                 平松 剛     文芸春秋
・建築史的モンダイ                 藤森照信    ちくま新書
・建築家は住宅で何を考えているのか      東大デザイン研    PHP新書
・伝統技法で茅葺き小屋を建ててみた       原田紀子  農山漁村文化協
・なぜ起こる! 巨大地震のメカニズム    木村政昭監修    技術評論社
・のたうつ者                    挾土秀平    毎日新聞社
・自然な建築                    隈 研吾     岩波新書

さて、この86冊の中から選んだベスト10。
写真があった方がいいとの意見でむりやり揃えたが、写りが悪いのはご容赦あれ。

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◆10位  経済・経営の分野から、長年にわたって日本の経済と政治に携わってきたカーティスの「政治と秋刀魚」と、久しぶりに納得出来る長谷川節を聞かせてくれた長谷川慶太郎の「中国の大乱を乗り切る日本の針路」をあげたい。

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◆9位  今回は農の分野でそれほど目立つものはなかった。その中にあって石川拓治の「奇跡のリンゴ」は読ませる。NHKのテレビで取り上げたあとの取材で、二番煎にすぎないのではないかと心配したが、テレビ報道の数倍も面白かった。

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◆8位  科学・技術の分野ではipsなどそれなりに話題作があったが、三上岳彦の「都市型集中豪雨はなぜ起こる!」が読ませた。つい温暖化に絡んで考え勝ちだが、それ以外の要素をあげているのに納得。

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◆7位  武田邦彦氏の環境全体に関する議論には疑問点が多すぎる。しかし、この著はリサイクルと称して官僚の天下り先を用意しただけの現実を厳しく追及している。また、ダイオキシンが無害だったことを報道しないテレビ局も厳しく諫めている。

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◆6位  建物には2種類しかない。1つは神や仏のための建築で、日本建築はほとんどがこれ。もう1つは人間のための建築。西洋館はいずれも人間のための建築で、記録しておきたい1500物件のうち1200物件は撮影したという増田彰久の「写真な建築」。

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◆5位  経済・経営の分野の高橋洋一の「さらば財務省!」と中川秀直の「官僚国家の崩壊」は、同じ視点で、内側から日本の官僚制度にメスをいれたもの。「国よりも省の方が大事」とする者が出世する現行制度の改革の必要性が、嫌というほど分かる。

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◆4位  今回は面白い小説が多かった。企業小説、あるいは社会派小説といえるものでは楡周平の「プラチナタウン」、三輪太郎の「マリアの選挙」、服部真澄の「ポジ スパイラル」がそれぞれ読ませた。これとは別に、増田明美の女性ランナーを描いた3部作「カゼヲキル」は感覚というか鮮度がとてもいい。4点まとめて5位。

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◆3位  平松剛の「磯崎新の『都庁』・戦後日本最大のコンペ」は小説を読むような面白さ。丹下健三の新宿西口ツィンタワーの都庁は、そのメンテナンス費が莫大にかかり、バブル時代の象徴的な建築物だというのが現在では共通の認識。しかし、コンペでは磯崎新の斬新なアイディアは切り捨てられた。磯崎案が入選していたならば…とつくづく考えさせてくれる作品。この種の作品が、これからも出現することを期待したい。

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◆2位  
◆1位  フレッド・ピアスの「水の未来」と隈研吾の「自然な建築」の2つのうち、どれを1位にするかで迷った。
「水の未来」は、数年以上の時間をかけて世界各国へ足を運んでいる。そして、それぞれの土地の歴史を詳しく丹念に調べ、時には研究者と一緒になって研究活動に加わっての執筆。そこいらにあるエコ関係の本に見られるような、ネット上とか机上の空理空論とは全く異なる。まさしく足で書いた労作。
一方「自然な建築」は、これまた空理空論ではない。自分で自然素材である木、竹、紙、土、石、水を使って新しい建築にトライした記録集。単なる思いつきではなく、テーマを温め、いろんな職人などの知恵や経験を借りて、今までになかった空間を見事に孵化させている。そして「負ける建築」というポリシーがなんとも嬉しい。安藤忠雄等で建築家のいやらしさを見せつけられてきただけにすがすがしく、嬉しくなってくる。
というわけで、2作品を同時1位とした。つまり、最低この2冊は読むべしということ。
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2008年12月25日

肥満と調理とシャワーと   ドイツパッシブハウス調査(15)



今年、日本では「メタボリック症候群」ということがやたら叫ばれた。
医者は、口を開けば「少し太り過ぎ。もう少し痩せる努力をしましょう」という。
オムロンの、体脂肪も計れる「体重・体組成計」で測定すると、実年齢よりも10才も若い年齢が表示されており、小太りの方が良いはずだと思う。それなのに、藪医者め様が言うことには…。

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上の図を見て頂きたい。
これは7〜8年前に調査されたOECDの肥満度の国際比較。先進国の中ではアメリカが圧倒的に肥満度率が高く、ドイツも12%以上。これに対して日本は最低の3%台。
メタボリック症候群など心配する必要はサラサラないという気がするほど…。
そして、よくよく眺めてみると、上位の各国はいずれも食べものが不味い国だということが分かってくる。

アメリカの代表的な食べものというとハンバーガーと草鞋のようなステーキとポテトチップス。食事と言うよりはボリュームだけのエサ。
イギリスも、どうしょうもない。
カナダは、香港から名のあるシェフが数多く移住したので大都市では中華料理が抜群に美味しく、日本料理店も多いので食事の心配はない。
しかし、ドイツとオーストリアは、その中華料理までが地元の舌に迎合して極端に不味い。
かつて3回ドイツを訪れているが、いずれも2泊程度。
それだったらジョッキーとアイスバイン(Eisbein、ブタの骨付きスネ肉を茹でたもの。これに塩漬けで発酵させたキャベツが山盛りについてくる。プリプリのゼラチンとキャベツのピリ辛味が絶妙)で十分に凌げることが分かった。
しかし6泊ともなると、何を喰っても単調で同一な味付けがこたえてくる。

これに対して、食事が美味しい食いしん坊天国のフランス、イタリア、韓国、日本は肥満度が低い。美味しいものを少しずつ食べる方が、肥満にならない。

しかし、ドイツをはじめ各国の名誉のために書き加えておかねばならない。
昔のヨーロッパの朝食はパンとバター、ジャムとコーヒーだけ。
味もそっ気もないものだった。
それが、どの国でもバイキングスタイルに変わり、自由に好きなものをチョィス出来る。パンをはじめ生ハム、ソーセージ、チーズ、牛乳、ジュースが大変に美味しい。ヨーグルトも中に入れる木の実の種類も豊富で、果物も新鮮で充実している。
洋食の朝食に関しては、日本のそれを上回っている。
夜は我慢。そして、朝食を腹一杯に詰め込むのがドイツ旅行の裏技。


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上の図は主要国の世帯当たり消費エネルギーの比率。
この表からはいろんなことがわかるのだが、とりあえず各国の年間調理エネルギーを見てもらいたい。
料理の不味いイギリス、スウェーデン、ドイツがいずれも2ギガジュール。
これに対してフランスと日本は倍の4ギガジュール。
イタリアが3ギガジュールと少ないのは、気軽に利用出来るバールがどの街でも早朝から開いており、多くの人がそこを利用しているからなのだろう。夜はマンマの手作りの夕食が待っているはず。
ただ、あのアメリカが4ギガジュールというのは納得出来ない。電気ヒーターを消すのを忘れているからではなかろうか…。

ともあれ、ドイツはシステムキッチンの国。
ボーゲンポール、ミーレ、アルノなどが、多くの女性の心をくすぐってきた。
そのシステムキッチンが、ドイツではそれほど頻繁に使われていないらしい。
アメリカのように、オーブンやレンジでチンするだけではなかろうが、使われ方が少ないシステムキッチンは、いつまでも美しい。

20年前まではインテリアコーデネィターに頼まれ、主に居間と台所を片っ端からカメラに納めてきた。
しかし、今ではそういったインテリア情報は溢れていて、ドイツのシステムキッチンの写真だといっても誰も手を出してはくれない。
したがって、システムキッチンの写真はほんの数葉だけ。

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そして、もう一つ少なかったのが浴室の写真。
ジャグジーやエアブローはもちろん、木の浴槽もない。
大体、バスタブそのものがない。
あるのは、下の写真のような簡単なシャワールーム。

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ここでもう一度、上の主要国の世帯当たり消費エネルギー比較図を見てもらいたい。
給湯に使っているエネルギー量が最も多いのがイギリス。
ともかく、イギリスの子女のお湯の浪費は有名。テレビで何回も紹介されているが、いくらなんでも18ギガジュールというのは、使いすぎ
ついでアメリカ。
アメリカという国はガソリンなどの税金が極端に低い。このために価格が非常に安く、浪費癖が身に滲み込んでいる。ガソリン税、電気税、ガス税を上げない限り、誰が大統領になろうが、アメリカ人のエネルギー浪費癖は、絶対に改善されないだろう。

これに比べて、フランス、ドイツ、イタリアのなんと慎ましいお湯の使用量。
つまり、ほとんどがシャワーだけで済ませている。
このために、200リッターのコンパクト・ユニットが堂々とドイツ、オーストリア、スイスで高いシェアを占めていた。
いずれも世帯当たり給湯量の平均が7ギガジュールの国。

パッシブハウスは、このドイツで生まれた。
このため、暖房で15kWh/u、給湯が6kWh/uというコンセプトが生まれてきた。このコンセプトをそのまま日本へ導入するのは、どだいムリと思う。
日本では、ドイツの2倍、すなわち14ギガジュールの給湯を使っている。
シャワーだけでは絶対に済ますことが出来ない。
やはり、肩までお湯に浸からないと疲れが抜けない。
全館空調換気の住宅が少ない。このため夏は高湿度で寝汗をかくし、冬は部分暖房で筋肉が硬くなっている。お湯に浸かって筋肉をほぐしてやらないと熟睡が出来ない。ストレスも一向に解消されない。
したがって、日本がドイツと同じパッシブハウスの基準で、第一次エネルギー120kWh/uaを達成するのは困難だと考える。

日本は主要電力として、ドイツのような反原発ではなく、原発主体の方向を選んだ。
原発に反対する政党もなければ、民間の草の根運動も見当たられない。
ということで原発が中心になる以上は、深夜電力を有効に使わねばならない。
当然、割引料金が今後とも適応されてゆくだろう。
深夜電力を使うエコキュートの料金は安い。月2000円以内で上がる。
しかし、第二次エネルギー量は、給湯だけであっという間に20kWh/uaを突破してしまう。
太陽熱温水器とエコキュートの効率のよいハイブリッドシステムが開発され、安い価格での普及がない限り、ドイツ生まれのパッシブハウスは、日本では給湯面で頓挫してしまう可能性が高い。
それに加えて、上の図で、家電のエネルギー消費量がドイツ7GJに対して日本が11GJと57%も多いのも気になる。各部屋にテレビとパソコンがあり、テレビゲームに熱中している日本。
パッシブハウス研究所は、第二次エネルギーで家電を11kWhと抑えているが、如何に省エネ家電の開発が進むからといって、日本がこの数値を達成するというのは容易なことではない。
つまり、第一次エネルギー120kWh/uaは、遠い将来には可能であっても、近未来の目標値になりえないのかもしれない。

こういった多面的なことが、今回の調査で分かった。

往復に各12時間も要する空の旅。
実質7日間の短期調査で、15回にもわたって分かったようなことを書いてきた。
中には思い違いや勘違いがあるだろう。
ただ、今までに日本へ紹介されていなかったいくつかの点が解明出来たのは、仲間の難しい要望に応えて優れた訪問先をアテンドしてくれたバウマンさんの努力に負うところが大きい。
と同時に、同行の熱心な仲間の皆さんと、車の中でもホテルでも、また食事の時も議論を重ね、帰国後も多大なヒントと貴重なサジェスチョンを頂いたおかげ。
そして、帰国後に長期間にわたってhiroさんとMiwaさんと、トライアングルのメール交換をさせていただいたお陰でもある。パッシブハウス研究所の優れた点と問題点が、おぼろげながら見えてきたのが大変に有難かった。

パッシブハウスの調査が目的だったが、いきなりドイツの木質構造という予想外の大金脈にぶち当たって戸惑った。
残念ながら予備知識不足のため、この大金脈のほんの表面を撫でてきたにすぎない。
アメリカのような生産性一本ヤリではなく、日本並みか、場合によっては日本以上のきめ細かい施工精度を持っているドイツの木造住宅。
そしてクォリテイは、日本よりはるかに優れていると直感させられた。

どうか、私共のささやかな調査を足がかりに、多くの識者によってドイツの木質構造の全体像と、地場ビルダーの実態と、住宅に関連する各マイスターの具体的なカリキュラムと技術レベルを、併せて解明されることを期待したい。
と同時に、超高性能なサッシや換気機器の開発に、是非とも目覚めて頂きたいと衷心より関係各位にお願いしたい。
  (完)
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2008年12月20日

日射取得と日射遮蔽   ドイツパッシブハウス調査(14)



NHKの国際部を若くして退き、ミュンヘンに移住し、ドイツに関する著書を10冊余書いている熊谷徹氏。10年前に出版された「住まなきゃわからないドイツ」は面白かった。
曇天か雨の日が続き、やたらと夜が長い冬期。
ヨーロッパでは冬が雨期。春がくるということは雨期があけるということ。
春を迎えた時の人々の喜び。
太陽に対する飢餓状態から解放され、裸で日光浴をする女性。
表日本に住んでいる日本人には、ドイツ人の太陽に対する焦がれる想いが理解出来ない。

春や秋は、目一杯に太陽の光が射し込むように、やたらとガラス窓の大きな家が多い。
どんなに高性能な4-16-4-16-4のトリプルで、クリプトンガス入りのガラスであっても、熱貫流率(K値)は0.5Wが最高だろう。見てきたような0.15Wの外壁に比べると、熱損失は3倍以上と大きい。
パッシブハウスという15kWh/uの断熱性能を追い続ける合理的精神の持ち主であるドイツ人。
当然のことながら出来るだけ開口部を小さくするはずだと思うのだが、そうはゆかない。太陽教信者たちは、競って大きな開口部を求める。これはもう、宗教的というしかない。
つまり、太陽の光に対しては理性が働かない。
だだっ子のように、むやみとガラスをねだる。

そして、ドイツの戸建て住宅の最大の特徴は、南側にではなくて西側に大きな庭を設け、バルコニーやベランダを設けていること。
ヨーロッパのサマータイムは、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までの7ヶ月間実施される。正に、太陽の季節。
この季節、サラリーマンはいそいそと帰宅し、西日を浴びながらベランダでバーベキューをするのが最大の喜びであり、楽しみ。
ドイツ人は夕日族でもある。


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フランクフルト市の郊外に建てられていた高校教諭のW邸。
宅地そのものの形状が日本とまるっきり違う。道路づけが東側で、東西に長い敷地。南北は日本ほどではないが、かなり密集している。
したがって、プライバシーを守るということもあってか、写真のように右側の南面には開口部らしい開口部がない。主な開口部は妻面の西壁に付けられている。
日本人から見れば摩訶不思議な家。
そして、奥まった西側には広い庭がある。
そこに、奥行きが5メートルはあるウッドデッキが敷かれ、バーベキューが出来るテーブルと木のイスが置かれている。
そして、これまた長さが4メートルはあろうかという日除けが付けられている。これはご主人が日曜大工店から60万円で買ってきて、自分で取り付けたという。

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こんなふうに、ガンガンに西日が入る窓だから、夏場のことが心配になる。
どうしているのかとサッシをよく見たら、全てのサッシがブラインド付きであった。
北側のトイレの小さな窓にも…。
このサッシは、一番外側に単板ガラス入りのアルミサッシがついている。
その内側に手動のブラインドが内包されている。
そして、逆光で見にくいが、内側にアルゴンガス入りのペアのウッドサッシが入っている。
最近、この種のサッシがスウェーデンでも造られているらしい。スウェーデンホーム・ジャパン(スウェーデンハウスではない)が、これと同じようなサッシを採用している。

このサッシの良いところは、外がアルミサッシだから雨風による退化とかメンテナンスの心配が少ないこと。そして、全てブラインドを内包しているから、直射日光を遮ることが出来る。
そして、内側に高性能のウッドサッシが入っている。
外側のサッシがアルミの単板ガラスだから、ブラインドで反射された熱は、こもって内側のウッドサッシ側に伝わるよりも、熱伝導率の良いアルミと単板ガラスの方へゆく。
そして、足立博氏の受け売りだが、もし内側のウッドサッシの熱貫流率が1.0Wであるならば、アルミの単板ガラスを含めた全体のK値は0.85W程度になるらしい。

この一体型のサッシではなく、関東以西では内側のウッドサッシだけが内側に開くことが出来るサッシが欲しい。それがあると、夏の夜や中間期に外気温度が低くなった時、内側のサッシを開けておくと内部の熱が単板ガラスのアルミサッシから逃げてくれる。
換気のバイパス機能と同時に、放熱可能なこのようなサッシが開発されたならば、東京以西の冷房負荷がかなり大幅に減らすことが可能。

夏の夜、外気の温度が下がれば窓を開ければいいと言うワカランチンが未だにいる。
外気の絶対湿度が13g以下の時以外は、絶対に窓を開けてはならない。
夏期に27〜28℃の設定温度で生活をするためには、絶対湿度が12g以下であることが望ましい。高性能のペアガラスで逃げない熱を逃がすには、うまい考えだと思う。
また、これだと都心に多い準防地域でも、アルミサッシに網入りガラスを採用することでクリアーすることが出来る。まさに一石三鳥。
しかし、日本の大手サッシメーカーは、生理があがった女性のように新しい命を生む能力を完全に失っている。したがって相手にしていたのでは日が暮れる。パッシブハウス研究所のファィスト博士を真似て、ビルダー自身が中小メーカーに働きかけ、こうしたサッシの開発を促してゆく必要があると思う。
サッシでベンチャー企業を興したいというサムライを募集中!!!


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話が脱線した。
これはバウマンさんの新居。
13kWのサンヨーの太陽光発電が搭載されている。
政府の高価格での買電政策で、昨年は110万円の売電になったという。設置費の840万円は、8年以内に償却出来る勘定。200年住宅よりも、この政策の方がメリハリが効いていてはるかに効果的。
そして、手前側が南面で、左側の西面にバルコニーとベランダがついている。
そして、全ての窓にアルミのブラインドシャッターが付いている。
20年前に玉置宏邸のR2000住宅関東地域第1号に採用した。だが、日本ではいつの間にか姿を消してしまった。厚い壁の中に、ブラインドシャッターのボックスを内蔵させるのがコツ。このために非常にスッキリ出来上がっている。それだけに懐かしく感じた。

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これは、ミュンヘンのモデルハウス。
直射日光が当たる全ての窓にブラインドがついている。
そして、収納ボックスが現わしになっているが、デザイン的にうまく処理している点を見て貰いたい。どこかのメーカーの野暮ったいものは絶対使いたくないが、これだったら採用してもいい。

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しかし、他のメーカーは、ほとんどが収納ボックスを厚い壁の中で処理していた。
サッシの外側で日射を遮蔽している。

日本の昔の住宅は、ほとんどが雨戸付きであった。
3ミリガラスで、台風が来たらたまったものではない。したがって、雨戸が木の建具の場合には不可欠だった。
それが、網入りガラスが登場したり、遮熱のペアガラスが登場したりして、いつの間にか雨戸はデザイン的にダサイという風潮になってきた。
そして、私などにも責任があるが、プロバンス・スタイルということで、ケラバの出の小さいデザインを普及させてきた。さらに、近年のシンプルモダンの流行。
その結果、現在の日本の住宅は、ことごとくと言っていいほど日射遮蔽を無視している。

今回のドイツの旅で、日本よりも日射の弱いドイツが、「ここまで日射遮蔽にこだわっているのか」と打たれた。もっとも、これはドイツの家にエアコンが入っていないせいでもあるのだが…。
夏が乾期のヨーロッパでは、相対湿度が低いので直射日光を遮りさえすれば、エアコンはほとんど不要。そのエアコンの設置費とランニングコストに相当するのが外付けのブラインドだと言えよう。

日本のエアコンの性能は世界一。香港へ行ったとき、タクシーはほとんどドイツ車なのにびっくりした。しかし、エアコンの効きが悪いのに呆れた。同じ思いをした人も多いと思う。
トップランナー方式で、日本の個別エアコンのCOPは6.5を超えるものが出回っている。
その性能にオンブして、われわれ住宅屋が日射遮蔽をサボってきた。アメリカやカナダのホームビルダーも軒並みサボっていたので、それが当たり前で許される行為だと考えていた。

ドイツで、そのことを深く、痛く反省させられた。
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2008年12月15日

中堅の住宅工場見学記   ドイツパッシブハウス調査(13)



ドイツの木造住宅が4万戸から5万戸はあるらしいということが、なんとなく分かった。
しかし、その中で戸建てと分譲の比率がどうなっているのか? 
大手と地場ビルダーの比率はどうか? 
あるいはプレハブとプレカットの比率がどうなっているのか?
そういったことは、さっぱり分からない。
この解明は、これからドイツを訪問する人々の課題として残して置こう。

私が見たかったのは、パッシブハウスに特化し、年間20戸から40戸程度をこなしている注文住宅専業の地場ビルダー。
どんな客層を対象に、どれだけのスタッフで、どんなコンセプトで、どんなセールスツールで、どの程度の価格帯で、どれだけの生産性を上げているか?

日本の工務店関係の業界紙に、時折大きく取り上げられている工務店。そのいくつかを読んでみるのだが、内容的にがっかりさせられる場合が多い。同じことで、日本のビルダーにとってモデルになるようなドイツの会社が簡単に見付けられる訳がない。大きな期待を持ってはいけないと自分に言い聞かせていた。
そんな時、バウマンさんが「木造住宅のベンツと呼ばれている会社がある」という朗報をもたらしてくれた。年間270戸程度をこなしている地場メーカーだという。
東北の北洲ハウジングに匹敵する規模。
「住宅会社のベンツ」と聞かされた以上は、断る理由はない。
レッツ、ゴー!


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訪れたバウフリッツ社。
雨戸か日射遮蔽パネルかは知らないが、意表をつくファサードを持ったセンター棟に案内された。中に入ると、歴代の首相が同社を訪問した折の写真パネルがずらりと飾られていた。
「木造住宅のベンツ」という評判は、ここらあたりから出たものらしい。
同社は、大工だった先祖が120年前に創設した会社。82年前にハウスビルダーの看板をあげた。
高気密高断熱住宅に本格的に取り組んだのが30年前。「同じ時期に同じことを考えたのだな…」ということで親しみがわいてくる。
敷地はやたらと広く、4〜5万uはあるらしい。そして1.5万uにも及ぶ最新鋭の工場を持っている。その工場労働者を含めて従業員は250人。これで年間270戸の住宅を製造・販売している。売上げは80億円弱というところ。
工場労働者と、住宅会社としての営業、設計、監督の比率を聞くのを忘れた。
だが、工場としてみても、また住宅会社としても、生産性は悪くないと売上高から勝手に想像した。私の勘は案外当たる。

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最初に案内されたのは創立111周年を記念して、従業員から募集した111のアイディアが随所に散りばめている記念棟。敷地が広いから何でも出来る。
その中でとくに面白いアイディアは、ベッドをバルコニーへ簡単に移動させることが出来るシステムと、気密性を考慮した特殊な引き違い戸。このアイディアはなかなか。


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さて、いよいよ工場見学。
当然のことながら撮影禁止。
そこで、会社案内書から上の写真をコピーした。しかし、これでは工場のすごさが伝わってこない。
工場は、完全にコンピューター管理されている。
集成材の20インチ×50インチ×67フィート(50cm×125cm×20m)もあるような大梁が架かっている天井の高い広々とした木構造の工場。そこに、最新の設備が並んでいる。
しかも、従業員の密度が低く、日本の工場を見慣れた目にはスカスカに感じられる。

そして、一番大きなパネルはこんな風に生産されていた。
スタッドは7.5cm×29cm。ピッチは60cm間隔。
この壁枠組の外側に1.6cmと2.5cmの異なる断熱材を重ねて張り、裏返して枠の中に断熱材を一杯につめる。
そして、内側には断熱材を抑えるようにして1.2cmの電磁波ボードを施工し、さらに調湿シートを施工。その内側は3cmの配線配管空間をとり、そして1.8cmの石膏ボードで仕上げてゆく。
これを吊り下げて裏返しにして、外側に仕上げの2.5cm厚の無垢の木質サイデングを取り付ける。
かくて壁厚はなんと約42cm。長さが5mにも及ぶパネル。これがクレーンに吊られて自在に移動している。

私はトヨタホームの春日井工場とセキスイハイムの岩見沢工場を見学している。
トヨタホームの工場は、それこそ毎日の「カイゼン」運動の結晶体。1つのムダもないように見えた。しかし、20年も前に建てられて減価償却の済みの工場だから、設備が古い。いくら改善を加えてもシステム的に限界がある。
また、セキスイハイムの工場は「シェダン」という最高レベルの性能のQ-1.0W住宅を生産していた。しかし、その設備とシステムも古く、生産性は予想以上に低く感じた。
この両工場は、日本を代表する工場加工度が最高のプレハブ工場、のはず。
それなのに、ドイツのこの中堅メーカーの工場に比べると、なんと見劣りがすることか。情けなくなるほどの生産性の低さ…。


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この工場は、木材の加工段階で生じる木片や木屑を、全てカンナ屑状にして、脱水と脱タンパク質処理か薬品処理か分からないが完全に処理を行い、断熱材として全面的に利用していた。特許をとっているというカンナ屑状断熱材の功罪をここでは問はない。問題にしたいのは木材の加工精度。
上の写真で分かるように、枠材は単なる突き付けではない。もちろん全ての仕口や継ぎ手がこうだというのではない。突き付けのところもある。しかし、家具並の加工を行っている。この断面を見た時、「負けた」と感じた。こんなパネル工場やプレカット工場は、日本はもちろん、北米でも北欧でも見たことがない。
日本の鉄骨プレハブの工場よりも、ドイツの木質構造の中堅のプレハブ工場が、私にははるかに魅力的に感じたのは、偏見だろうか?

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そして大型のパネルは、大型のトレーラーで現場へ運ばれ、大型のクレーンで吊り上げられて施工される。電線が地下埋設なので、作業は至って簡単。また、地震がないので、大型パネルとパネルのジョイント部分は、日本のようにやたら神経質になる必要がない。
そして、これだけの精度とパッシブハウス並の性能を持った住宅の平均販価が、同社の売上げから逆算すると1戸3000万円以下。もちろん、この価格には地下室工事は含まれていないが…。


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最後に、同社のモデルハウスを見学した。

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まん丸のサッシを綺麗に納めるために、工場でどんな下地加工を行っていたかを想像していただきたい。

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大きな一枚ガラスの引きこみ戸。
プレハブ住宅で、この吊り込み作業はどのようにしてやるのだろうか?
いくら考えても、未だに答が分からない。

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現わしの回り階段。
このモデルハウスだけでなく、どのモデルハウスでも現わし階段の納まりには感心させられた。
ドイツのマイスターの資格を持つ造作大工さん。
一体、どのような教育と訓練を受けているのだろうか?
日本の若い職人さんで、ドイツの造作大工のマイスターの資格に挑戦してみようと考える人が、1人か2人は出てほしいと願うのだが…。


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2008年12月10日

換気+ 工場見学記   ドイツパッシブハウス調査(12)



ドイツの換気システムのメーカーとしては日本ではスティーベル社があまりにも有名。
日本の営業所長とは何回かの面識がある。
だとしたら、その工場を案内して貰えばいいじゃないかということになるが、もっとほかに安くていい製品を作っている工場があるかもしれない。
あったら見たいという助平根性。
今にして考えると、パッシブハウス研究所に展示されていたPAUL社あたりにしておけば良かったと思う。そうすれば、商売に結びつけられたかもしれない。

パッシブハウス・マガジンという月刊の薄い冊子にいつも2ページにわたって広告を掲載しているドレクセル&ヴァイス社を、バウマンさんが推薦してくれた。
ドイツ語が読めないので内容がよくわからない。ただ、なんとなく良さそうなのでオーストリアのヴォルフルト市の本社を訪問した。

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同社の創業は50年前。
10年前の1998年からパッシブハウス研究所のファィスト博士と共同で研究を始めた。博士の信頼はかなり厚いようだ。
そして、2000年からパッシブハウス専用の「コンパクト・ユニットシステム」を開発して、オーストリアの71%、ドイツの30%、スイスの50%のマーケットシェアを持っていると、エンジニアのピーターさんがこともなげに豪語した。

ところが、こちとらは「換気メーカーだ」という先入観がある。
換気でそんな圧倒的なシェアを持てるわけがない。
このエンジニアさんは誠実そうだけど、大ホラ吹きではないかと考えてしまった。
そうなると、ミーテングの内容にまであやしく感じる。
説明していることの意味がよくわからない。
なんで換気装置にヒートポンプが出てくるのか?

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しばらくして、やっとこのメーカーは単なる換気屋さんではないということに気が付いた。
コンパクト・ユニットというのは、熱回収型換気とヒートポンプによる暖房と給湯の3つのシステムを兼ね備えた1人3役の新商品だった。
換気は、その一部分にすぎない。
そのことが分かるまで、1時間近くも要したというおそまつ。
したがって、途中で変な質問をしてしまった。
「バイパス機能は持っていないの?」と。
いきなり「ナンセンス」と言われた。
単に換気設備ならバイパス機能が必要だが、ヒートポンプで暖房や給湯までをやっているのにバイパスを持つというのは気密性を落とすことになるだけで、まったく意味がないというわけ。
言われてみると当然。

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今までのパッシブハウスは、30メートルのアースチューブを通って外気が導入される。それを上の写真の左の青い熱回収ユニットでヒートリカバリーして右上部のヒートポンプに送られ、暖房用と給湯用に使われる。
ともかくコンパクト。
熱交換部分は幅、奥行きとも600mmで、高さが700mm。
ヒートポンプと貯湯部分は幅、奥行きとも600mmで、高さが2053mm。
これで3役をこなすというから、信じられない。

ヒートポンプだけで足りない時は、買電を使う。
場合によっては、太陽光発電の電気を使うシステムも構築出来る。
もちろん、太陽熱温水器との接続も可能。
また、暖房の熱源が不足する場合は、ペレットを燃すシステムを組み合わせることもある。一定の規格品を販売するという方式ではないらしい。

サイズとしてはL,M,Sと3種類あり、Lは180〜200uの住宅用で価格は18,000から35,000ユーロとのこと。Mは160u前後の住宅用で、Sは70uのアパート用。
もっと細かく聞こうと思ったが、貯湯が200リッターだけしか用意していないと聞いて、質問する意欲が急速に萎えた。
ヨーロッパ人は、シャワーだけで満足している。
日本人でシャワーだけで良いというのは私ぐらいのもの。
どうしてもお湯を張って肩までつからないと疲れが抜けない。したがって、200リッターの貯湯槽だけだと日本では絶対に売れない。 
というわけで、1人3役という面白い商品だということが分かったが、換気メーカーの人間ではないのでこれ以上話を聞いても意味がない。

ただ、参考までに記すと、同社は100%注文生産方式をとっている。
5人のエンジニアが常に設計事務所とコンタクトをとり、その都度、もっとも適したシステムを構築し、提案してゆく。
最近ではアースチューブ方式が少なくなってきているので、それにふさわしいシステムの提案が増えているらしい。

考えてみれば、こんな小回りの効くメーカーが日本にあれば大変に便利。
内地ではエコキュートがあるので給湯には困っていないが、北海道などでは貯湯槽さえ大きくすれば、かなり参考になるシステムと見受けた。
いや、内地でも太陽光や太陽熱温水器とドッキングさせれば、エコキュート以上の省エネ化が図れるかもしれない。
しかしそれは、われわれビルダーの仕事ではない。

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レクチャーを受けた後は工場見学。
当然のことながら撮影は禁止。
上の写真はカタログから抜いたもの。それにしても肝心なところがたったの1ヶ所もカタログに掲載されていない。
これほどまで内密にする必要があるのだろうか?
ということで、工場は小ぎれいで面白かったが、写真が撮れなかったのであとになって想い出そうとしても印象に残っているシーンが全くない。

そして、工場の中でも熱回収換気専用機と勘違いして「熱回収能力は何パーセントですか」と質問してしまった。
そして、その答にとまどわせられた。
「熱回収は100%でも130%にでもすることが出来る。しかし、熱回収するということはフィラメントの間隔を狭くすることであり、騒音が問題になってくる。騒音を30〜33デシベルに保つには、92%程度が最適である」と。

熱回収は100%が限度だと考えていたのに130%と言われて、わけがわからなくなってきた。
換気だけの熱回収だったら、室温20℃の熱を20℃回収すれば終わりかもしれない。しかしヒートポンプだとマイナス10℃までも熱を回収出来る。
そのことを言っているのか。あるいは別のことを言ったのか?

帰国していろんな人に聞いてみたが、未だに納得出来る説明に出会えないでいる。
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2008年12月05日

サッシ工場見学記   ドイツパッシブハウス調査(11)



この調査報告の(7)の、パッシブハウス研究所(中)のなかで触れたことの再現。
ドイツにはサッシ工場が1000社から1300社もあると日本のPVCメーカーの元役員から聞いた。
1500万円でPVCの4点同時熔接機械を導入し、2〜3人の従業員で半径50キロとエリアを限定して商売しているサッシ屋が多い、と。
エリアを限定しているから梱包などの費用も在庫の費用もかからず、間接費も少なく、大変安く生産して提供している。
日本もこのドイツの生産システムに学ぶべきだ、と示唆された。

そこで、ごく少人数でU値が0.8Wのサッシを生産している工場がないかを、バウマンさんに探してもらうように頼んだ。
つまり、パッシブハウス研究所のお墨付きを貰ったサッシメーカーの中に、10人以下の小規模メーカーが存在していないかという、無理難題を承知での依頼。
もし、そんな工場があったなら、そのノウハウを学べば日本でもエリア限定の中小サッシメーカーを存在させることが出来る。
現存する日本の大手サッシメーカーに期待するのではなく、ドイツを真似て、日本にベンチャー企業を誕生させられるかもしれない。その応援団になりたい。

しかし、パッシブハウス研究所の承認マークを付けているサッシ屋さんの中に、10人以下の企業を見付けることがバウマンさんには出来なかった。そして、自宅の新居に採用したサッシメーカーのダンドル社を紹介してくれた。従業員が80人と多い。調査の目的にふさわしくない。
だが、カタログを見たら間違いなくパッシブハウス研究所のマークが入っている。
「しょうがない。このサッシ屋で我慢しょう」とシブシブ承諾。
ところが、このサッシ屋を選んだのが大正解。
下の写真は、ダンドル社のオフイス兼多彩な商品の展示棟。

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この会社は、ウッドサッシ・ドア、PVCサッシ・ドアを生産している。一部内装ドアも。
そして、80人の従業員というのは事務員と工場労働者だけではなかった。
販売エリアが100キロで、出来たサッシとドアを包装せずに現場へ搬送し、取り付け工事までを責任施工している。
営業から施工工事までを含めて80人だから、工場労働者は40人強だろう。中堅の一貫サッシメーカーと呼ぶべき存在。
そして、平均的な 戸建て住宅(150u)で、サッシ、ドア、一部内部ドアを含めての平均売上高が2万ユーロという。1ユーロが130円とすると工事費込みで260万円。
ウヒヤー、安い !!

サッシの生産比率はPVCが50%と半分。ついでウッドが35%、ウッド+アルミカバーが15%という。
価格的な面からPVCが圧倒的に多いだろうと考えたのだが、ウッドが予想以上に頑張っている。それだけ戸建ては、高額需要層が対象なのだろう。
ガラスは現時点ではダブルが2/3でトリプルが1/3。
しかし2年後には間違いなく50:50になるだろうと3代目の、人間的な魅力溢れる社長が話してくれた。この社長は信用出来る。

そして工場見学。
最初はウッド工場。次いでPVC工場。
ウッド工場の撮影は自由だが、新設したPVC工場は撮影禁止と言われた。
「撮影禁止とは大袈裟な…」とその時は思った。
サッシ工場はアメリカやカナダで何ヶ所か見ている。
日本のサッシメーカーのほとんどの工場を見ているので、正直言って北米のサッシ工場には特別感心するところがなかった。唯一面白かったのは、小さな工場でも外国から幅の広いガラスを輸入し、自社でLow-Eのペアガラスを生産するラインを持っていたこと。
したがってドイツの工場でも、それほど感動することはあるまいと考えていた。

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最初はウッドサッシの窓枠の加工。
あれ! 
木材の加工断面と加工精度が、びっくりするほど高い。
そして、組立は自動的に接着剤を塗布しての自動組立。
一切のクギ類を使わずにガッチリ組上がる。半端な精度ではない!

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そして、アールのついた自由自在な加工。
こんな形状が自在に出来るとは…。この精度は、ただものではない!
いきなり強力なアッパーカットを喰らってヘトヘト状態!

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そして、ウッドサッシといっても、見えないところには「ドイツの金物」がこれでもか、これでもかというくらい使われている。
これが使い勝手と耐久性を支えている。参った!

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塗装ライン。

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仕上げのコーキング。

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写真の右にほんの少し見える2階建てがウッドサッシ工場。
左が新設したばかりのPVC工場。工場内は撮影禁止。

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工場前に置かれているPVCの各種の押出材とステンレスの小さな角パイプ。
こんな角パイプを、一体どこに使うの?

PVC工場は完全にオートメ化されていて、まずPVCと角パイプの最適な切断加工を、コンピューターの指示で行なっていた。

次ぎに、角パイプを含めての4点熔接。
なるほど、これでは今までの1500万円の熔接機は役に立たない。

そして、組立から金具付けと、ラインは流れてゆく。

その流れにムダが1つもない。
パッシブハウス用のPVCサッシの精度は、この流れが保証している。
この工場を建設するのに、上屋と設備で最低で5億円はかかったであろう。
パッシブハウス用のサッシの生産には、それだけの投資が必要。
1500万円の4点熔接機でことが足りる世界ではなかった。それが分かっただけでも大きな収穫かあった。感謝。

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そして、羨ましかったのがPVCサッシの木目模様。
サッシの板目の線がわざと歪んでいる。これが素晴らしい。ナチュラル感覚そのもの。
無垢のドアと見分けがつかないPVCドアの柾目。
敵はここまでやっている!

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この工場のウッドサッシは、パッシブハウス研究所からU値0.8Wのお墨付きを貰っている。
そして、押出材の中に何一つ断熱材を詰めてない上の写真のPVCサッシがU値0.9Wのお墨付き。
押出材の厚みは、かつてのものより極端に細い。
そして、部材の中が細かい房になっている。この房の中の空気が断熱材の役目を果たしている。
そして、枠とサッシの中央に埋設されたステンレスの角材。これが強度を支えている。

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高さが2mを越し、幅の広い大きな開き窓。
よく見て頂きたい。
この建具にトリプルガラスを入れて、サッシと枠の支点はたったの2点。
これを見たら、日本のPVCサッシを使う気分が完全に失せた。

シーラカンスとも言える、内蔵脂肪が一杯付いたメタボリック症候群のPVCサッシ。
それを、日本のメーカーはいつまで造り続けるつもりなのだろうか?
いつまで石油という有限的な資材をムダ使いして、消費者を欺むくつもりだろうか?
いい加減にして欲しいと、皮肉の1つも言いたくなってくる。

K値が0.8Wのウッドサッシよりも、私はこの0.9WのPVCサッシを無闇に使いたくなって、ウズウズしている。
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2008年11月30日

壁の熱容量と断熱改修の実態   ドイツパッシブハウス調査(10)


さて、ドイツの木造住宅の外壁のすべてが透湿性の高い材料から出来ているということは分かった。
日本の住宅が、これから100年とか200年の耐久性を維持して行くには、この透湿性を高めてゆくということは無視出来ない課題。
しかし、具体的な解決策は後で考えることにして、もう少しドイツの壁を見てゆくことにしょう。

先に床構造のところで紹介したプロの大工さんやビルダー相手の建材販売店のHornung社。
ここには、床だけではなく外壁や天井断熱の現物大ミニチュアも展示されていた。
その中で、住宅展示場では見られなかったいくつかの断面を紹介したい。

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まず、ウッド繊維の充填断熱+内外のウッド繊維断熱。
展示場の充填断熱材としてはグラスウールなどや吹き込み繊維が多かったが、この建材店ではやや硬いボード状のウッド繊維を充填していた。
ご案内だと思うが、(株)木の繊維の苫小牧工場が来春オープンする。
それに先駆けてドイツから輸入したやや硬い充填断熱材を実験的に試験施工している。
その報告によると、この断熱材のカッテングが大変に困難とのこと。
カッターでも、ノコでも切れない。そして、現場が大変に汚れる。この大問題を来春までに解決しないと、日本での普及が見込めない。
このウッド繊維の最大の特徴は熱容量が大きいこと。グラスウールの2倍と言われている。
それと、遮音性が良いこととグラスウールに比べ保湿性が高く、簡単に結露現象が起こらないという点。

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これは、外側に100mmEPSを施工し、壁内にPOROTON社製だと思うが多孔なレンガブロックを充填している。
断熱材ではなく、なぜレンガブロックなのか?
このレンガブロックは穴にパーライトを充填しても熱伝導率は0.08Wと一般的な断熱材の半分以下。しかし、熱容量がバカに高い。
正確に何倍の高さかは調べていないが、ドイツでは古い木造の断熱回収にこの方式がかなり採用されているようだ。日本で言うならば、構造用合板の内側に入れることになろう。

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これも、外側が100mmのロックウールで、内部がウッドブロック。
これも熱容量を徹底的に意識している。

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そして、これがPOROTONのT8タイプ。
まず、粘土にオガクズをよく練り混ぜて焼く。するとおがくずが燃えてその後が透湿の道となる。そしてパーライトを穴に充填する。この熱伝導率が上記のとおり0.08W。しかし壁厚が厚いので、熱貫流率は49mmだと0.16Wと、パッシブハウスの基準にほぼ到達。内部か外部に20mmの断熱材を加えるだけでよい。
30.0mm厚  K値0.25W
36.5mm厚  K値0.21W
42.5mm厚  K値0.18W
49.0mm厚  K値0.16W
これは、スペイン辺りからの輸入品らしい。
地震がなく、土地が広くて安いヨーロッパでは、単に冬期だけでなく夏期におけても、その熱容量がものを言ってくるはず。

室蘭工大鎌田研究室の山内麻梨絵さんが、昨年の卒論で「木造住宅における熱容量の住宅熱性能に及ぼす影響に関する研究」を発表した。なんと130ページにも及ぶ大論文を、鎌田先生からいただいた。
この論文は、主として床暖房と基礎暖房を比較し、基礎暖房を蓄熱層した場合の有効性をESPAR/Mと言うソフトを用いてシミュレーションしたもの。
素晴らしい内容だが、寒冷地を前提に考えているので、冬期間だけのシミュレーションに終始しているのがもったいない。
ともかく、冬期は日照があると日中はオーバーヒートする。そして、熱容量が小さいと室温が夜中に下がってくる。
しかし、熱容量を大きいと、室温の変化が非常に小さい。
したがって、これからは断熱の厚みやQ値だけでなく、木造住宅の暖房を考える場合は熱容量のことも併せて考えてゆく必要があるというもの。
グラフが多くて、なかなかの説得力を持っている。

麻梨絵女史に任せているだけではダメ。これからは、夏期も含めて木造住宅のQ値だけではなく、熱容量を検討してゆかねばならない。
そして、基礎もさることながら壁の熱容量がこれから重要な課題になってくる。と同時に、夏期における日射遮蔽ということが、より課題になってこよう。


熱容量の問題はこの程度にして、ドイツにおける断熱改修について軽く触れたい。
というよりは、今回の調査には断熱改修の項目を載せておらず、軽くしか触れることが出来ない。
過去の「今週の本音」からの、おさらいということになる。

日本では、まだ本格的な断熱改修ブームが起こっていない。
耐震改修で手一杯。
私はここに問題があるのだと思う。どうせ耐震改修するならば、もう少し補助金を上乗せして耐震・断熱改修工事を一気にやるべき。
耐震改修では、やや安心感が持てるが、それ以外に具体的なメリットが実感出来ない。
断熱改修まで行うと、入居者にメリットが実感として分かる。月々の暖冷房費が激減して、脳卒中や心筋梗塞の心配が少なくなる。
なによりも、風邪に罹りにくくなる。薬代が助かる。国家も得をする。

この断熱改修のポイントは2つ。
1つは、サッシの交換ないしは追加。最低K値を1.5Wにするという国家的な目標を立てるべき。わかりましたか国交省と経産省さん。
もう1つは外壁の最低K値を0.4Wにするというこれまた国家的な目標を立てること。
それが、中央官庁の仕事。
そういった基本的な仕事を放棄して「200年住宅」などと騒いでいるから、国交省は国民から信用されないだけでなく、バカにされる。

低層の木造住宅では、既存の壁の中にべバーバリアもやらずに繊維系の断熱材を吹き込むのは危険。結露の問題が出てくる。ボードを剥がさずに吹き込むのだったらウレタンの現場発泡しかない。
あとは、外壁のモルタルの上に硬質のロックウールかEPSを接着剤で施工し、表面はメッシュを入れて薄くて軽い仕上げ材で処理する方法。
ドイツの断熱改修のほとんどがこれ。
そして、最近では戸建ての改修だけでなく、中高層住宅での改装が目立ってきている。

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これが断熱改修前の中層集合住宅。2年前のベルリンでの撮影。

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100mmのロックウールを使っていた。

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コンクリートにロックウールを接着剤併用で取り付け、薄い下塗りとガラス繊維のメッシュを施工し、薄く上塗りして塗装仕上げ。

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サッシも全面的に高性能のものに変えて、サッシから給気が出来るようにしていた。

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バルコニーの下部をガラスで仕切っただけでなく、上部は4枚の引きこみサッシで、寒気を遮断するという改装まで行っている。

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これが、改装後の美しい姿。

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ドイツで改修に使われている資材と改修業者の出身母体。

これを見れば一目のように、ドイツでは圧倒的に100mm厚のEPSが多くなってきている。
しかし、日本では公団住宅などの断熱改修にEPSを使おうとしても問題がある。
EPSは、個別に防火認定はとってはいないが、慣例的に使用が認められている。
しかし、下階で火事が発生した場合、外断熱のEPSを伝わって上階へ火災が拡がる心配が非常に大きい。
私が公団の技術者だったら、上階への類焼防止の技術が確立されない限り、絶対に使う気にならない。
したがって、建研や大学、国交省の防火に関するトップレベルの技術者に呼びかけて、早急にその技術指針を明確にしてもらう必要がある。
それをやらずに、いくら素人がEPSのPRをしても、焼け石に水。

日本で外断熱が普及しないのは、トップのプロ技術者が参画して指針づくりを行っていないから…。
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2008年11月25日

ドイツの木造は400年住宅   ドイツパッシブハウス調査(9)



すでに見てきたように、ファィスト博士が17年前、ダルムシュタット市に建てたタウンハウスの外壁および屋根の熱貫流率は0.15Wであった。
パッシブハウスというからには、最低この条件を備えていなくてはならない。

この0.15Wの断熱材の厚みとは、一体どの程度か?
プロである以上は、瞬時に判定出来なければならない。
私はこのように覚え、判定することにしている。
「5寸角の木軸の15cmの壁、ないしは206の14cmの外壁に、熱伝導率0.038Wの高性能グラスウールかロックウールを充填し、その外側にKMブラケットを使用して隙間無く熱伝導率0.036Wのロクセラムを10cm施工すれば得られる」と。
おおよそ、25cmの断熱厚で達成が可能。
したがって、驚くほど難しい仕事ではない。これだったらやる気になれば誰でも出来る。

しかし、熱伝導率が0.04Wの木質などの繊維系断熱材やEPSだと、充填+外断熱+内断熱を全部含めて30cmの断熱厚がなければならない。
つまり、木質繊維系断熱材が多いドイツの木造住宅の場合は、断熱厚の合計が30cmあればパッシブハウスと呼べる資格があると思う。
そういう視点で、ミュンヘンの木造住宅の展示場を見た。

ミュンヘンの木造住宅展示場には56棟もの住宅が並んでいる。
どんな展示場でも、消費者が入って見るのは多くて8棟。
外観のデザインとか、値段とか、大きさとか、自分の好みから考えて、どんなに沢山の住宅が並んでいても、入るのは8棟が限度。それ以上は疲れてムリ。
外観の写真を撮ったのは28棟。ちょうど半分。
私にとって、めぼしいデザインはそれだけしかなかったということ。
しかし、中に入ったのはその半分の、おそらく13〜4棟であったろう。
最初から調査目的がはっきりしておれば、片っ端から入ったかもしれない。しかし、展示場見学となると、日本での癖が出てしまう。自分の気に入ったものしか眼中に入らない。

入ったモデルハウスの2/3に、外壁断面図のミニチュアを展示してくれていた、という気がする。
なにしろ初めての経験だから、それぞれのモデルハウスによって、こちらの関心があっちへ行ったりこっちへ行ったり。焦点が定まらない。
いろんなところをパチパチとデジカメに納める作業で忙しい。
その中で、外壁の断面図のミニチュアを撮影したのはたった6点。
今となって、徹底的に全戸の外壁断面を撮影して回るべきだったと考えるのだが、文字通り後の祭り。
強行日程の最後の日だということもあって、集中力が欠落していた。
その6棟の外壁断面のミニチュアを紹介することにする。


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すでに、皆さんが学習なさったとおり、ドイツの木軸の柱、および壁工法の間柱の外壁の厚みは16cm。
日本の木軸流で言えば5寸3分3厘。
ツーバイフォー流で言えば、私の命名した3×7(スリー・バイ・セブン)。
まず、この16cmの壁厚一杯にグラスウールが充填されている。その外側にEPSが10cm。内側に木質ボードが6cm。合計32cm。文句なく合格。

同モデルトリプ断熱.JPG

モデルH92_000ユーロ低価格高性能.JPG

これは16cmの充填断熱材の外側に2cmの木質系と6cmのEPS。内側に2cmと6cmの木質ボード。計32cm。これも合格。
そして、下の写真は同行の小林氏が撮影してくれたもの。
この家はペアーガラスに過ぎなかったが、110uで売価が「91,999ユーロから」とあった。1ユーロが130円と計算すれば1200万円。120円だと1100万円。坪単価に換算すると33万円から36万円。本当?
設備がどこまで含まれているのかは分からないが、タマホームよりははるかに魅力的。
今回は、価格を本格的に調べなかった。したがって、平均的な坪単価を明言することは残念ながら出来ない。
だが、日本のペラペラなプレハブに比べたら、はるかにお買い得であることは請け合える。

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これは16cmの充填断熱材の外側に2cmの木質ボードと10cmのEPS。内側に2cmの木質系ボードで30cm。

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これは16cmの充填断熱材の外側に2cmの木質ボード5枚を重ねていて10cm。内側に2cmだから28cm。ギリギリセーフというところか。

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これは壁の構造が特殊。北米の寸足らずの204材ではなくまともに5cm×10cm。したがって充填断熱材は20cm。その外側に6cmの木質系。内側は1.5cm程度。計27.5cm。これもギリギリ。

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これは16cmの充填断熱材の外側に6cmの木質系、それに通気層をとって無垢板仕上げ。内側に2cmだから計24cm。これだけが明らかにパッシブハウスには失格。
しかし、石膏ボードの下にあるのは「電磁波ボード」かもしれない。その性能とか内容を確かめることが出来なかったが、ドイツには電磁波ボードなるものが存在する。


しかし、このような断面を見ていると、日本のダイワハウスが「外断熱だ」というだけで大威張りし、セキスイハウスが5本の木を植えてエコだと騒いでいることが、いかに消費者をバカにし、ナメていることかがわかる。
日本のプレハブメーカーと国土交通省の役人が、日本の住宅を「後進国の後の後」へ追いやっている。
そんなプレハブをのさばらせているビルダーも、実は情けないのだが…。

さて、ここまで見てきて、皆さんは日本の住宅とドイツの住宅との決定的な違いを感じられたでしょうか?

それは、合板とかOSBという構造用面材が一切使われていないこと。
地震のないドイツは、シージングボードが、十分に耐力壁の役割を果たす。
それと、仕上げにサイデングとかタイルなどを使っていない。
木質系の断熱材にしても、EPSでも、その上に薄い透湿系の下地を塗り、ガラス繊維の薄いメッシュを入れ、これまた薄い透湿系の上塗りと、仕上げは雨は通さないが湿度は透すという透湿系の塗料を塗っておしまい。
そして時折、縦胴縁を入れて軽い無垢の木のサイデング仕上げ。
ついでに言うならば、内部の仕上げに一切ビニールクロスを使っていない。もっぱらルナファーザーという紙クロス。

つまり、ドイツの木造住宅というのは、ランバー以外は全て透湿系の素材で構成されている。
このため、べバーバリアとして、冬期は室内の湿度を壁内に入れず、夏期は壁内の湿度を室内へ吐き出して逆転結露を防いでくれる「インテロ」という画期的な調湿バリア材が開発され、大流行している。
この新しいバリア材を日本へなんとか売り込もうと頑張っているが、マーケティングとアプローチにやや難点が見られる。
ビニールクロスを用い、OSBや構造用合板を採用しているところに、いきなりインテロを売り込もうとしても価格面で徒労に終わる可能性が高い。
地震国日本では、夏の逆転結露を防ぐ方法として、乾燥材や集成材を使っておれば現場発泡ウレタンの方が安く、高いシェアを持っている。東京以西でこの壁を突破し、インテロのメリットを実証することはなかなか困難。
地震国日本では、何はさておいてもまず完全な耐震性ありき。
それが大前提。

しかし、ドイツの木造住宅を見ていたら、つくづくうらやましくなってきた。
木軸の柱は5.33寸角の含水率15%以下の乾燥材。
壁工法にしても3×7の丈夫な乾燥材が2尺間隔。
このランバーが、内外とも全て透湿の建材で覆われている。確かに外部の塗装は、何年かに一度は塗り替える必要がある。それは絶対条件。
サッシは最低でも熱貫流率は1.1W以下。
とすると、どこにも結露が発生するところがない。

結露の危険が一杯にあり、断熱・気密性能が低くて実質的には20年の使用にしか耐えられないような日本の住宅が、「200年住宅」として認証されようとしている。
国土交通省が音頭をとって、バカ騒ぎに一役も二役も買っている。
これは世紀的な喜劇。
200年住宅の中で、まともなのはQ値を1.3W以上と定めた北海道の北方型エコ住宅だけ。
しかし、厳密に結露という面を検証するならば、中には怪しいものもあろう。

そして日本の、あの程度のものが200年住宅だと言えるのなら、ミュンヘンに建っていたほとんどの木造住宅が400年住宅とか500年住宅と言える。
外装を剥がさなくても、サッシは途中でちゃんと取り替えることも出来る。
二重にも三重にも厚い断熱材を纏った家が、健やかに呼吸をしている。
健やかに、健やかに深呼吸を……。

「地震のない国がうらやましい」と嘆いてばかりいてはいけない。
今までの優れた体系とは別に、耐震性と省エネ性と耐久性の高い透湿システムを持った外壁を、なんとか構築してゆくべきだと思う。
それを、単なるエコ運動と捉えると、間違いを犯すことになる。
posted by unohideo at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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